【連載】冬の多発疾患を極める!

甘く見てはダメ!冬の肺炎

解説 平井美里

東邦大学医療センター大森病院 救急看護認定看護師

肺炎はこんな疾患

●微生物が気道を通って肺胞へと入り、増殖することで肺に炎症が起こる疾患。
●急性の細菌性感染症で、おもな原因菌に肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌などがある。
●感染環境によって市中肺炎(生活圏で感染・発症。おもな原因菌は肺炎球菌)と院内肺炎(入院後48時間以降に新たに発症。おもな原因菌は黄色ブドウ球菌、緑膿菌)に分類される。
●院内肺炎には、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、誤嚥性肺炎、MRSAなど耐性菌感染肺炎などがある。
●咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状、発熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、関節痛など風邪様症状がみられる。
●重症化すると、人工呼吸器管理が必要となり、意識障害を起こすこともある。

入院時の対応とポイント

始めに確認すること

〈市中肺炎の場合〉
 呼吸器疾患や循環器疾患などの基礎疾患があると、その疾患の症状が悪化することもあるので、患者さんもしくは家族に既往歴について聴取します。同時に、呼吸器症状や風邪様症状なども確認します。
 チアノーゼ、意識レベルの低下などがある重症の肺炎では、人工呼吸器管理が必要となることがあるので、通常検査施行とともに、医師の指示を確認します。

市中肺炎の重症度分類(A-DROP)と治療の場 

 市中肺炎の場合、A-DROPによる重症度分類が行われるので、治療の場によって患者さんのおおよその状態が予測できます。
A(Age)      = 年 齢:男性70歳以上、女性75歳以上
D(Dehydration)  = 脱 水:BUN21mg/dℓ以上 or 脱水あり
R(Respiration)  = 呼 吸:SpO290%以下(PaO260Torr以下)
O(Orientation)  = 見当識:意識障害あり
P(B.Pressure)   = 血 圧:血圧(収縮期)90mmHg以下

治療につなげる準備

〈市中肺炎の場合〉
 原因菌の推定のための迅速診断(喀痰グラム染色、尿中抗原検査)などに備え、血液、尿、喀痰を採取し、検体を検査室に送ります。喀痰の採取にあたっては、唾液や食物残渣が混入しないように、十分な配慮をします。
〈院内肺炎の場合〉
 胸部X線検査による診断の準備をします。胸部X線で確定診断ができない場合には、胸部CT検査が行われることを念頭におきます。
 また、血液検査と迅速診断(喀痰グラム染色、尿中抗原検査)の準備をします。
 動脈血ガス検査が行われる場合には、動脈穿刺の準備を行います。また、サチュレーションを観察するために、パルスオキシメータを装着、低酸素に備えて、挿管・酸素投与の準備をします。

治療時の対応とポイント

治療と介助

胸部X線で陰影が認められると肺炎と診断されます。
 治療は、原因菌に効果のある抗菌薬の投与を行いますが、診断後4時間以内の開始が求められます。そのため、診断確定直後は最も可能性の高い病原菌を推定して治療薬を選択する経験的治療(エンピリック治療)が実施され、広域抗菌薬が選択されます。その後、原因菌が特定され次第、適応薬を投与します。
 全身症状に対しては、体温調整、去痰薬や気管支拡張薬投与などによる排痰、鎮痛薬投与、酸素吸入などの対症療法が実施されます。重症で、低酸素状態にある場合は、人工呼吸器管理となるので挿管などの準備が必要です。
 喀痰の貯留がある場合は、肺の炎症が悪化するので、体位ドレナージなどで排痰を促します。脱水傾向にあると喀痰は粘稠度が高くなり、排痰しづらくなります。その場合は、ネブライザーで喀痰を柔らかくして排痰しやすくします。

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炎症の悪化によって呼吸状態も悪くなります。呼吸パターン、呼吸数、胸郭の動き、呼吸困難の有無などを観察します。また、バイタルサインや顔色、四肢末梢でのチアノーゼの有無もみていきます。喀痰の量・性状についても観察します。
基礎疾患のある患者さんや高齢者、低栄養状態にある患者さんは、抵抗力が低下しているので、症状が悪化、長期化することがあるので、全身状態を観察して異変を早期に発見できるようにします。

治療後の対応とポイント

合併症の早期発見

重篤な肺炎では合併症が起こりますが、特に注意したいのが敗血症と胸膜炎です。
 敗血症は感染症なので、肺炎であることが高リスクの状態です。軽度の血圧低下、四肢の温感、皮膚の乾燥、発熱・悪寒、頻脈、頻呼吸などは敗血症の初期症状です。バイタルサインの変化などから異変を発見していきます。
 胸膜炎は、胸膜腔が炎症を起こしている状態です。発熱、深呼吸や咳嗽時の胸痛、胸水の貯留による呼吸困難、好中球の増加などが認められるので、血液データや聴打診での濁音などを観察します。炎症部位は雑音が聴取され、炎症部位の先にある末梢では酸素が不足して音が減弱します。
 人工呼吸器管理のときは、ウィーニング開始時期に起こりやすいファイティングに注意します。これは、自発呼吸と呼吸器との呼吸パターンが合わないために起こります。

看護ケアのポイント

長期臥床は、無気肺や換気障害につながるので、早期離床を進めながらの症状管理が重要になります。
●服薬指導の徹底
 抗菌薬は、途中で服用を中止すると耐性菌ができてしまう可能性があります。経口薬に切り替わった時点で、その重要性を患者さんに理解してもらい、最後まできちんと服用するように指導します。
●脱水傾向の改善
 発熱のため脱水傾向に陥りがちです。痰の粘稠度を上げないためにも、こまめな水分摂取を心掛けます。場合よっては補液も検討します。
●酸素状態の観察
 安静時だけでなく、歩行時や排泄時など体を動かした後で、サチュレーションを確認します。常に酸素が足りている状態に保ちます。
●排痰の促進
 聴診やX線画像から喀痰の貯留を確認したら、体位ドレナージや吸引で排痰を促すようにします。体位ドレナージは、重力の影響を利用して、末梢気道から中枢気道へと痰を移動させ、排痰を促す排痰法の一つです。

見逃してはいけない急変徴候

●急変徴候
突然の意識レベルの低下は、換気不全が疑われます。呼吸回数やサチュレーションなどから判断し、医師に報告します。
また、体温の急激な上昇は敗血症の可能性があります。血圧や心拍などの変化をみながら、早急に医師に報告します。
●抗菌薬の評価
抗菌薬の評価を行うタイミングは、次の3回とされています。
❶3日後:初期抗菌薬の有効性(重症の場合は2日後)
❷7日以内:抗菌薬の有効性、終了時期の決定
❸14日以内:終了時期の決定、薬剤変更の決定
 体温、血液データ(WBC、CRP)、X線画像によって評価します。

(ナース専科マガジン2013年12月号より転載)

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