【連載】苦手克服応援企画【心電図】

不整脈の検査方法・治療法

解説 曽原 寛

葉山ハートセンター 不整脈センター部長

監修 曽原 寛

葉山ハートセンター 不整脈センター部長

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不整脈の検査方法とそこから得られる情報、4つの治療法について解説します。

【目次】

不整脈の検査方法

検査1 心電図

心電図では、洞結節で発生した電気的刺激が心筋の各部分に伝わり、心臓が収縮運動を繰り返す様子を波形として観察できます。
モニター心電図、12誘導心電図、ホルター心電図などの種類があります。

なかでもモニタ心電図は心疾患以外でも全身状態が不安定な場合は装着するため、不整脈の発生や増悪の早期発見に便利です。
波形の山や谷は心臓のどの部分の動きを示すのか、各波の間隔の正常値など、モニタ心電図を読み取れることが大切です。波形の異常を確認できれば、緊急対応か、経過観察でもよいかを判断できます。そこで、波形の成り立ちは丸暗記してもよいくらいです。

得られる情報

  • 不整脈の有無

検査2 心臓電気生理学的監査(EPS)

心臓電気生理学的検査(Electrophysiological Study;EPS)は、心カテーテル検査のひとつです。

EPSでは、4つの心腔へ記録電極と刺激電極を入れ、ペーシングします。その反応から不整脈の種類、重症度とそれに応じた治療法の選択や有用性を判定できます。

また、洞不全症候群(SSS)や房室ブロックの重症度の判定を行います。同時に、カテーテルアブレーションの適応を判断して、適応の場合は焼灼部分を限定できます。

得られる情報

  • 不整脈の有無
  • 不整脈の重症度
  • 重症度に応じた治療法の選択・有用性
  • カテーテルアブレーションの焼灼部分

検査3 経食道心エコー法

経食道心エコー法は心エコー検査のひとつで、胃内視鏡検査と同様で背中側から心臓を診る検査方法です。心筋の肥大、僧帽弁の逸脱や弁膜症など、心機能が正常かを器質的に不整脈の誘発因子を有するか否かの判断に有効です。

血栓があるのに心房細動の治療をすると、塞栓症を誘発する危険性があります。カテーテルアブレーションの実施前には必ず、経食道心エコー法で左心房内の血栓の有無を検査します。

また、より侵襲性が低い造影CTも血栓の有無を確認できます。患者さんの状態に応じて検査方法を選択します。

得られる情報

  • 心臓の構造
  • 血流
  • 血栓の有無
  • カテーテルアブレーションの適応

不整脈の治療法

不整脈の治療には、患者さんの不整脈の状態に応じて、外科的治療から薬剤療法までさまざまな治療法があります。以前は治らないと考えられていた、心房細動を治療する方法も出てきています。

1 除細動

直流電流を心臓に与えて、不整脈を正常な洞調律リズムに戻す治療法です。

心室頻拍で血行が破綻し、血圧が低下してショック状態になっている場合や心室細動が起こったときに使用します。

2 ペースメーカー

ペースメーカーで人工的に規則正しい電気信号を作り、心臓のポンプ機能を整える治療法です。
ペースメーカーにはさまざまなタイプがあり、不整脈の状態によって選択します。いずれの場合も、異物を体内に入れるため、術後の管理は注意深く行います。 合併症として、感染、心不全、不整脈、心タンポナーゼなどがあるため、バイタルサインや心電図などを確実に観察して未然に防ぐようにします

普通のペースメーカー

徐脈性不整脈で完全房室ブロックや洞機能不全が適応となりますが、徐脈性心房細動で脈拍数が30くらいの場合にはバックアップとして入れることがあります。 このタイプのペースメーカーを入れた場合は、激しい運動などを行っても問題はありません

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* ペースメーカーの仕組みと適応となる疾患

植込み型除細動器(ICD)

ICDは、心室頻拍や心室細動を感知して、自動的に除細動を行うペースメーカーです。

突然死を予防することを目的としています。

適応は以下のような場合です。

  1. 心室頻拍が繰り返し発生し、薬物治療の効果がない場合
  2. カテーテルアブレーションを行っても完全に抑え切れない場合
  3. 心室細動やその既往がある場合

心室細動での適応は、心臓電気生理的検査(EPS)の誘発テストで判断します。

誘発テストで心室細動を発症し、「家族歴があり、症状もある場合」「家族歴はないけれど、失神発作などの症状がある場合」は適応となります。

しかし、誘発テストで発症しても、「家族歴や自覚症状がなく、心電図ではQT延長症候群やブルガダ症候群と診断される場合」は患者さんとご家族との相談の上で決めます。

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心臓再同期療法用ペースメーカー(CRT)

右心室・左心室を同時にペーシングし、収縮の同期性を回復させる方法です。

拡張型心筋症で薬物療法を行っても、頻繁に心不全になってしまう場合に適応となります。

両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)

CRTとICDの機能を併せてもつペースメーカーです。

  1. 重度の心不全
  2. 心室細動や心室頻拍を発症し、めまいや失神などの症状の既往がある場合
  3. EPSで心室細動が誘発された場合

に適応になります。

3 カテーテル治療

カテーテル治療は、不整脈の原因の心筋組織を焼灼する治療法です。

直流通電法と高周波通電法(高周波カテーテルアブレーション)の2種類があり、最近は、侵襲が穏やかな高周波通電法(高周波カテーテルアブレーション)が主流です。

高周波カテーテルアブレーションの対象は頻脈性不整脈(房室結節リエントリ頻拍、WPW症候群、心房粗動、心房頻拍、心室頻拍)で、根治治療として評価されています。しかし、房室ブロックや血栓症、心タンポナーゼなどの合併症のリスクもあるため、術前にEPSで適応を厳密に判断し、慎重なカテーテル操作に努めます。

術後はカテーテルを挿入するガイドであるシース抜去後の出血など、合併症発現の早期発見に努め、患者さんの精神的ケアも行います。最近では、心房細動の根治療法も行われています。

4 薬物治療

不整脈の薬物療法は、以下の3種類に分類できます。

  1. 不整脈を抑制する抗不整脈薬
  2. 不整脈を発生させない環境を整える薬剤
  3. 不整脈に関連して発生する疾患に対する薬剤

抗不整脈薬は作用機序によって分類され、ヴォーン・ウイリアムズ(Vaughan・Williams)分類(下表)やシシリアン・ガンビット(Sicilian・Gambit)分類などの分類法が、臨床現場では広く支持されています。


ヴォーン・ウィリアムズ分類

前者は、心筋に対する電気生理学的作用に基づき、チャネルや受容体への作用を4群に分類したものです。しかし、複数の作用機序をもつ薬剤の開発が盛んになり、分類が困難になったため、すべての作用機序を記載した後者の分類が出てきました。ただ、分類されていなく、理解が困難なため、ヴォーン・ウイリアムズ分類を覚えるだけでも十分です。

ただ、近年相次いで発表されたガイドラインでは、ヴォーン・ウイリアムズ分類に基づいて選択した抗不整脈薬を長期に使用していると、新たに不整脈が発生したり、再発する「催不整脈作用」によって予後を悪化させてしまうことから、シシリアン・ガンビット分類の「不整脈の発生機序」と「薬物の作用機序」に基づいて選択する考え方も出てきています。

(ナース専科「マガジン」2010年1月号より転載)
イラスト/横山テルミ