【連載】血液ガスの基礎知識とアセスメント

酸素分圧とは? 体内に取り込まれる酸素の計算の仕方

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事


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 みんなが苦手とする血液ガス分析。この連載では、Q&A方式でわかりやすく解説します。今回は「酸素分圧」について取り上げます。

Q2. 酸素分圧って何ですか?

 酸素分圧とは大気中に含まれる酸素の圧力です。

 大気中の酸素の割合はおよそ21%なので、乾燥した状態での酸素分圧は「1気圧(760torr)×0.21≒160torr」です。

気圧下のガスの割合を表した図

体内における酸素分圧の変化

 呼吸に伴う加温(37℃)・加湿(100%)によって酸素分圧が変化します。

 37℃の水蒸気圧は47torrなので、「(760-47)×0.21≒150torr

 しかし、動脈血液ガスの酸素分圧の正常値が80~100torrであることから、肺胞内に取り込んだ酸素がすべて血液中に取り込まれるのではないということが推測できます。

 肺胞内には体から放出された二酸化炭素も存在します。二酸化炭素(正常値:40torr)が運ばれてきて肺胞に放出されると、酸素の占める割合がその分だけ減り、肺胞気酸素分圧は110torrとなります。

 さらに、肺胞から動脈血に移動するときに10torr程度のロスが生じるため(肺胞動脈血酸素分圧較差:A-aDO2)、PaO2は100torrが正常値となります(図3)。

酸素の循環説明図

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分圧とガス交換

 酸素は酸素分圧の高いところから低いところへと移動します(図4)。

 肺胞内とその周りを流れる肺胞毛細血管の血液との間に分圧の較差ができ、この分圧の較差により肺胞から動脈血中に酸素が移動します。

 また、体内を循環している血液から末梢組織への酸素の移動も、分圧較差を利用しています。

各器官での酸素分圧説明図

酸素化と拡散障害

 血液が酸素を取り込んで十分に酸素化されるのにかかる時間は、およそ0.25秒です。血液は一つの肺胞毛細血管を約0.75秒で通過しますから、酸素化には十分余裕があります(図5-左)。

 しかし、肺胞と毛細血管の間の膜が間質性肺炎やARDS、ALIなどによって厚くなったり、肺水腫などで水分が貯留していたりすると、酸素化に時間がかかるようになります(図5-右)。

 酸素化にかかる時間が0.75秒よりさらに長くなると、肺胞毛細血管を通った血液が十分に酸素化されていない状態になります。これを「拡散障害」といいます。

酸素化と拡散障害説明図

二酸化炭素と拡散障害

 二酸化炭素も高い圧から低い圧へと移動する性質をもっています。

 PaCO2の正常値40torrに対して、静脈血二酸化炭素分圧(PvCO2)は45torrです。較差はたった5torrですが、移動のスピードは酸素より速く、酸素の200倍がすみやかに静脈血中から肺胞内へと移動します。

 このため、肺胞と毛細血管の間の膜が厚くなったとしても、二酸化炭素の拡散にはそれほど影響を与えません。

 二酸化炭素が十分拡散されなくなってしまうのは、肺胞内に二酸化炭素が溜まっていて分圧の較差がない場合、つまり換気ができていない状態と考えられます。

 

(『ナース専科マガジン』2010年4月号から改変利用)

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