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【連載】血液ガスの基礎知識とアセスメント

【酸素化の評価】PaO2が低い・高いときのアセスメントとケア

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

Kangoshi kaigi

患者さんの酸素化を評価する際には、PaO2とSaO2の数値を用いてアセスメントしていきます。何がポイントになるのかをつかんでおきましょう。


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【目次】


酸素化はPaO2とSaO2で評価する!

PaO2とSaO2ってなに?

PaO2は、動脈血中の酸素分圧を表現しています。正常値は80~100torrであり、これは、動脈血中にあるいくつかのガスのうち、酸素が1気圧(760torr)下で100torrあるということを意味しています。

動脈血中の酸素は血漿に溶けて存在しているもの(溶存酸素)と、血中に含まれるヘモグロビンと結合しているもの(結合酸素)に分かれます。

ヘモグロビンは1gあたり、およそ1.34mLの酸素と結合することができ、100mLの血液中にヘモグロビンが基準値の14gあるとすると、14×1.34=18.76で、18.76mLの酸素がヘモグロビンと結合しているわけです。ただ、これはすべてのヘモグロビンと酸素が結合した場合の量であり、実際には結合していないヘモグロビンも少量あります。

ヘモグロビンと結合している酸素の割合を示すのが、酸素飽和度で、動脈血中の酸素飽和度をSaO2と表します。

すべてのヘモグロビンと酸素が結合している状態=100%が最高値となります。PaO2が150torrとなるとSpO2は100%に近づきます。SaO2が100%となった状態で酸素を投与し続けても、すでにヘモグロビンはすべて酸素と結合しているため、結合酸素の量に変化はなく、ただ溶存酸素が増加することになります。

酸素解離曲線を理解しよう!

酸素の多くは、ヘモグロビンと結合することで運搬され、その結合率は酸素分圧によって規定されます。従って、酸素化を評価するにはPaO2とSaO2を見ていく必要があります。

PaO2とSaO2の関係は、その標準的な関係を示す酸素解離曲線(図)によって理解することができます。横軸が酸素分圧、縦軸が酸素飽和度になっていて、PaO2の値を見ることでSaO2の状態を理解することができますし、逆にSaO2の値が分かれば、PaO2の値を知ることができます。

このグラフの特徴は、ヘモグロビンと酸素の結合の割合がPaO2によって変わる(一定でない)ため一直線ではなく、S字状になっていることです。これは、ヘモグロビンが酸素だけでなく、二酸化炭素の運搬機能も有するためで、後述する酸塩基平衡(pH)に関係します。

酸素解離曲線を見るときは、動脈血と静脈血の正常値を理解していることが、ポイントになります。

図を見てください。動脈血の正常値はPaO2が100torrですが、年齢の幅や患者さんの病態による違いを踏まえて、80~100torrが正常値とされています。このときのSaO2の値を見ると95~97%となり、これがSaO2の正常値です。

一般的に、血液ガス分析または動脈血採血は侵襲性の高い検査のため、頻繁に行われることはありません。代わりに、パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を指標として用いています。基本的にSpO2が常に95%以上であれば、PaO2もまた常に80~100torrの正常値にあると考えることができます。逆に、95%を下回るようであれば、低酸素症の危険があると推察されます。

一方、静脈血の正常な酸素分圧は40torrで、酸素飽和度は75%とされています。つまり、正常な状態であれば人は心臓から末梢まで血液を循環させる中で、血中の25%の酸素を体内の組織へ放出していると考えられます。

前述したように、SaO2の最高値は100%であり、それ以降は酸素量が増加しても値は一定となります。グラフを見ると、酸素解離曲線はPaO2が60torr、SaO2が90%を超えるとゆるやかなカーブを描きます。逆に、この値を下回ると、PaO2の値が少し低下しただけで、SaO2の値が大きく低下し、そのカーブも急角度で下降していくことがわかります。

例えば、PaO2が70torrから60torrへ下がると、SaO2は93%から90%へ3%低下します。さらにPaO2が60torrから50torrに下がると、SaO2は90%から80%へと10%も低下します。PaO2はどちらも10torrしか低下していないのにもかかわらず、SaO2では大きな違いがあり、血液に含まれる酸素量に影響を与えます。医師が「サチュレーションを92%以上に保つように」という指示を出す理由は、このポイントを下回ると、一気にSpO2が低下してしまうためなのです。

PaO2が低いときのアセスメント・ケア

PaO2が低いときのアセスメント

PaO2が低くて低酸素が疑われる場合でも、一般的に病棟では先に血液ガスを検査することはほとんどありません。

多くの場合、パルスオキシメーターによるSpO2を測定することになります。そして、測定の結果、SpO2値が低いときには、次のような視点でアセスメントをしていきます。

1.患者さんの様子を観察する

SpO2の正常値は95~97%ですが、それが93%以下になると、顔色が悪い、調子が悪いなど患者さんの様子から、見た目でもその低下を推察することができます。

低酸素が疑われる数値が示されたら、まずは呼吸回数、脈拍数、血圧などのバイタルサイン、顔色や疼痛の有無などの一般状態を観察して、患者さんに低酸素状態の徴候があるかどうかを確認します。

SpO2値以外に明らかに低酸素状態を示すサインがあれば、低酸素状態にあるとして対応します。低酸素状態の場合には、緊急を要することもあるので、すぐに医師やほかのスタッフを呼び、酸素療法や血液ガスをとるなどの先の処置に備えます。

2.データの信頼性を確認する

逆に、SpO2値は低くても患者さんの顔色がよく、脈拍も速くなく、呼吸もゆっくりしていて低酸素状態とは考えられにくい場合には、出ているデータの信頼性に問題がないか考えます。そのときは、低く出ているSpO2値が正しいかどうかの評価をします。

パルスオキシメーターは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの赤色光と赤外光の吸光度の違いを利用して、酸素飽和度を測定します。従って、センサーを装着している部位の脈が感知できないと、その値の信頼性は低くなってしまいます。特に、指先に装着する場合は、末梢血管の収縮、爪の変形・肥厚などがあると、正確なデータを得ることができず、誤差を生じることになります。

脈拍を感知しているかどうかは、使用している器具の種類によって異なりますが、それぞれ脈拍を感知しているかどうかを表示する機能があるので、それによって確認します。

SpO2に誤差が生じる要因としては、脈拍のほかに患者さんの体動があります。脈波をきちんと感知していても、患者さんが動き回っていたり、指先を動かしていたりすると数値が異常を示してしまうことがあります。じっとしていられない人、けいれん、震えのある人、イライラしている人などは正確な値を得にくいので、どうしても正確な酸素化を調べる必要があるときには、血液ガスを分析して、直接PaO2やSaO2を調べます。

SpO2以外に低酸素状態を示すサインが見られない場合は、患者さんの状況にもよりますが、慌てずにしばらく時間を置いてから再測定します。再測定の場合には、血流があり脈波を拾えそうな部位を探してパルスオキシメーターを装着して、正確な数値を得ることができるようにします。

また、ヘモグロビンの飽和度に依存しているパルスオキシメーターでは、患者さんのもともとのヘモグロビンがどのような値であるのかを知っておく必要があります。貧血の患者さんは、酸素を運搬するヘモグロビンの量が少ないため、あまり正確な値が得られません。貧血が進んだ患者さんでは、常に高めのSpO2値を示します。

SpO2の値が良いにもかかわらず、ヘモグロビンの量が少ないため患者さんは常に息苦しく呼吸回数が多く、脈拍も速いといった低酸素状態を示すことがあります。この場合、酸素療法を行ってもCaO2が改善しないため、自覚症状は変わらないことが多いでしょう。根本的な治療は貧血を正すことです。そこで患者さんのヘモグロビン値を把握しておくことが大切です。

低酸素状態の患者さんの状態はこうなっている!

(1)肺胞低換気状態になっている

何らかの原因で吸ったり吐いたりする力が弱くなり、1分間に肺を出入りする空気の量が相対的に少なくなっている状態です。この状態を呈すると体内に取り入れることのできる酸素量が少ないために、SpO2が低下します。この場合、多くの患者さんで二酸化炭素の排泄も同時に障害されています。

(2)換気血流比の不均衡(V/Qミスマッチ)

肺胞毛細血管の血流量が多い部分の肺胞換気が不良になっています。気管支れん縮(喘息発作)や肺炎、肺水腫、COPD、気管支拡張症などが原因で一部の肺胞が十分換気されない状態になったとき、そこを流れる静脈血が十分酸素化されないために全体として動脈血の酸素分圧が低下します。肺の中に換気の悪い肺胞があちこちに点在しているイメージです。

(3)シャントがある

静脈血が酸素化されないまま動脈血と混ざり合う状態をシャントといいます。解剖学的原因(先天性のファロー四徴症など)と、病的原因(痰による気管の閉塞や、大葉性肺炎などで肺の一部の換気が全くされないため、その部分を通る肺毛細血管を流れる静脈血がそのまま酸素化されずに左心房に流れ込む状態)があります。肺動脈と肺静脈の間の一部がガス交換できないままつながってしまった状態です。

(4)ガス交換障害がある

肺胞と毛細血管の間には肺胞毛細血管膜という膜があり、酸素と二酸化炭素はその膜を通してガス交換されています。この膜が何らかの原因で厚みが増すとガス交換による時間がかかるようになり、結果的に低酸素血症になります。原因は肺水腫で分泌物が溜まる、間質性肺炎で肺胞毛細血管膜(間質ともいう)に炎症が起こって厚くなる、ARDSやALIなど急性の炎症で肺胞毛細血管膜が厚くなる、などが考えられます。

PaO2が低いときのケア

1.低換気状態になっている場合

まず、換気量を増やす必要があります。患者さんの意識レベルが低下していたら、まず気道を確保し、バックバルブマスクを使い用手的人工呼吸で、とりあえず換気をします。このとき、酸素が漏れないように、マスクを顔にグッと押しつけて行います。

この人工呼吸で患者さんの肺に空気を出し入れすることができるようになれば、単純に換気が低いだけの場合は、比較的早く回復します。さらに挿管が必要かどうかは状態を見ながら医師が判断することになります。

緊急性がない場合(意識レベルの低下が見られないときなど)は、NPPVを使用することもあります。

2.V/Qミスマッチが原因の場合

部分的な換気低下はフィジカルアセスメントで観察できる可能性があります。聴診器を用いて胸部をくまなく聴診し、正常ではない呼吸音が聴こえる場所がないかを探しましょう。初めて観察する患者さんでは、前回と比較することができないため評価は難しいといえます。正常呼吸音は非常に弱い音で、慣れない人が聴診すると「聴こえない」と誤解することもあります。聴診のトレーニングには時間をかけて、どのような音が正常ではないのか聴き分けられる力が必要です。

肺野の中で明らかに異常な音が聴こえる場合には、何らかの形でその部分の肺胞の換気が障害されている可能性が高いといえます。分泌物の問題であると考えられる場合(分泌物が気管支に詰まっている、肺胞に分泌物が溜まっているなど)には、その部分が上になる体位(体位ドレナージ)を30分ほど行い、その姿勢で咳をしてもらうなどのケアで分泌物の除去ができる可能性があります。また、患者さんに意識がある場合には起きあがって力強い咳をしてもらうことも効果的です。

3.シャントが原因の場合

病的シャントを作るような大きな無気肺や太めの気管支の痰詰まりが起こると、該当部分はほとんど呼吸音が聴こえなくなります。ひどいときには体位変換がきっかけで片側の気管支に痰が詰まり、片側しか呼吸音が聴こえないというようなことも起こります。

無気肺が疑われる場合にも体位ドレナージは効果があります。該当する部分の気管支の中枢側が重力に対して下側になるような体位を取らせることと、咳の組み合わせで行います。

気管挿管中や人工呼吸器を装着している患者さんなどでは、咳をさせることが難しい場合もあるでしょう。その場合には、バッグ換気で深呼吸をさせます。バッグ換気では圧が上がりすぎないようにしつつ、十分な深呼吸量を確保しなくてはなりません。初心者は指導を受けながら行ってください。また、新生児はバッグにマノメーターをつけて過剰な圧がかからないように調節する必要があります。

4.ガス交換障害が原因の場合

ガス交換障害の患者さんは低酸素症状がひどく、また遷延することがあります。流量の多い酸素マスクを常に装着していないと低酸素になり呼吸困難が悪化することが多いので、酸素投与方法には常に配慮が必要です。顔面にフィットする形のマスクを選び、貯留バッグつきのマスクであればバッグが呼吸のたびに3分の1から2分の1程度つぶれるような使い方が最も効果的です。このようなマスクは60%以上の酸素吸入ができます。

マスクが外れて気づかなかったり、外れた(外した)状態で体を動かしたりしたときには急に呼吸困難になることがあります。このような場合、まずはマスクを付けなおして密着させ患者さんに「速い呼吸」をさせます。ガス交換障害の場合には「ゆっくりの深呼吸」よりも速い呼吸のほうが呼吸の効率がよいことが多いので、声のかけ方に注意します。

マスクを外さないように指導を十分するとともに、うっかり外れたときのために鼻カニューレと酸素マスクを併用する方法も効果があります。また、このような患者さんは食事のときに低酸素になりがちですので、鼻カニューレを使用し、必要であれば食事中は酸素投与量を増やすなどの工夫が必要です。患者さんがADLを行うたびに低酸素を示すときには、その都度酸素量を調整できるように医師から指示を受けておきましょう。

ケアを評価しよう!

患者さんの低酸素状態を改善することが目的の場合、実施したケアの評価は、とても重要です。ケアの妥当性は、SpO2の値で判断します。

始めに考えたように、患者さんの年齢や疾患から目標とするPaO2またはSaO2の値を決め、それに一致しているかどうかを評価します。シャントや死腔換気量が原因のときは、さらに呼吸音を聴いて改善されているかどうかを確認します。

PaO2が高いときのアセスメント・ケア

>>次ページは「PaO2が高いときのアセスメントとケア」について解説します。