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【連載】栄養療法のチカラ

がんになったらどんな食事をすればいいの? ~みるみる体力が落ちて、痩せていく場合~

解説 吉川 貴己(よしかわ たかき)

神奈川県立がんセンター消化器外科部長

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日本人の2人に1人ががんになる時代です。誰もががん予防の魔法のような食事があればいいなあと思うはずですが、残念ながら、現時点ではエビデンス(科学的根拠)のある食事はありません。

理論的には、発がんを抑制する栄養素はありますが、きちんとした実験や研究での確認はできていません。日頃から、野菜や果物を多くとるバランスの良い食事を心がけたいものです。


がんになったら栄養を摂らない方がいい?

バランスの良い食事を心がけてもがんになってしまったら、どうすればいいのでしょうか。

栄養は摂らない方がよい、栄養を与えたらがん細胞が元気になってしまうというのは根拠もエビデンスもありません。

確かにがんは栄養をエネルギーとしますが、がんに奪われた栄養を補給することは、私たちががんに打ち勝つためには欠いてはいけません。

エビデンスに基づいた標準治療が、がん治療の基本ですが、最近はがん治療に耐える体をつくる栄養療法が注目されています。それは、偏った特定の栄養素のみを補うのではなく、三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)に、ビタミン、ミネラルを加えた5大栄養素をバランスよく十分に摂取する方法です。健康な時には食卓の食事から摂取できている栄養素ばかりです。

栄養を摂らないとどうなるの?

がん患者さんでは、代謝異常により痩せていく人が多くいます。この状態を「がん悪液質」といいます。

がん細胞は、人の体の筋肉や脂肪を栄養源としているため、がん患者さんの体には大きな負担がかかっています。そのため、体重が減り筋肉量が減少し、体力が低下する患者さんも多くいます。

がん悪液質説明イラスト

がん悪液質になるとどうなるの?

がん悪液質になると、スムーズな歩行や移動が困難になったり、倦怠感により日常生活全般に影響がでることで、QOL(生活の質)が低下します。特に筋肉量が低下すると、がんの治療にも大きな影響がでてきます。

例えば、手術に対する影響です。ばい菌を殺そうとしたり、傷を治すためのたんぱく質が必要になります。食事から十分なたんぱく質が摂れない場合、筋肉から供給されます。

がんにより低下する筋肉量を最小限に抑えることが大事

がんの栄養として、筋肉や脂肪が消費されたら、その分食事で補給しなければどんどん失われていまいます。がん治療を適切に行うためにも筋肉量を減らさない栄養療法が重要です。

次のページは、「がん患者さんが体重や筋肉量を減らせない食事とは?」。