【連載】冬の多発疾患を極める!

ノロウイルス性胃腸炎対策と看護ケア

解説 塚田真弓

東邦大学医療センター大森病院 感染管理認定看護師

インフルエンザとともに、冬季の集団感染の原因として多いのがノロウイルスです。
強力な感染力を持ち、激しい嘔吐と下痢を伴う急性胃腸炎を引き起こします。

【目次】


ノロウイルスとは?こんな疾患

●ノロウイルスが病原体となる急性胃腸炎で、強い感染力を示す。
●感染経路は経口感染および接触感染で、まれに空気感染もある。
●おもな原因は、カキや他の2枚貝などノロウイルスに汚染された食物を生あるいは加熱不十分な状態で食べたり、汚染された食物を調理した器具を介在して感染する。感染患者さんの吐瀉物や糞便から直接感染するヒト-ヒト感染の場合も少なくない。
●おもな症状は激しい嘔吐や下痢、腹痛などの消化器症状である。
●ノロウイルス感染症の潜伏期間は12 〜48時間で、発症後2〜3日目で快方に向かい、5日間ほどで症状は治まる。症状が消失してからもウイルスは3〜7日間便中に排泄される。

ケアの流れを確認しよう

ケアの流れ説明表

ポイント

  • 徹底的な感染予防 ⇒ 強力な感染力を持つウイルスの伝播を防ぐ
  • 脱水症状を見逃さない ⇒ 激しい嘔吐や下痢により脱水が予想される

発症時の対応とポイント

診断と治療

ノロウイルスによる感染の特定は、ノロウイルス抗原検査キットで吐瀉物や糞便を検査することで行われます。65歳以上の高齢者や3歳未満の乳幼児、あるいは何らかの疾患を有する人など、医師が必要と認めた場合には、保険が適用となります。ただし、ノロウイルスに感染しているにもかかわらず陰性となる場合もあるので、臨床症状と併せて総合的に判断する必要があります。当院では、激しい嘔吐や下痢などの消化器症状があればノロウイルスを疑い、検査結果を待たずに、早急に感染対策を行います。

ノロウイルスに対する有効な抗ウイルス薬はなく、治療は脱水予防などの対処療法が中心です。経口的な飲水が無理な場合や、脱水症状が顕著であるときは補液を行います。

また、症状によっては制吐薬や整腸薬を用いることもあります。止痢薬は、ウイルスの排菌を阻害し、体内にとどめることになるという意見もあり、使用しない場合が多いようです。
基礎疾患のない成人の場合は、特に治療をしなくても4~5日ほどで回復します。

観察はココを見る

ノロウイルス性胃腸炎の症状

ノロウイルス性胃腸炎は、激しい嘔吐を引き起こすことが特徴で、制吐薬が効かないほど、時には床や壁に飛び散るほどの症状が現れます。また、水様性の下痢が、多いときには1日に10回以上起こります。
頭痛や発熱、咽頭痛などの風邪様症状がみられるケースもあります。

【臨床症状が似たほかの胃腸炎も覚えておこう】

臨床では、ノロウイルス性胃腸炎に似た症状の胃腸炎に出合うことが少なくありません。それらの特徴を覚えておけば、鑑別の際にも役立ちます。

疾患名 ロタウイルス性胃腸炎 擬膜性大腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)
感染経路 経口感染、接触感染(まれに空気感染) 接触感染
主症状 下痢(米のとぎ汁のような白い下痢便)、嘔吐、重度の脱水症 激しい下痢、腹痛、発熱
好発対象 0~1歳児が中心 中高年※高齢者や基礎疾患をもつ患者さんの場合は重篤化する
検査法 迅速診断検査(イムノクロマト法)※15分程度で結果が出る CDトキシン迅速検査
感染予防 次亜塩素酸ナトリウム消毒、流水・石けんによる衛生学的手洗い 次亜塩素酸ナトリウム・グルタラール製剤消毒、流水・石けんによる衛生学的手洗い
備考 ワクチンがある 抗菌薬の使用制限により予防効果が見られる

感染予防対策と経過観察のポイント

ノロウイルスの感染力は非常に強く、わずか10~100個のウイルスでも感染するといわれています。そのため、ノロウイルス性胃腸炎では、消化器症状への対処とともに、何より感染予防対策が重要となります。院内で1人でも患者さんが発生すると、病棟を閉鎖しなければ感染が断ち切れないといわれるほどで、冬場の流行期は、病院にとっては頭の痛い季節です。

 そこでまずは、ノロウイルス感染が疑われる消化器症状がみられる患者さんは、検査結果を待たずに、すぐに個室に移します。そして、臨床症状が治まるまで個室隔離とします(通常2~3日程度)。
 院内での感染経路には、患者さんの吐瀉物や糞便からの接触・経口感染、吐瀉物がエアゾル化して舞い上がることによる空気感染があります。そのため、これに応じた感染予防策をとります。「感染させない」「感染しない」ためには、次のようなポイントが重要になります。

看護ケアのポイント

①看護師は個人防護具の着用を徹底する

 ケアを行う際は、ガウンやビニールエプロン、使い捨て手袋、サージカルマスクを着用します。吸引など行う場合には、ゴーグルの着用が必要となることもあります。空気感染が確認されているため、可能ならばマスクはN95を使用するほうが望ましいといえます。
 また、使用した防護具はすべてその場で脱ぎ、感染性廃棄物として処理します。

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②吐瀉物や糞便は的確に扱う

 吐瀉物や糞便などの汚物は、ただちにビニール袋に入れて密封し、すぐに感染性廃棄物として処理します。短時間でも病室内や廊下などに放置することのないよう注意します。使用後のおむつについても同様に処理します。シーツなどのリネン類も感染物とします。
 床や壁についた吐瀉物は、次亜塩素酸ナトリウム溶液で十分に拭き取り、その後水拭きします。拭き取った布やペーパータオルも感染性廃棄物として処理します。この場合注意が必要なのは、アルコール消毒では効果がないということです。

③トイレの共用を避ける

 糞便からの感染を考慮すると、感染患者さんのトイレは、専用のトイレまたはポータブルトイレを用意することが望ましいといえます。それが無理な場合は、使用後は次亜塩素酸ナトリウム溶液で便座やドアノブなど、患者さんが触れた部分を拭き、さらに水拭きします。ほかの患者さんが使用する前に、毎回清掃を行ったほうが伝播防止につながります。

④手指衛生を徹底する

 ノロウイルスの場合、速乾性擦式アルコール製剤による手指消毒は効果がありません。手指衛生を保つためには、石けんと流水による手洗いが最も効果的な方法です。処置や観察のために訪室した後、手袋を外してから、流水による手洗いを実施します。
 手袋をしていても、手指衛生は必ず行います。手袋にピンホールがある可能性もあり、100%感染がないとは言い切れません。また、外す際に汚染することも考えられます。

⑤感染したら勤務しない

 ノロウイルス性胃腸炎の患者さんが発生したら、最も感染しやすいのが、看護師など病棟スタッフです。しかも、多くのスタッフが感染してしまうと、病棟が機能しなくなってしまいます。軽い下痢などでもノロウイルス性胃腸炎が疑われる場合は、無理をしないで仕事を休み、自宅で安静にすることも、感染予防対策としてはとても重要です。

観察はココを見る

嘔吐や下痢が続くと、急速に脱水に至ることがあります。皮膚の状態や水分バランスなど脱水症状の有無をしっかり観察することが大切です。特に免疫力の低い乳幼児や高齢者には要注意です。
また、横になったまま嘔吐する患者さんも多く、その場合吐瀉物が喉に詰まって窒息を起こす可能性があります。そのようなことがないよう、こまめに、しっかりと観察するようにします。

(ナース専科マガジン2013年12月号より転載)

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