【連載】冬の多発疾患を極める!

院内感染を防ぐ!インフルエンザ対策

解説 塚田真弓

東邦大学医療センター大森病院 感染管理認定看護師

冬季に流行するインフルエンザは、ウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。
小児や高齢者では合併症による死亡例も報告されているように、たかが“かぜ”と軽視してはいけません。


【目次】

インフルエンザはこんな疾患

●インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症で、一般のかぜ症候群とは分けられる。
わが国では冬から春先(1 ~ 3月)にかけて流行する。
●季節性インフルエンザとして流行するのは、A/ソ連型(H1N1)とA/香港型(H3N2)が代表的。
●感染経路はおもに飛沫感染だが、痰や鼻汁が付着した手指を介する接触感染の場合もある。
●ウイルスは口や鼻から下気道に入って定着し、上気道に到達して増殖する。
●通常の潜伏期間は感染から1~3日、症状は1週間程度で軽快。
●おもな症状は、突然の高熱(38℃以上。まれに37℃代)、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感など。
●小児ではインフルエンザ脳症を、高齢者では肺炎などの合併症を併発し、重篤化すると死に至ることもある。

ケアの流れを確認しよう

ケアの流れ説明図

POINT

  • 特徴的な症状を見極める ⇒ 48 時間以内に薬物療法を開始する
  • 確実な感染予防対策を実施する ⇒ 感染の拡大を早期に防ぐ

発症時の対応とポイント

診断と治療

インフルエンザの確定診断には、抗原迅速診断キットが用いられます。これは鼻腔や咽頭の拭い液などを検体として、ウイルスを直接検出して測定するもので、15分程度で結果が出ます。ただし、感染直後でウイルス量が少ないと陰性を示す場合があるので、入院中の患者さんなどでインフルエンザの典型的な症状がある場合、必要に応じて6~12時間後に再検査を検討し、確定診断を考慮してもよいでしょう。

治療は、抗インフルエンザ薬を発症後48時間以内に投与します。症状の軽減や、急性期症状の期間の短縮が期待できます。

抗インフルエンザ薬には、ウイルスを感染細胞からほかに伝播させる酵素・ノイラミニダーゼに対する阻害薬(タミフル®、リレンザ®)や、M2蛋白と結合してウイルスの増殖を阻害する薬剤(シンメトレル®)などがあります。タミフル®が一般的ですが、リレンザ®も、10歳代の青少年などを中心に使用されています。

インフルエンザの治療薬

一般名 商品名 投与法 有効性
オセルタミビルリン酸塩 タミフル® 経口 A型、B型に有効
ザナミビル リレンザ® 吸入 A型、B型に有効
ベラミビル ラピアクタ® 静注 A型、B型に有効
アマンタジン塩酸 シンメトレル® 経口 A型にのみ有効

インフルエンザの型にも目を向けよう

インフルエンザウイルスは、RNAウイルスのオルソミクソウイルス科に属し、ウイルス内部蛋白の抗原性の違いからA型、B型、C型に分類されます。ヒトに感染し、流行するのはA型とB型です。RNAウイルスは突然変異を起こすことが多く、不連続抗原変異(フルモデルチェンジ)が起こると、新型インフルエンザが発生します。

季節性インフルエンザは、シーズンごとに流行する型が変わります。ワクチンは、WHOが流行予測により3種を選択するので、どの型が流行すると思われるのかを知ることができます。
 
 看護師もこうしたウイルスに対する知識、シーズンごとの特徴や動き、さらに新型インフルエンザについての情報を収集し、早めの対策を考えておくことが大切です。

観察はココを見る

インフルエンザの典型的な臨床症状は、38℃以上の突然の高熱と、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などです。インフルエンザは、普通のかぜと違い全身症状が先で、鼻汁やくしゃみ、咽頭痛などの上気道症状はその後でみられます。
典型的症状の有無を観察し、インフルエンザと判断されたら、検査結果が陰性でも隔離を行います。また、高熱による発汗からくる脱水症状がないかも観察します。
一方で、同室の患者さんに同様の症状がみられないかを継続して観察します。

感染予防対策と経過観察のポイント

感染予防対策

 インフルエンザウイルスは感染力が強いため、感染予防対策を講じることが急務です。特に入院患者さんの場合、院内に蔓延させないことが重要になります。

〈外来の場合〉

 インフルエンザは飛沫感染(場合によっては接触感染)なので、待合い室などでのほかの患者さんとの接触は極力避けるよう配慮します。可能であれば、座る場所を離したり、空いている部屋で待っていてもらうなどの工夫も必要です。患者さん自身には「咳エチケット」を実践するように指導します。また、医療者が対応する際のマスク着用も必須です。

〈病棟の場合〉

 病棟内で1人でもインフルエンザが疑われる患者さんがいれば、徹底した感染対策が必要です。
 病棟での感染予防対策には、「患者さん間での感染予防」「医療者の保護と媒介を防ぐ感染予防」「院外からウイルスを侵入させないための感染予防」があります。

▼咳エチケット(呼吸器衛生)

  1. 咳やくしゃみをするときは、周囲の人からなるべく離れる。
  2. 咳やくしゃみをするときは、ほかの人から顔をそらせ、ティッシュなどで口と鼻を覆う。
  3. 咳やくしゃみを抑えた手を洗う。
  4. マスクを着用する。

患者さん間での感染予防

インフルエンザの疑いのある患者さんを個室に移します。個室がない場合、あるいは複数の患者さんがいる場合は、病室を限定した集団隔離(コホーディング)を行います。これらが無理な場合は、ベッドの間隔を1m以上に保つか、カーテン隔離をします。検査などで移動が必要な場合は、患者さんにマスクを着用してもらいます。また、同室の患者さんには、患者さんの同意を得て、タミフル®を予防投与します(タミフル®やリレンザ®の予防投与は保険適用外)。
隔離の解除は、学校保健安全法の基本に基づいて行います。

医療者の保護と媒介を防ぐ感染予防

スタッフは、インフルエンザ流行期には、サージカルマスクを着用し、標準予防策に従い必要に応じて手袋を着用し、手指衛生を徹底します。マスクはそのつど取り変える必要はありませんが、汚染時や休憩で外したときには交換しましょう。着用中の注意点としては、顎にかけない、マスクの表面に触れないなどの正しい使用法を実施し、徹底します。流行期には、医療者だけでなく、全職員がサージカルマスクを着用するようにします。
また、流行前に医療者がインフルエンザワクチンの予防接種を済ませておくことも大切です。当院では、毎年10月から11月にかけて、全職員に対するワクチン接種を無料で実施しており、看護師の接種率は97 ~ 98%です。インフルエンザ患者さんが発生した病棟では、スタッフに対しても、ワクチンを接種していない場合には、タミフル®の予防投与を検討します。
万一スタッフが罹患した場合も、学校保健安全法にならって出勤停止とします。

▼学校保健安全法

 学校保健安全法は2012年4月に改定されました。インフルエンザ(鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザ等感染症は除く)を含む9つの第2種感染症について出席停止の基準が定められています。
 インフルエンザについては、基本的に「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」とされています。

院外からウイルスを侵入させないための感染予防

 流行期は「咳エチケット」に従い、鼻水や咳、くしゃみなどの呼吸器症状のある人には、必ずマスクを装着し、病室に入る際は手指衛生を行うよう指導します。さらに院内にはポスターなどを掲示し、予防対策への啓発を行います。
病室内の清掃については、消毒は不要で、通常の清掃で十分です。ただし、接触感染する可能性もあるので、手がよく触れるベッド柵やテーブル、ドアノブなどはアルコールで拭き取ります。インフルエンザ患者さんが退院した後は、アルコールで清掃し、使用します。

観察はココを見る

抗原迅速検査が陰性の場合、あるいは確定診断が行われていない場合は、隔離後でも、抗原迅速検査を検討します。
合併症の症状の有無にも注意が必要です。
特に高齢患者さんの場合は、基礎疾患を有することも多く、身体機能や免疫力が低下しているため、容易に肺炎を合併します。インフルエンザ肺炎の症状である咳嗽や膿性痰などを確認したら、混合性肺炎を疑い、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの検査を行います。
一方、5歳以下の乳幼患児は、インフルエンザ脳症を合併する場合があります。異常言動などの意識障害がみられないか、痙攣を起こしていないかなどの観察を行います。

また、呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者さん、糖尿病などの代謝疾患を有する患者さんも、インフルエンザが重症化しやすく、死に至ることもあるので、注意が必要です。

標準予防策(スタンダードプリコーション)を再確認しよう

「全ての血液・体液・分泌物(汗を除く)・排泄物・粘膜・損傷のある皮膚は、伝播しうる病原体を含む可能性がある」という考えに基づき、患者さんと医療者、患者さん同士の病原体の伝播を防ぐために、感染の有無にかかわらず、適用する基本的な対策です。2007年の改訂で「咳エチケット」の項目が追加されました。

標準予防策の具体策

●手指衛生
●個人防護具
●血液媒体病原体曝露防止
●患者配置・患者の移動
●環境措置
●ケア器具および機器の取り扱い
●リネンの洗濯
●患者の蘇生
●呼吸器衛生/咳エチケット
●安全な注射処置
●特別な腰椎穿刺処置での感染制御手技

(ナース専科マガジン2013年12月号より転載)

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