【連載】冬の多発疾患を極める!

心筋梗塞の看護ケアのポイント

解説 平井美里

東邦大学医療センター大森病院 救急看護認定看護師

心筋梗塞とは、冠動脈の閉塞による虚血性心疾患の一つです。気圧や気温の低いときが最も発症率が高く、なかでも朝から午前中にかけて起こりやすいといわれています。


【目次】


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心筋梗塞はこんな疾患

●冠動脈の閉塞による虚血性疾患の一つ。
●一定時間、心臓への血流が途絶えることで心筋細胞が壊死した状態。
●発症した人のおよそ半数が、発症する数週間前に、狭心症による胸痛発作などの前駆症状を起こしている。
●30分以上持続する紋扼感、圧迫感を伴う激しい胸痛、冷汗、悪心・嘔吐、呼吸困難などの症状がみられる。
●心不全、ショック、重症不整脈、心破裂など、致死率の高い合併症が起こることがある。
●心音は多くの場合、Ⅰ・Ⅱ音が減弱するので、聴診ではⅢ・Ⅳ音が聴取される。
●心電図では、STの上昇とT波の増高がみられる。

ケアの流れを確認しよう

ケアの流れ説明図
図 ケアの流れ

POINT
●血液検査、心電図検査、冠動脈造影検査などにより早期の鑑別診断が重要
→致死的不整脈への対策と再灌流療法による梗塞の拡大を防止
●治療後は安静を保ち、段階的に心臓リハビリテーションを開始
→再梗塞の予防


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入院時の対応とポイント

始めに確認すること

【家族の連絡先】

 入院が決まったら、まず家族と連絡がとれているかどうかを確認します。心筋梗塞の場合は、死亡するケースもあるので、可能な限り来院を促します。すぐに来院できない場合でも、入院時に一度は電話で話をするようにアプローチします。

【フィジカルアセスメント】

 また、ほとんどの患者さんは、自覚症状があって受診しているので、はじめに自覚症状を覚えたときと比較して、今の状態はどのように変化しているか聴取します。できるだけ具体的な事実を把握するため、症状の程度や性状、持続時間などを聞いていきます。ただし、症状は人によって感じ方、表現方法が異なります。例えば、最初の痛みを10とした場合に、現在の痛みはどの程度かなどと質問することで、症状の変化を知ることができます。

 フィジカルアセスメントでは、心音でのⅢ・Ⅳ音の聴取が特徴的です。併せて顔色や呼吸状態なども確認しておきましょう。

治療につなげる準備

【心電図】

 外来の時点で採血や心電図をとっているはずですが、経時的にみていく必要のあるデータもあります。採血の必要性と、採血を行う時間の間隔を医師に確認しておきましょう。心電図は、標準12誘導心電図を準備します。典型的な心電図波形では、ST上昇やT波の増高がみられます。

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【検査に応じた準備】

 心筋梗塞では、ほとんどのケースでカテーテルによる冠動脈造影検査が行われ、本人・家族の同意書が必要になります。患者本人の意識が清明であれば本人の同意を得ますが、それ以外では家族の同意を求めなければならないことを、連絡をとる際に伝えておくようにします。このほかに、心エコー検査、心臓核医学検査などが実施されることがあるので、検査に応じた準備を開始します。

 薬物治療時に必要な点滴ルートの確保は、カテーテルを入れることを念頭に置いて行います。カテーテルは右手の橈骨動脈からアプローチすることが多いので、左手の血管を選択します。

治療時の対応とポイント

治療と介助

 診察と同時に酸素投与、薬剤投与など初期治療が行われます。その後、冠動脈造影検査で冠動脈の状態を評価し、診断がついたらそのまま再灌流療法が開始されます。カテーテル治療を行った際には、動脈に穿刺しているので、治療後に止血介助を行います。翌朝には止血テープを外しますが、止血されていることをしっかりと確認します。

 冠動脈が閉塞している場合に行う再灌流療法は、血栓を除去する血栓吸引療法、薬剤で溶解する血栓溶解療法、経皮的冠動脈形成術(PCI)などにより血流を再開させます。冠動脈形成術にはバルーンを膨らませて血管を拡張するPOBAと、ステントを留置して拡張するBMSなどがあります。いずれも血流の再開を確認できれば、治療は終了です。閉塞が高度であったり、PCIなどが適応外であったりした場合には、冠動脈バイパス術(CABG)が行われます。

 治療が終わったら、心臓リハビリテーションを開始し、社会復帰を目指します。

観察はここを見る

 初期治療では、薬剤投与が中心になります。治療であってもできるだけ心臓に負荷をかけないように、まずは指示通りの投薬であるかをしっかりと確認することが重要です。血管拡張薬、抗凝固薬など薬剤によっては、悪心・嘔吐などの副作用が出現することがあります。心筋梗塞では安静保持が第一なので、嘔気によって上体を起こしたり、横向きになることは避けなければなりません。副作用の症状が出現していないかこまめに観察します。

 経静脈的投与による血栓溶解治療の場合では、再梗塞のリスクがあります。投薬中は循環が維持されているかどうかが観察のポイントになります。再梗塞すると心電図に変化が現れるので、モニタの観察を継続します。また、自覚症状も出現するので、症状の変化を追うことも大切です。心電図モニタや自覚症状などで、再梗塞を示す徴候がみられたら、バイタルサイン(降圧薬、昇圧薬による血圧の変動)、意識障害の有無と併せて、再梗塞と考える根拠を明らかにしておきます。もし心電図波形を読めなくても、他のスタッフに意見を求めることができるからです。体動によって心電図波形に変化が生じることもあるので、電極が正しい位置に装置されているかどうかも確認しておきましょう。

治療後の対応とポイント

合併症・異常所見を見逃さない!

【心電図】

 心電図は、経時的なモニタリングによって波形の異常をチェックします。心室細動や心室頻拍などの致死的不整脈や、緊急対応が必要な房室ブロックの出現には、特に注意が必要です。

【血液データ】

 血液データで注目したいのは、心筋マーカーのCK(CK-MB)、トロポニンT値です。中でもCK-MBとトロポニンTは心筋に特異的で、心筋が壊死したときに血液中に増加します。また、ASTやLDも心筋に関連する逸脱酵素で、これらの値も心筋細胞が障害を受けると異常値を示します。

 心筋梗塞の特徴的な症状の一つである胸痛は、心臓に負荷がかかっている状態を示しています。特に胸骨下と前胸部の痛みの出現に注意します。さらに、悪心・嘔吐、チアノーゼ、四肢冷汗、浮腫といった身体症状の有無も観察していきます。

心筋マーカー 経過
CK 4~8時間で上昇 24時間後にピーク3~4日で正常化
CK-MB 4~8時間で上昇 12~24時間後にピーク3日で正常化
トロポニンT 3~6時間で上昇 12~18時間でピーク約2週間検出可能

見逃すな!急変徴候

 心筋梗塞の発作は突然に起こるので、胸痛などの再梗塞の症状や心電図モニタを注意深く観察することが大切です。また、安静期間は深部静脈血栓が形成されることもあるので、血栓予防薬と弾性ストッキングなどで予防します。血栓が形成されると、ちょっとした動作で血栓が飛んで肺血栓塞栓症、脳梗塞につながります。特に、糖尿病や脂質異常症などの患者さんは形成されやすいので、注意して観察していく必要があります。

看護ケアのポイント

【安静度に応じたケア】

 安静度に応じたケアを行い、心臓に負荷をかけないことが最重要です。身体を動かす前後には、そのときの安静度に応じた体位で血圧を測り、血圧の変化を確認します。体位変換を行う場合も、負荷をかけないために2人で実施します。側臥位にするときには、枕などを当てて寄りかかれる体勢をとります。また、口腔ケアにも注意が必要です。

 特に治療後、血流が再開すると症状が消失するため、患者さんにとっては安静を維持することが難しくなります。安静を保つ必要性を説明し、理解・協力を求めます。

 治療後1〜2日目からは心臓リハビリテーションが開始されます。PT・OTと連携して、患者さんの状況に応じた運動をベッドサイドでも行います。訓練中に、胸痛や不快感、チアノーゼなど発作様の症状がみられたらすぐに中止し、安静臥床にして様子をみます。異常所見はすぐ医師に報告します。

【IN/ OUTバランス】

 なお、循環が維持されていない状態では、尿が出ずに水分が体内に貯留します。これは心不全をきたす誘因となるので、毎時尿量を確認するなど、IN/ OUTをみながら水分管理を行うことも大切です。 

プラスワン

【心臓リハビリテーション】

 心血管疾患の患者さんを対象に、再発予防およびQOL改善を目的として行われます。主体は運動療法で、運動強度は患者さんによって異なります。CK値の上昇が止まっている、心不全がコントロールされている、Q波、冠性T波が出現している、致死的不整脈がコントロールされている、などの条件が確認できたら、心臓リハビリテーションを開始します。

 医師の指示のもと、床上での身体挙上→座位→立位→歩行と、段階的に運動強度・範囲を上げていきます。リハビリテーションを進めるときには、血圧低下と不整脈の出現に注意が必要です。

(ナース専科マガジン2013年12月号より転載)

【心不全のまとめ記事】
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