【連載】冬の多発疾患を極める!

脳出血の治療と看護ケア

解説 平井美里

東邦大学医療センター大森病院 救急看護認定看護師

脳出血は、気温が低い日や気温格差の激しい日に起こりやすいのが特徴です。

原因としては高血圧が多いため、冷水を使いながらの力仕事や、寒いトイレでいきんだときなど血圧が上昇しやすい条件下では特に注意が必要です。


【目次】


脳出血はこんな疾患

●脳血管からの出血によって、血腫が形成された状態。
●長期にわたる高血圧状態で脆くなった血管に、小さな動脈瘤が形成され、それが血圧の上昇などによって破裂し、脳内に出血が起こる。
●血管から流れ出た血液が形成した血腫で、周辺の正常な脳細胞が圧迫を受けて壊死する。
●血腫が大きくなると、頭蓋脳圧が亢進し脳ヘルニアを起こす。
●出血部位別には、おもに被殻出血、視床出血、脳幹出血、小脳出血、皮質下出血があり、部位によって症状は異なる。
●頭痛、悪心・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状は共通する。
●脳出血の原因の約7割は高血圧によるもので、ほかに脳動静脈奇形、脳腫瘍などがある。

ケアの流れを確認しよう

ケアの流れ説明図

POINT

  • 常に血圧コントロールに注意する ⇒ 再出血につながる血圧上昇を予防する
  • 安静に応じたリハビリテーション ⇒ 合併症・後遺症を予防・軽減し、ADL 拡大につなげる

入院時の対応とポイント

始めに確認すること

本人が無理であれば、家族でもよいので、患者さんの既往歴や家族歴などを聴取します。止血薬を使用することになるので、抗凝固薬を服用しているかどうかは重要な確認事項です。
意識障害があるときは、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)などで意識レベルを確認します。
また、血圧の上昇、脈圧の拡大、徐脈といった、頭蓋内圧が亢進したとき現れるクッシング現象がないかもみていきます。

【関連記事】
意識レベルの評価法、JCSとGCSの特徴とは?

治療につなげる準備

治療法の決定に必要なCT画像や検査データを準備します。
また、呼吸・循環の状態によっては酸素投与が必要となるので、その準備をしておきます。
バイタルサインの確認、全身状態の観察を行い、激痛や悪心・嘔吐があるときは、鎮痛薬や制吐薬の使用を医師に提案します。

【クッシング現象】

頭蓋内圧が亢進すると、血管が圧迫され血液量が急激に減少します。すると、脳の血流低下による酸素不足を改善しようと、反射性
調節機能が働いて頭蓋内に血液を送り込み、収縮期血圧が上昇します。その一方で、拡張期血圧は下降し、脈圧が拡大します。脈は緩徐な圧脈となり、40〜50回/分の徐脈になります。このような状態をクッシング現象といいます。

治療時の対応とポイント

治療と介助

脳出血発症直後のCT画像では、病巣が白い陰影(高吸収域)として写ります。このとき、非典型的な出血が認められた場合には、新たに検査が必要になります。MRI検査で脳腫瘍や脳動脈瘤、脳血管造影で脳血管奇形の有無を診断します。

脳出血の治療には、内科的治療と外科的治療があります。出血部位と血腫の大きさによって治療法を選択します。

<内科的治療>

意識清明で、切迫した頭蓋内圧亢進が認められないときに選択されます。内科的治療では、止血薬、降圧薬として、ジルチアゼム塩酸塩やニカルジピン塩酸塩などが投与されるので、準備しておきます。

薬物投与により血圧を低めに保ちながら、安静を図ります。頭蓋内圧亢進がある場合、ギャッジアップを30°程度に保って、安静にします。

<外科的治療>

内科的治療では効果が期待できない場合、意識レベルが低下し切迫する頭蓋内圧亢進がある場合に選択されます。ただし、血腫量が10mℓ未満の小出血、深い昏睡状態、手術できない部位での出血などの場合は適応外となり、内科的治療が行われます。

治療法としては、開頭血腫除去術、脳室ドレナージがあり、症状に応じて選択されます。
術前には、収縮期血圧160㎜Hg以下を目標に血圧をコントロールします。バイタルサインが安定したら、脳圧降下薬を投与するので、看護師はその準備をしておきます。

高血圧性脳出血の手術適応

出血部位 適応のめやす
被殻出血 神経学的所見が中等症、血腫量が31mℓ以上で血腫による圧迫所見が高度
視床出血 血腫除去術の適応はない(脳室ドレナージを行う場合がある)
脳幹出血 血腫除去術の適応はない(脳室ドレナージを行う場合がある)
小脳出血 最大径が3cm以上で神経学的症候が増悪、または出血が脳幹を圧迫し脳室閉塞による水痘症をきたしている
皮質下出血 脳表からの深さが1cm以下

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観察はここを見る

ジルチアゼム塩酸塩には、心抑制の副作用が起こることもあります。心電図をモニタリングし、徐脈や房室ブロックの出現に十分な注意を払います。
また、意識レベル、瞳孔の状態、麻痺の程度を観察します。その様子が、入院時と比較して悪化しているようであれば、頭蓋内圧が亢進していると推察できます。すぐに医師に報告します。さらに、呼吸回数、呼吸パターンなどを観察し、呼吸障害の有無を確認します。

くも膜下出血の特徴も覚えておこう

くも膜下出血とは、脳表面の脳軟膜とくも膜との間にある動脈の破綻によって出血が起こり、脳脊髄液に血液が混入した状態です。原因の約8割が脳動脈瘤で、ほかに脳動静脈奇形、もやもや病などがあり、外傷によっても起こります。
 
特徴的な症状として、よく「これまで経験したことのない激しい頭痛」と称されますが、そこまで強い痛みでないこともあります。しかし、いずれの場合も「突然」であることが共通しており、くも膜下出血の大きな特徴といえるでしょう。強い悪心・嘔吐もよくみられる症状です。

これらの症状から外来を受診し、くも膜下出血の診断を受ける場合もありますが、意識障害で搬送される人も多く、発症者の50%が死に至る重篤な疾患です。

頭部CT検査で確定診断がなされ、おもに開頭手術(クリッピング術)か血管内治療(コイル塞栓術)の外科的治療が行われます
再出血は24時間以内に多く発症し、痛みや血圧上昇がその徴候です。術直後に痛みが出たら、創部の痛みかどうかを見極めます。一方、脳血管攣縮は4日〜14日の間に起こりやすく、3週間程度は注意が必要です。いずれも発症すると予後が悪化します。

くも膜下出血のケアでは、治療後もできるだけ血圧に刺激を与えないことが重要で、移動などでは特に注意が必要です。また、排泄時のいきみなどを避けるため、緩下剤による排便コントロールなども行います。

治療後の対応とポイント

合併症の早期発見

脳出血で最も注意したい合併症が、頭蓋内圧亢進です。特に脳幹には循環・呼吸中枢があるため、ここが脳ヘルニアによって障害されると、意識障害や呼吸停止、血圧低下が起こり、死に至ることもあります。脳ヘルニアの所見である、意識障害、瞳孔拡大、対光反射消失、クッシング現象の有無を確認します。バイタルサインが正常でも、神経系に異常が出ることもあるので、異常所見を早期に発見できるよう気をつけます。

頭蓋内圧亢進の大きな原因は、再出血による血圧の上昇です。血圧の変化には十分に注意して観察することが重要です。

血液データでは、炎症反応を示すCRPやWBCに注目します。これで、頭蓋内圧亢進による意識低下から誤嚥性肺炎を発症していないか、尿路感染が生じていないかをチェックします。
また、感染徴候や髄液漏れがないかなど、手術創も注意して観察します。

見逃すな!急変徴候

意識の低下、血圧の上昇、クッシング現象がみられたら、再出血や頭蓋内圧亢進が推測されます。ケアの際に、傾眠傾向、呼吸パターンの異常などがみられたら、血圧やその他データを確認し、その変化を医師に報告をします。

看護ケアのポイント

脳出血は、出血部位から予測される症状を念頭におき、全身を観察します。

安静臥床が長い脳出血では、長期臥床が廃用症候群や褥瘡、感染症の誘因となることがあります。そのため、これらの予防と後遺症の改善などを目的に、早期にリハビリを始めることが大切になります。ただし、あくまでも治療が優先されるので、自動的な訓練が行えるのは、出血が止まり、血圧がコントロールされてからになります。

急性期には、床上で、体位交換、良肢位の保持、関節拘縮予防の関節可動域訓練など他動的運動を行います。このときも、血圧に大きな変動がないことを確認しながら行います。

退院支援計画は早期に行おう

脳梗塞や脳出血では、麻痺などの後遺症が残るとADLが低下し、退院後の生活は大きく変わります。そのため、家族の介護力や住居
環境、経済力を考慮した上で、社会資源などを上手く活用していくことが重要になります。

しかし、急な発症のため、介護保険が未申請の人も多く、また、独居や高齢者世帯である場合もあり、退院後スムーズに地域に戻れ
ないケースが少なくありません。申請から認定までは1カ月ほど要します。早い時期からMSWや地域のケアマネなどと連携し、入院
から1週間以内には在宅療養を視野に入れた退院支援計画を立てる必要があります。

(ナース専科マガジン2013年12月号より転載)

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