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【連載】血液ガスの基礎知識とアセスメント

アシドーシス・アルカローシスとは|症状、原因、phの評価

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

Kangoshi kaigi

【目次】

アシドーシス・アルカローシスの基礎知識

pHの値は、PaCO2とHCO3-とのバランスによって上下し、下記4つに分類されます。

  • 呼吸性アシドーシス:PaCO2が増加
  • 呼吸性アルカローシス:PaCO2が減少
  • 代謝性アシドーシス:HCO3-が減少
  • 代謝性アルカローシス:HCO3-が増加

こうした4つの関係性が理解できれば、pHの異常値の理解に役立ちます。

ただ、呼吸性と代謝性では、アシドーシスとアルカローシスにおけるそれぞれの増減が逆であることを覚えておきましょう。
また、血中のpHが中性から酸性に傾いた状態=アシデーミア、逆のアルカリ性に傾いた状態=アルカレーミアといいます。

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pH値が低過ぎたり、高過ぎたりした場合、不整脈を起こしていたり、体内の代謝効率が悪くなってしまいます。このことから、pHに異常があれば、患者さんの状態は良くないと考えられます。逆にpHが正常に保たれているのであれば、PaCO2やHCO3-が正常範囲を逸脱していても、生体の恒常性は保たれているということになります。

pHの値

pHの値には1~14まであり、酸性のものにはレモン汁や食酢などがあります。アルカリ性のものには、浴槽を洗うときに使用するようなアルカリ性洗剤などがあります。

人間の場合は、6.8~7.8というごく狭い範囲でpHを調節するようになっています。

正常値は7.35 ~ 7.45とされています。

正常値よりも

  1. 酸性に傾くことをアシドーシス
  2. アルカリ性に傾くことをアルカローシス

と言います。また、

  1. 7.0以下になると昏睡
  2. 7.7以上になると痙攣

などの症状が現れます。

アシドーシスとは

何らかの体の異常で、体内に酸が過剰に存在している状態がアシドーシスです。アシドーシスは、酸を意味するacidusと病的な状態を意味する接尾語の‐sisから成り立つ言葉で、たんに血液が酸性であるという状態とは違います。

代謝性アシドーシス

代謝性アシドーシスは、代謝のバランスが崩れてpHが酸性に傾いている状態です。

例えば、ひどい下痢が続いた場合には、消化管からの分泌物が再吸収されないで体外に排出されるため、HCO3-が失われてpHは下がり、代謝性アシドーシスとなります。また、糖尿病などでは糖代謝異常によって体内にケトン体が蓄積されてしまうことがあります。

このケトン体の影響によって血液が酸性に傾きます(糖尿病性ケトアシドーシス)。ほかにも、乳酸の蓄積や腎不全、尿毒症などによる腎からのHCO3-の喪失なども原因となります。

呼吸性アシドーシス

PaCO2を体外に出せない、肺胞換気量が低下した状態です。呼吸数が低下しているか、1回換気量が低下しているか、死腔が増加しているか、これらのどれかが考えられます。

肺胞換気量の低下、つまり低換気の症状は脳血管障害に限らず、中枢神経の機能低下による呼吸筋の障害などでも起こります。そのほか、麻酔や薬物の影響、意識レベル低下による気道閉塞、COPDによる肺のガス交換の障害、などがあります。

アシドーシスの主な症状

  • 悪心・嘔吐
  • 意識レベルの低下
  • 頭痛や不安
  • 不整脈により心収縮力が低下
  • 交感神経の緊張

アルカローシスとは

体内にアルカリが蓄積された、あるいは酸の喪失によって起こる病的な状態が、アルカローシスです。アシドーシスと同じように、アルカリを意味するalkaloと病的な状態を表す‐sisの2つの語からなる言葉です。

代謝性アルカローシス

酸を中和する役割をもつHCO3-が体内に過剰に蓄積した状態が、代謝性アルカローシスです。

この主な原因としては、激しい嘔吐や胃液の吸引、ループ利尿剤など循環血漿量の減少によるHCO3-値の相対的な上昇やバーター症候群やクッシング症候群などによるNa+、HCO3-の再吸収、K+、H+の排出の促進などがあります。

呼吸性アルカローシス

PaCO2が過剰に排出されている状態です。いわゆる過換気の状態で、必要以上に吸ったり、吐いたりすることにより起こります。

主な原因として、肺炎や気管支炎による軽い呼吸困難、疼痛や不安その他の精神的理由などによる過換気状態で起こります。

アルカローシスの症状

アルカローシスになると低カリウム血症となります。

低カリウム血症で見られる、

  • 筋力の低下
  • 食欲不振
  • 嘔吐

などが見られます。
重症になると意識障害が見られることもあります。

アルカローシスと低カリウム血症

アルカローシスとなると、H+が細胞内から細胞外へ移動し、それに伴い同じ陽イオンであるK+が細胞内へ移動するため、低カリウム血症を招きます。これにより、筋力の低下による呼吸筋の機能低下や心不全などを引き起こします。pHが0.1上昇すると、血中のカリウム濃度は0.4mEq/l低下するといわれています。

逆に、アシドーシスになると高カリウム血症を引き起こすことがあります。これは、アルカローシスと逆の動きをするためで、H+細胞外から細胞内へ移動することで、細胞内からK+が細胞外へ移動し、結果として血漿中のカリウムの濃度が上昇することになります。

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pHの評価

pHとPaCO2とHCO3-との関係で解説したことと、アシドーシスとアルカローシスについて踏まえ、実際にpHをどのように評価していくのかを解説します。

アセスメントをしよう!

pHの評価の際には次のことを見ます。

(1) 患者さんの全体像を把握する

pHは、PaCO2とHCO3-に影響を受けます。いずれかの値が突出していれば、4つの原因のうち何が問題となっているかが分かりやすいのですが、体にはpHのバランスを保とうとする作用(代償作用)があり、呼吸機能と腎機能などが密接にかかわっています。従って、いずれかの値が異常値を示していたら、まずは患者さんの全体像を把握し直す必要があります。
既往歴や過去の血液検査のデータ、さらに腎機能の異常や慢性呼吸不全がないかを確認しましょう。また、利尿薬を長期的に使用していないかもチェックしましょう。

(2) 呼吸状態を確認する

まず、換気の評価をしましょう。きちんと肺で空気の出し入れができているか、呼吸が遅くなっていないか、あるいは速くなっていないかなど、そうした点を観察していきます。pHは肺の換気機能(PaCO2)と腎機能(HCO3-)の影響を受けています。そして、PaO2やSpO2は肺の酸素化能に直接影響されます。血液ガスデータを評価するときにはこれらを別々に考えるようにしましょう。

(3) 全身状態をみる

そして、次に全身状態を見ていきます。例えば、意識レベルが悪いのであれば、呼吸が上手くできない状態になっているかもしれません。また、昨日から下痢をしている、何度か嘔吐したといったHCO3-が減少するような原因はないかも確認します。
それに並行して、バイタルサインも確認していきます。

(4) データをみる

患者さんの状態を把握した上で、血液ガスデータのpH、PaCO2、HCO3-を見ていきます。

アシドーシスの場合

pHが7.35よりも低い場合、体はアシデーミアにあります。それが呼吸性なのか代謝性なのかをみていきます。患者さんが低換気になっている場合、呼吸性アシドーシスと考えられます。逆に、患者さんが糖尿病だったり、激しい下痢をしていたりする場合には代謝性のアシドーシスの可能性があります。

データとともにアシドーシスの状態で見られる症状、アシドーシスの原因となる症状の有無をみていくことが必要です。
また慢性呼吸不全の患者さんの場合には、代謝性代償があるかもしれないので、その点も考慮しながら評価することが大切になります。

それでは実際に数字をみていきましょう(表1参照)。例えば、[1]のようにpH7.22で、PaCO2が60 torr、HCO3-が24mmol/Lの場合は、HCO3-は正常値で、PaCO2だけが増加しているので呼吸性アシドーシスと考えられます。

しかし、[2]のpHが7.38で、PaCO2が60torrで、HCO3-が35 mmol/Lの場合では、どちらの値も増加しています。このとき患者さんに呼吸不全の症状が見られれば、HCO3-の増加はPaCO2の増加を代償した結果と考えられます。従って、同じ呼吸性アシドーシスであっても、このケースは代償によってpHが正常範囲に戻っていると評価することができます。

また、アシドーシスの場合、pHがどの程度まで低下しているかでその重症度が決まってきます。pHが低下すると不整脈が出て、心収縮力が低下したり、交感神経が緊張したりといった症状もみられます。pH7.3を切ったら、「何かおかしい」と考え、7.2以下になったら「危険」とみなします。そして、もしpHが7.1までに低下していたら、かなり危険な状態であり、緊急処置が必要です。

患者さんが会話をできる状態であっても、危険な状態であることに変わりはないので、直ちにドクター・コールをします。挿管の可能性も考え、それらの準備を整えるなど緊急処置の準備をしておきましょう。

呼吸性アシドーシスの場合

体内の二酸化炭素の産出と排出のバランスが悪くなっている状態。
低換気や死腔のぞか、二酸化炭素の産出の増加などが起こっています。

代謝性アシドーシスの場合

腎機能の低下によって不揮発性の酸が蓄積したり、激しい下痢や嘔吐などによってHCO3-が減少している状態です。
糖尿病によるケトアシドーシス、腎不全によるものなどがあります。

アルカローシスの場合

pHが7.45以上の状態が、アルカローシスです。
患者さんが呼吸速迫の状態でHCO3-に異常がなければ、呼吸性のアルカローシス、嘔吐などによってH+が過剰に喪失されている場合などでは、代謝性のアルカローシスが疑われます。

また代償作用は、代謝性のアルカローシスの場合には、HCO3-が増加しているのに伴いPaCO2も増加します。呼吸性アルカローシスの場合には、過換気によってPaCO2が低下するためにHCO3-が減少して代償となります。

例えば(表2参照)、[1]のpHが7.6でPaCO2が40torr、HCO3-が32mmol/Lの場合、PaCO2は正常値にあるので、代謝性のアルカローシスとなります。一方、[2]は[1]と同じpH7.6でもPaCO2が25 torrでHCO3-が24mmol/Lであり、 HCO3-が正常値でPaCO2が減少しているので、呼吸性のアルカローシスということになります。

さらに、[3]のpHが7.5でPaCO2が48torr、HCO3-が34mmol/Lである場合、HCO3-は34mmol/Lと大きく増加しているので代謝性のアルカローシスであるといえます。そこに呼吸性の代償が作用している状態であると理解できます。

アルカローシスでは、pHが8.0など極端に高くならない限り、アシドーシスと比べると急激な症状の悪化は見られず、アルカローシスに傾いているというアセスメントは必要ですが、緊急性はありません。ただ、異常な状態であることには違いないため、医師に報告し、アルカローシスであることを念頭に置きながら、症状の変化を観察していきます。

その症状は、急性アルカローシスと慢性アルカローシスの場合とでは異なり、急性では末梢血管収縮が原因となり、意識障害、不整脈、心機能低下などが起こります。慢性では電解質異常が原因となるため電解質異常に由来する症状を呈します。

呼吸性アルカローシスの場合

肺胞換気量が増えて、PaCO2が減少している状態。
例えば、疼痛による過換気、精神的な興奮、低酸素症を伴う過換気状態などにより起こります。

代謝性アルカローシスの場合

嘔吐や胃液のドレナージなどによるH+の喪失、利尿剤によりCl-の喪失などによって、相対的に体内のHCO3-が増えてしまった状態です。

ケアを行おう

pH異常は、その原因に応じた方法で是正していきます。前述したようにpHの異常の原因には、呼吸に影響を与える疾患と代謝(腎機能)に影響を与える疾患とが考えられます。

>>次ページは引き続きケアについて解説します。

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