【連載】がん副作用ケアを極める!

【がん治療の副作用】便秘・下痢はなぜ起こる?どう防ぐ?

解説 シュワルツ 史子

神奈川県立がんセンター がん看護専門看護師

便秘や下痢は健康な人にも起こる症状です。出現している症状が、がんや治療の影響によるものかどうか正しくアセスメントすることが重要です。


▼がん化学療法についてまとめて読むならコチラ
がん化学療法とは?副作用の出現時期や症状別の看護


便秘・下痢の要因を知る

 便秘・下痢が出現した場合は、以下のような要因が考えられます。

 1. がん化学療法を受けている
 2. 腸管に腫瘍がある
 3. 開腹手術を受けたことがある
 4. 骨髄移植を受けたことがある
 5. 腹部への放射線照射の経験がある
 6. 麻薬性鎮痛薬、抗生物質、抗うつ薬、制吐薬などが投与されている

5つの視点からアセスメントする

視点1. 食事の摂取状況や排便習慣などを把握する

 1. 食生活・・・量、バランス、水分摂取量は十分か
 2. 排便習慣・・・決まった時間に排便があるか、ゆっくり排便できているか

視点2. 排便状況を評価する

 1. 便秘の場合・・・排便に要する時間、最終排便日、残便感、随伴症状など
 2. 下痢の場合・・・症状の持続時間、下痢のタイミング、随伴症状など

 症状の程度を評価する際は、米国NCIの有害事象共通用語基準(CTCAE)が参考になります。

便秘・下痢の評価スケール(CTCAE)
表 便秘・下痢の評価スケール(CTCAE)

視点3. 使用している薬剤を確認する

 抗がん剤の中で便秘・下痢が出現しやすい代表的な薬剤には、便秘ではビンクリスチン硫酸塩、下痢ではイリノテカン塩酸塩水和物があります。

下痢が出現しやすい主な抗がん剤
表 下痢が出現しやすい主な抗がん剤

便秘が出現しやすい主な抗がん剤
表 便秘が出現しやすい主な抗がん剤

視点4. フィジカルアセスメントを行う

 腹壁の緊張や腹水の有無、圧痛の有無、皮膚状態、発熱などの身体所見を観察します。

 下痢の場合は、重篤化すると脱水症状によって意識障害が生じます。皮膚状態、口渇感、脈拍数、表情などから徴候が出現していないか観察します。

視点5. 痛みの有無と程度を知る

 痛みが排便状況に影響していないか確認しましょう。

 開腹手術による痛みやがん性疼痛があると腹圧がかけられず、排便困難から便秘をきたすことがあります。

予防と対処のポイント

予測される症状を説明し、緩下剤を使う

 高頻度で便秘の出現が予測される場合には、あらかじめ緩下剤を服用した上でがん化学療法を受けてもらいます。

止痢薬と水分摂取で脱水を予防する

 下痢に対して、予防的に止痢薬を使用することはほとんどありません。しかし、イリノテカン塩酸塩水和物のように腸管粘膜を障害する抗がん剤を用いる場合は、下痢症状が出現したらただちに止痢薬を投与し、こまめな水分摂取によって体液量と電解質バランスを保ちます。

骨髄抑制のサイクルに留意する

 抗がん剤投与後10日~2週間ほどで白血球が減少します。易感染状態の時期に肛門周辺に傷ができると感染症のリスクが高まるため、下痢が出現した場合は陰部を強く擦らず、3回に1回は保湿剤などで皮膚を保護し、清潔を保ちます。

(『ナース専科マガジン』2012年12月号から改変利用)

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