【連載】伝える技術

安静度に納得していない患者さんへの対応

解説 寺崎 和代

福井大学医学部附属病院 北4病棟・看護師長

療養上の注意点から治療へのインフォームドコンセントまで、看護師が患者さんに何かを伝えなければならない場面は多いもの。
それだけに 「うまく伝えられなかった・・・」という経験も多いことでしょう。
ここでは、ナース専科コミュニティ会員へのアンケートから実際に起こった「伝わらなかったケース」を紹介。どこが問題だったのかを一緒に考えてみます。


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看護師のコミュニケーションとマナー


今回の相談

 自分では歩けると思っていますが、医師から車椅子介助の指示が出されている患者さんがいます。

トイレや検査室への移動時には、車椅子で行くため看護師を呼んでくださいと伝えたら、「私は歩けるのに」と怒ってしまいました。どう伝えればよかったでしょうか?

1.看護師自身が安静の必要性を理解する

 まず、看護師自身が患者さんの安静の必要をきちんと理解していたでしょうか。つまり「なぜ歩いてはいけないのか」が正しくわかっていなければ、患者さんには伝わりません。

 私は「伝える力」は「理解する力」だと思っています。理解できていなければ、形ばかりの言葉になってしまい、伝えたいことを説得力をもって相手に伝えることはできません。

 したがって看護師がまず、なぜ医師からそのような指示が出されたのか、常に根拠をきちんと理解したうえで患者さんに説明する姿勢が大切です。

2.患者さんの先の行動を予測して、ひと言つけ加えておく

 患者さんのなかには、医師からの指示は知っていたけれども自分は歩けるし、看護師が忙しいときに、わざわざナースコールして車椅子でトイレまで連れていってもらうことが「申し訳ない」と遠慮し、自分で歩いてトイレに行ってしまう方もいます。


 けれど看護師が、例えば「今は薬の副作用でふらついてしまうから、一人で歩くと転んでしまうかもしれません。けがをすれば入院が長引いてしまいます。だからどのようなときでも遠慮しないで、必ず看護師を呼んでください」などと、指示の理由をつけ加えて説明することで、患者さんも安心して指示を守りやすくなります。

 また、看護師の側で、「もしかしたらこの患者さんは、自分で歩いてしまうかもしれない」という予測を立て、「お元気そうなので、もしかしたらご自分で歩けると思っていらっしゃるかもしれませんが、今は薬の副作用でふらつきやすくなっているのです」などの説明をつけ加えるなど、看護師らしい観察力を生かした配慮も大切です。

 さらに患者さんの協力や納得を得やすくするには、制限ごとにはきちんと期限を伝えたり、「今後、歩ける時期がきたら、必ずお伝えします」と患者さんの不満や不安を取り除くアプローチも効果的です。

3.お願いごとばかりではなく守りやすい環境を整える工夫を

 医療の現場では、患者さんにさまざまな行動の制限がかかりがちですが、これらのお願いごとを伝えるばかりではなく、指示を守りやすい環境を整えることも大切です。

 例えば、絶食の指示が出ているときは、患者さんのベッド周りに食べ物が置かれていないかチェックするとともに、家族にも絶食の必要性を説明して理解してもらい、食べ物を持ち込まないように協力を仰ぐなど工夫しましょう。

(『ナース専科マガジン』2015年4月号から改変利用)

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