【連載】平手先生の心電図苦手克服応援企画

なんでみんな心電図が苦手なの?

取材 平手裕市(ひらて ゆういち)

心臓血管外科修練指導者、外科専門医、臨床研修指導医。中部大学 生命健康科学部 教授、鈴鹿医療科学大学 非常勤講師、名古屋掖済会病院 心臓血管外科 非常勤医師

なかなか上手に読めるようにならない心電図モニターの波形。高齢者が増え、心電図を扱う機会が増えた看護師にとって、波形の判読は共通の悩みです。 そこで『平手先生の モニター心電図講座』(エス・エム・エス刊)の著者でもある平手裕市先生に、みんなが心電図を苦手な理由についてお聞きしました。


わからないのは、教えてもらっていないから!?



――看護師のみなさんにお話を聞いていると、「心電図モニターの波形の判読は難しい」という声をよく聞きます。どうして難しいのですか?

平手先生  一言で言えば、教えてもらっていないからです。

看護学校のカリキュラムのなかに、単独のテーマとして「心電図の判読法」はありません。循環器疾患の授業のなかでほんの少し教えられる程度です。

私が看護学校で疾病治療論Ⅰ(循環器)を担当していたときも、心電図の話に割くことができた時間はわずか30分程度でした。この程度では、まったく表面的な説明しかできず、国家試験には充分でも実際の臨床現場では役に立ちません。

さらに、看護師となって現場にでれば、基本的に独学の世界です。医学、看護書コーナーにあふれる心電図関連の書籍の多さがその証拠です。

しかし本を読んでもなかなか心電図判読の技術が身につかないのも事実です。

そこで私は、学生や看護師に「誰にでもよくわかる心電図セミナー」へ参加するように案内しています(笑)。


――平手先生は、心電図を判読するための講習会を毎月のように開かれていますね。全国の看護師さんにも教えられていますが、講習会に来られる看護師さんも同じですか?

平手先生  心電図モニターの波形の判読は難しいと感じている人が、講習会に来ているのですかという質問ですね?

答えは、その通りです。自信満々の人は一人もいません。

参加していただいている方は、看護師、救急救命士、臨床工学技士、検査技師、理学療法士、薬剤師、医師、歯科医師、学生と多彩です。それぞれ求められる心電図判読のレベルも経験も全く異なりますが、「心電図が読めるようになりたい」でも、「心電図は難しい」と皆さん感じているようです。

看護師の方では、すでに実務のなかでモニター心電図の判読を必要とし、自分でも勉強しているけれど、自信がもてなくて参加するケース、そして新人看護師として病院へ就職したばかりで先輩や上司に勧められて参加するケースが多いようです。

――平手先生がはじめて心電図を勉強された頃、難しいと思ったことはありましたか?

平手先生  幸運にも難しいと思う前に、関心をもちました。

私は極めて平均的な(?)学生で、病理学の試験は2度も落ちて、3回目は、教授室で世間話をして許してもらったほどです。

ところが、一度だけ実習中にほめられたことがあり、そんなことは他にないので今でもよく覚えています。

標準12誘導心電図やベクトル心電図の実習中に、質問はないかと促されたので、「心電図で記録された電気現象の空間的な評価から描かれる心臓は、実際の心臓の解剖学的形態と必ずしも一致しないのではないですか」と教官に質問しました。そのとき、「ほー、なかなか君は、心電図の意味がわかりかけているようだね」と感心されました。
臨床現場で心電図を判読しなければならないという必要性に迫られ、難しいという苦手意識をもつ前に、関心をいだくことができた背景には、6年間という長い医学教育過程のなかで、生理学、解剖学、病理学、循環器疾患など心電図を理解するために役立つ広範囲の知識を学ぶ機会があったからではないかなと思います。

必要性に追われて学ぶより、興味をいだき、面白いと思って勉強してみると、難しく感じずに、取り組めるのかもしれませんね。

次回は、「看護師はどこまで心電図が読めればいいか」についてお聞きします!


話し手平手裕市

名古屋大学医学部卒後、同大学医学部附属病院に勤務、1993年より現職。心臓血管外科専門医、心臓血管外科修練指導者、愛知県臨床工学技士会顧問。 コメディカル向けの心電図講習会は、18年間におよそ5万人が受講した超人気セミナーである。 平手先生のモニター心電図講習会はこちらから
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『楽しく入門!心電図の冒険 キャプテンHと海賊たち』(シナジー刊)はこちらから

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