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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第4回 患者さんの迷う気持ちに寄り添って治療の意思決定を支援するには?

  • 公開日: 2015/6/21

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、病棟業務の中では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療上の悩みや困難さを訴えるのも勇気のいることでしょう。

そこで今回、患者の病いの語りをデータベース化しているDIPEx-Japanの協力のもと、看護師が患者に対応する上で知っておくべき患者の気持ち・考えを解説します。


語ることは患者が自分自身の考えを整理する機会になる

患者さんの入院目的はそれぞれ異なりますが、治療目的で入院された場合、看護師は当然のようにその目的に合わせて看護を計画し、実践します。

しかし、治療を受けるということに100%納得し、気持ちの整理がついた状態で入院される患者さんばかりではありません。特にその治療がその人の今後の生活や自分らしさに影響をもたらすものである場合、迷ったまま入院される方もいます。

45歳で乳がん治療のために乳房全切除術を受けた女性(インタビュー時47歳)

インタビュー動画

非浸潤がんを全摘すれば理論的完治っていう結論があるけど、温存をした場合、その結論はもしかしたら、ほんの少しの確率だけど、(完治する可能性が)永遠になくなるということもあるのが、もう本当にそこが一番悩みました。

だから、できれば温存できれば、それはそれに越したことはなかったんですけども、こう心配している両親とか、夫の顔を見ていたらやっぱりそういう心配から私自身も解放されたいけど、家族も解放してあげたいなとも思いましたし、子どもたちも安心していられるだろうと思いましたし。

まあでもそれよりも何よりもやっぱり自分の気持ちが一番ですけども、だから本当に、温存しようか、手術の当日の朝まで決められなかったんです。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より

39歳で乳がんの診断を受けた女性(インタビュー時44歳)

インタビュー動画②

がんみたいに難しい病気。先生も治せない、先生の言うことがもうすべてで自分はもう何もできない。「じゃあ、先生にお任せします」っていう世界。

従来の考えというかね、自分がそのつもりでいったんですが、そうじゃないんですね。先生もわからないからこそ、答えが1つじゃないからこそ、自分でいろいろ勉強して、納得して、治療を選ぶっていうのは、「あ、なるほど、こういうことなんだ」っていう。

その何て言うか、その大変なことでも、きれい事でも何でもなくって、普通に必要なことだし、それが自分の結果に跳ね返ってくるんだっていうのがわかりました。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より

この患者さんたちは、迷うために十分な時間や情報や医療者の支援があり、その人なりの意思決定に至ったケースです。

治療選択や治療を受けるかどうかで迷っている患者さんを目の前にしたとき、まずどんな点で迷っているのかを聞いてみることが大切です。

もし医師が伝えた医学的な情報について十分に理解できないと話されたら、患者さんが理解できる形に噛み砕いて説明したり、情報の整理を一緒に行います。

話を聞いてみると、悩んでいる理由は大抵その患者さんにとって大切にしていることやもの、人が関係しています。その思いを十分に語ってもらうことが必要です。

患者さんは語ることを通して、考えを整理したり、別の見方に気づいたりして、その人なりの結論を導きだすことが可能になります。

治療上、時間的猶予なく決断を迫られることもあります。患者さんがよくわからないうちに、どんどん進んでしまったということがないよう、折に触れて声かけをし、よく思いに耳を傾けてみましょう。

いくら迷って決めても結果が望ましくなければ、後悔はつきものですが、迷った時間やそこに寄り添ってくれた医療者の存在はその後の闘病生活を送る上で支えになっていくと思います。


健康と病いの語り ディペックス・ジャパン(通称:DIPEx-Japan)

英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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