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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第7回 術後のリハビリを患者さんのペースで続けられるように支援するためには?

解説 佐藤 幹代(さとう みきよ)

自治医科大学看護学部 准教授 認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン 運営委員

Patient communication

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、病棟業務の中では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療上の悩みや困難さを訴えるのも勇気のいることでしょう。

そこで今回、患者の病いの語りをデータベース化しているDIPEx-Japanの協力のもと、看護師が患者に対応する上で知っておくべき患者の気持ち・考えを解説します。


術後のリハビリを意識して患者情報を集める

術後後遺症は、術式や合併症などで個人差があり、回復には年単位の期間が必要になる場合もあるため、患者さんご自身のペースで進められるような支援が大切です。術後機能回復に向けたリハビリテーションでは、日常生活に無理なく取り入れられるような工夫や、リハビリテーションを辛く感じないで継続できる看護支援の視点を持つとよいでしょう。

44歳で乳がんと診断された女性(インタビュー時49歳)

イメージ動画

左腕が、まず右腕よりは、多少はこう上がりにくいっていうことがあったので、何かリハビリをしなければ。

ただ、家で、腕上げてのリハビリはつまんないと思ったので、じゃあ、両手上げられるのはと思ったときに、やはり仲間が「フラメンコやってみない?」っていうことで。

「ああ、それならば、取りあえず見に行ってみるね」ということで、見学行って、あ、両手も両足もこれはボケ防止にもなるわということで。で、踊ることも、あの学生時代にちょっとやっていたので、ああ、面白そうだねということで、あの、やりました。

やっぱり、あの、ずっと続けるためには、何か楽しみながらじゃないとできないなあというのは感じましたね。で、その踊るっていうことで、自分が意識しないで、その手を上げたりとか、体を動かしたりっていうことができたことは、本当に、まあ今も続けているんですけれども良かったなあと思っています。

あと、やはりその、まあリハビリだけっていうことじゃないっていうことで、日常の中で入れなきゃっていうことで、実は食器を、自分がちょっと手を伸ばした位置で取れるという場所に、食器、普段使う食器を置いて、毎日の中で、右手ではなく左手で取るということを、あの、するようにしました。

やはりそのおかげなのか、人よりも、あのう、手の上げるのはすごい不自由なく、あの・・・、できるようになったと思います。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン > 乳がんの語り」より

術式により、上肢の運動障害、リンパ浮腫、長く続く痛みやしびれ、感覚異常など、乳がん術後の影響は外見からは理解されにくい症状なども含め多岐に渡ります。その経過には個人差がありますが、術後に排液ドレーンが外れれば入院中より、リハビリテーションは開始されます。

手術直後のリハビリとしては、更衣や整容など身近なことから自分で行うことや、病室の壁を伝って上腕を徐々に上げていくことなどが実施されるでしょう。退院後も半年を目途にリハビリを続けていく必要があり、一人で行うリハビリテーションは、辛いこともありますが、取り組むことに少しでも楽しみを見出しながら、また、日常生活動作のなかで自然にリハビリテーションを継続できるよう、ひと工夫する手助けができるとよいでしょう。

ここに紹介した体験者の語りから、趣味の「フラメンコ」を踊ることで自然と腕を上げ、毎日使う自宅のキッチンでも、食器の配置を少し変えることで、リハビリを意識しなくでもその効果を上げていることがうかがえます。

この語りのように、ちょっとした周囲のアドバイスがきっかけで患者さんが前向きな気持ちでリハビリが続けられる場合があります。看護師として患者さんへ、自宅での家事動作、具体的な仕事の作業内容などについて少し意識して話題にしてみてはいかがでしょうか。

退院指導には、患者さんの日常を知ることがとても大切です。どのような生活様式か、どのようなことに興味や関心を持っているのかなど、看護師は、手術前から退院後の生活活動を視野に入れた看護情報を活用して、患者さんが自主的、意欲的に取り組めるリハビリテーションを一緒に考え、また無理なくリハビリテーションを継続できる方法を提案するといった、看護支援を考えることが必要でしょう。


健康と病いの語り ディペックス・ジャパン(通称:DIPEx-Japan)

英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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