【連載】IN/OUTバランスと輸液

水・電解質のバランス異常を見極めるには?

解説 三宅 康史(みやけ やすふみ)

昭和大学医学部 救急医学講座 教授 昭和大学病院 救命救急センター長

解説 飯野 靖彦(いいの やすひこ)

日本医科大学名誉教授

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。


水・電解質のバランス異常を見極めるには?

水・電解質のバランス異常を補正するには

体液バランスの異常が疑われるとき、それが過剰な状態なのか、欠乏している状態なのかの見極めが重要です。

体液量が過剰な場合は、まず利尿薬を使用して余分な水分を体外に排出させて、治療のための薬剤や栄養を投与するスペースをつくります。

ただし、腎不全の患者さんでは、利尿薬の効果なく心不全や肺水腫を併発していることもあるので、その場合は緊急透析の適応となります。

体液量が減少している場合は、何が、どこから、どの程度失われているのかを判断し、輸液によりそれを補います。

体液量の増減は、体内への喪失量(例えば、腹水)がゼロと判断できれば、最もわかりやすいのは体重の変化ですが、病室で患者さんの体重を計測するのは容易ではないようです。そこで、臨床症状、IN/OUTバランス、血液ガス、下大静脈径などから推察します。

補正の評価には尿量の変化がポイント

急性期での輸液は、循環血液量を確保するためプラスバランスで投与されます。

一時的に医原性のむくみのある状態を容認するということです。改善するに従って不要な水分は排出されるので、その過程でむくみは解消され、IN/OUTは次第にゼロ〜マイナスバランスに近づいてきます。

体液量が維持されているかどうかは、尿量で推測できます。

輸液開始から4時間ごとにチェックし、さらに大きく24時間ごとにも確認するという2つの視点でみていくことが大切です。

例えば、輸液開始後4時間で100mL、次の4時間で400mL、24時間で前日より1,500mL増えてきたといった変化であれば、快方に向かっていると判断できます。

しかし、輸液開始後4時間で100mL、次の4時間で50mLに減少、もしくは24時間で前日より800mL減っていれば、体内で新たな異変が生じていると考えられます。

このほか、発汗量、発熱の有無、顔色、皮膚の湿潤、呼吸状態、口腔粘膜の乾燥など、患者さんの様子も併せて観察しながら評価することが重要です。


【電解質異常のまとめ記事】
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輸液を行う3つの目的

体液量を補正して生体の恒常性を維持

生命すなわち細胞の働きを維持するためには、細胞外液の量と質を一定に保つこと(恒常性の維持)がとても重要になります。したがって、何らかの原因によって内部環境に変化が生じた場合には、速やかにそれを補正し、正常な状態に戻していく必要があります。

その方法として、血管から直接的に水・電解質、糖質などを投与するのが輸液療法です。

輸液の目的には大きく3つあります。

  1. 「維持輸液」:内部環境を最低限保つため1日の代謝に必要な水・電解質を補給するため
  2. 「欠乏輸液」:下痢や嘔吐によって減少した水・電解質の不足量を補うため
  3. 「ライン確保」:薬剤を投与するため

それでは、水・電解質バランスの補正を目的に行う維持輸液について考えてみましょう。

維持輸液=生存に欠かせない1日の代謝に必要な物質を補給する

体液に欠乏がなくても経口摂取ができない場合、生命維持のために細胞が活動できるだけの内部環境を維持していく必要があります。

そこで1日に必要とされる水・電解質、ビタミン、最小限のエネルギー量を補うのが維持輸液です。

特に、水・電解質は過剰分を体内に貯留することが困難ですが、通常、1日必要量は下記を目安としています。

  1. 水分:1,500~2,000mL
  2. ナトリウム:50~80mEq/li>
  3. カリウム:40~60mEq
  4. カルシウム:10mEq
  5. マグネシウム:10mEq
  6. リン:15mmol
  7. ブドウ糖:約100g

1日必要量は、尿量、体温、食事量、体重、性別、活動性、疾患などから推定されますが、腎機能が低下して尿を濃縮できない人や透析をしている人などでは違ってきます。

維持輸液は欠乏輸液とは異なり、必要十分な経口摂取ができない限り継続することになります。
長期になる場合には、改めて経静脈栄養(ブドウ糖、脂肪、アミノ酸、ビタミン、微量元素の投与)を考えなければなりません。

免疫機能が高まるなど、基本的には腸からの吸収のほうが生理的には適しているので、腸の機能に異常があったり、経口摂取が不能あるいは不十分でなければ、できるだけ経口摂取への切り替えを行います。

欠乏輸液=不足している物質は何かを考え補給する

前述したように、欠乏輸液は不足している物質を補い、内部環境を維持するために行います。

不足する物質とは、水分のほか、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンといった電解質、ビタミンや微量元素です。

例えば、高度の下痢を起こしているときには、細胞内液、細胞外液から水・電解質が失われます。その欠乏量を補い、体液を正常化します。

欠乏輸液で大切なことは、「何が欠乏しているか」の見極めです。

その判断は臨床症状(水分量の低下を示す身体所見など)と検査所見(ナトリウムやカリウムの濃度など)から行い、喪失している物質やその欠乏量を推定して、輸液製剤および投与量を決定します。水分欠乏量は計算式によって算出することができます。

ただし、水以外は欠乏量を一度に体内に投与すると、心臓などの内臓器官への負担が大きく、心不全やショック症状に陥ることがあります。

そのため、1日の投与量は欠乏量の1/2~1/3(安全係数)にして、2~3日かけて補っていくのが原則です。そして、欠乏量が補正された時点で輸液は終了します。

輸液製剤の種類とその違い

輸液製剤の特徴を押さえよう!

輸液製剤の基本は5%ブドウ糖液と電解質輸液製剤

輸液製剤には、大きく水分輸液製剤、電解質輸液製剤、血漿増量剤などがありますが、その中で基本になるのは、水分輸液製剤の5%ブドウ糖液、電解質輸液製剤の生理食塩液です。

輸液療法を行ううえで大事なことは、どの体液を補充するために輸液製剤を投与するのかということ。まずは輸液製剤の特徴からみていきましょう。

1.水分輸液製剤

水分だけの補給を行う輸液製剤で、主に5%ブドウ糖液があります。細胞外と細胞内の水補給に適しています。

2.電解質輸液製剤

水・電解質の補給を目的とした輸液製剤です。

(1)「等張電解質輸液製剤(等張液)」(生理食塩液やリンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液など):投与すると細胞外に分布する
(2)「低張電解質輸液製剤(低張液)」(1号液~4号液):5%ブドウ糖液と生理食塩液をある割合で混合したもので、投与すると細胞内外にバランスよく分布する
(3)「高張電解質輸液製剤(高張液)」(20%ブドウ糖液、3%高張食塩水など):5%ブドウ糖液や生理食塩液に添加(希釈)して電解質の不足分を補う

3.血漿増量剤

出血やショック時の循環血漿量の補正、脳浮腫予防、腎不全初期などで投与される輸液製剤です。また、血管内の膠質浸透圧を維持したい場合に選択されます。

分子量が大きく血管透過性が低いので、血管内だけに分布します。主なものにアルブミン製剤のほかデキストラン製剤があります。

組織残留が認められるため、投与は5日間以内と短期間になります。

(『ナース専科マガジン』2015年6月号から改変利用)

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