【連載】IN/OUTバランスと輸液

「ショック」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

解説 小島 直樹(こじま なおき)

公立昭和病院救命救急センター

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。


体内ではこんなことが起きている!

ショックとは、急激に全身の循環に障害が起こり、末梢組織の酸素需要に対して必要な酸素が供給できなくなった状態です。遷延すると重要な臓器や細胞の機能が維持できなくなり、急速に死に至る場合もあります。

そのため、ショック状態であることを見抜くことと、原因の鑑別を迅速に行うことが非常に大切です。

ショックは原因により、

  1. 循環血液量減少性ショック
  2. 血液分布異常性ショック
  3. 心原性ショック
  4. 心外閉塞・拘束性ショック

の主に4つに分類されます。

ここでは特に輸液管理が重要になる「循環血液量減少性ショック」を中心に解説します。

循環血液量減少性ショックの場合

循環血液量減少性ショックの中で最も重要な「出血性ショック」は、消化管出血や大動脈瘤破裂、大動脈解離、肝細胞がん破裂、子宮外妊娠などの疾患による内因性のものと、外傷などの外因性のものに分けられます。

体内から失われるものは水分と血球や血漿です。

そのため、最初は血液全体の量が減少しますので、血液の濃度に異常はなく、出血してから数時間は血液検査をしてもヘモグロビン(Hb)の低下などの異常が見つからないことがあります。

しかし、出血直後から身体の中で体液のバランスを取ろうとして、血管内から体外に出ていった血液の代わりに、間質液を血管内に戻して循環血液量を維持し、血圧を保とうとします。

間質液から血管内へ水分が移動すると、血液は薄まっていき、出血から時間の経過とともに貧血が進行します。全体としては体内の水分もHbも足らない状態です。

ショックには輸液でこう補正する!

ショックの場合の輸液の目的は、①不足している循環血液量を元に戻すこと、②ショックからできるだけ早く離脱させ、続発する臓器障害を少しでも減らすこと、の2つです。

ショックであると判断されたものの、原因の鑑別に時間がかかると、低血圧状態を遷延させてしまう危険があります。

そこで、まずは血圧を上昇させるための緊急処置として、初期輸液を行います。

その初期輸液にはナトリウムを含んだ細胞外液補充液(等張液)を用い、血管内の水分を増やして循環量を増加させ、血圧を保つことを最優先します。

出血性ショックであると鑑別された場合は、出血の原因を身体診察、超音波検査、CT検査などにより探し当て、それらに対して止血処置を行います。

ただし、迅速に輸血をしなければ循環の維持ができなくなるので、ショックに陥るような出血に対しては、できるだけ早期からの輸血が必要です。

入院前から出血性ショックが強く疑われる場合は、血液型不明という前提でO型(できればRh-)のRCC(赤血球濃厚液)を準備しておくとよいでしょう。FFP(新鮮凍結血漿)や血小板が併せて必要な場合もあります。

また、出血に対する循環維持のためには、出血量の約3倍の細胞外液量が必要だといわれています。

これは、血漿だけでなく細胞間質の水分も失われており、輸液を行う場合はそこにも水を染み渡らせる必要があるからです。

怠るとコワイ!輸液管理のポイント

◆止血後に体内で血液が足りてきたかどうかは、Hbの値と実際に血管内容量がどの程度満ち足りたか(超音波や胸部X線写真など)で判断します。

◆出血性ショックから離脱できてくると、まず収縮期血圧が上がり、次に拡張期血圧が上がってから、最後に心拍数が下がります。したがって、収縮期血圧が正常になったからと安心せずに、頻脈が落ち着いてきているかまで、しっかり観察しながら輸液管理を行います。

◆輸液量が足りているかを評価するには、血管内ボリュームの評価が必要です。それには心臓、腎臓に問題のない人の場合、尿量が基準になります。

最初はほとんど尿が出なかった状態から、循環血液量が安定してくると次第に尿が出始め、あるときから急に尿量が増え始めます。まずは、最低でも体重当たり1時間に0.5mL、50kgの人なら25mL/時の尿が出ることを目標とし、次第に尿量が増加して1時間当たり2m?、50㎏の人ならば100mL/時程度出てくるようになれば、輸液量を減量するように心がけましょう。

◆既往歴や救急隊からの搬送時の情報などから、事前に心不全による心原性ショックが強く疑われる場合は、急速輸液は禁忌となります。

(『ナース専科マガジン』2015年6月号から改変利用)

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