【連載】IN/OUTバランスと輸液

「腎不全」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

解説 垂水 庸子(たるみ ようこ)

昭和大学病院総合内科(ER)

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。


体内ではこんなことが起きている!

急性腎不全には、腎血流量の低下によって起こる腎前性と腎臓自体が障害されている腎性、尿路など腎臓以降に問題のある腎後性があります。

ここでは、腎前性と腎性の急性腎不全でのIN/OUTバランスについて説明します。

腎前性急性腎不全の場合

基本的には、循環血液量が不足し、血管内の水分もしくは水分とナトリウムが不足した状態です。そのため、腎臓に十分な血液量が行き渡らなくなっています(腎血流量の減少)。

原因としては、脱水が多く、ほかにショックなどによる血圧低下、出血、心不全、ネフローゼ症候群、慢性肝疾患、腹部コンパーメント症候群、輸入細動脈の狭小化をきたす薬剤(NSAIDs、ACE阻害薬など)が挙げられます。

腎血流量の減少により糸球体濾過率が低下するため、乏尿、または無尿となります。

また循環血液量が減少することで、腎臓はナトリウムと水の再吸収を亢進させ、低ナトリウム尿、高浸透圧尿を呈します。また、尿比重は高くなります。

これらの尿の所見は、腎性との鑑別においても重要です。

腎性急性腎不全の場合

腎性急性腎不全の原因はさまざまですが、腎虚血や腎毒性薬剤の使用によって生じる急性尿細管壊死が大部分を占めているといわれています。

この場合、まず初めに乏尿を生じることが多く、体液量は過剰になり、血中ナトリウムの低下(低ナトリウム血症)が起こります。

また、腎機能の低下により電解質異常が起こり、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシスなどをきたします。中でも高カリウム血症は、致死性不整脈を引き起こすので注意が必要です。尿中のナトリウム濃度はナトリウムの再吸収能が低下するため上昇します。

症状としては、体液過剰により、浮腫、体重増加、高血圧、肺水腫、うっ血性心不全などがみられます。

ほかにも、窒素性老廃物の排泄機能の低下による尿素窒素の増加(高窒素血症)から、消化器症状(悪心や嘔吐、食欲不振など)や中枢神経症状(意欲の低下、全身倦怠感、意識障害)・出血傾向などの尿毒症症状が現れることがあります。

腎不全には輸液でこう補正する!

腎前性、腎性のいずれも、輸液の基本は尿量や尿中の電解質などをみながら、不足している水分や電解質を補うことです。ただし、腎性の場合は水分を制限してバランスをとることもあり、輸液管理はより難しくなります。

腎前性急性腎不全での補正

腎前性急性腎不全の多くのケースでは、腎臓そのものに障害がないため、積極的な輸液によって回復が期待できます。

初期輸液では、不足している循環血液量を補うために、Kを含まない生理食塩液(細胞外液補充液)もしくは1号液を投与します。

まずは、体重1kg当たり20mLの量を比較的短時間に投与し、結果をみて補正していきます。

輸液によって腎血流量が増加すれば、尿量が確保できるようになります。また、頻脈や血圧低下などの循環障害があった場合は改善されていきます。

ただし、心不全、肝不全、ネフローゼ症候群など浮腫性疾患の場合には、体液量、特に細胞外液量が過剰になっているため、輸液は慎重に行う必要があります。

腎性急性腎不全での補正

循環血液量の評価を行い、不足があればカリウムの含まない生理食塩液(細胞外液補充液)もしくは1号液を補います。

循環血液量が充足し、かつ尿量が減少している場合には、維持液としてナトリウム濃度が低く、カリウムを含まない4号液を用いることもあります。

治療によって腎機能が回復し利尿期に入ると、さらに厳密な輸液管理が必要になります。

なぜなら、尿の排出により体液量の不足や電解質の異常が起こりやすくなるからです。特に時間をかけて腎機能が悪化したケースでは、急激に大量の尿が排出されることがあり、注意を要します。

そのため、利尿期では尿量と尿中の電解質、特にナトリウムとカリウムの値を定期的にモニターし、不足している分を輸液で補う必要があります。多くの場合、利尿が現れて数日程度で患者さんの状態は安定していきます。

怠るとコワイ!輸液管理のポイント

◆急性腎不全では、溢水にも脱水にもなりやすいため、それぞれのサインを見逃さないことが大切です。輸液中は特に溢水に注意し、高齢者の場合はショック状態でなければ、緩徐な速度で輸液を行います。

◆溢水によってみられる所見は、呼吸不全、頻呼吸、喘鳴、副雑音の聴取、不穏などです。また、苦しいといった患者さんの訴えも重要です。呼吸数、心拍数、酸素飽和度などを観察し、必要であれば胸部の聴診を行います。

◆特に、心不全を合併している場合は、溢水の状態に陥りやすくなるので要注意です。また、輸液が終わった後で異常がみられる場合もあるので、観察を怠らないようにしましょう。

◆脱水などで大量の輸液が必要な場合は、ただ漫然と行うのではなく、目標とする輸液量を決めて、評価と調整を繰り返しながら投与することが大切です。そういった点からも、看護師による観察はとても重要です。

(『ナース専科マガジン』2015年6月号から改変利用)

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