【連載】IN/OUTバランスと輸液

「心不全」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

解説 垂水 庸子(たるみ ようこ)

昭和大学病院総合内科(ER)

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。


▼心不全の看護について、まとめて読むならコチラ
心不全の看護|原因、種類、診断、治療


体内ではこんなことが起きている!

 心不全では、基本的に体液量は不足しているわけではなく、むしろ過剰な状態にあります。これは、心拍出量の低下によって、動脈側に送り出す血液量(有効動脈容量)が減少したことが原因です。この有効動脈容量の減少により、腎血流量が低下し、結果として身体は水が足りないと判断します。

 すると、交感神経系、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)、抗利尿ホルモン(ADH)が活性化し、水とナトリウムの再吸収が促進され、体液量、特に細胞外液量が増加していきます。細胞外液量が増えてもやはり有効動脈容量は増えないため、また再吸収が促進されるという悪循環を繰り返すのです。

心不全で溜まった水分はどこへ?

 では、増えた水分はどこにいくかというと、まずは静脈内に溜まります。すると静脈圧が上昇し、水分は血漿から細胞間質に移動していきます。つまり過剰な水分は、浮腫や胸水として貯留されるのです。また、ポンプ(左心室)上流に水分が溜まることにより左房圧が上昇、左心房に続く肺静脈の圧も高まり、肺うっ血をきたすことがあります。

 さらに心不全が重症化すると、末梢まで血液が行き渡らない状態(低灌流)になります。また心不全では、低ナトリウム血症の合併もよくみられます。この場合の多くは、身体の中のナトリウムが減っているのではなく、再吸収が進むことで見かけ上の低ナトリウム血症を呈します。

 こうしたことから、心不全では

 1. 低灌流の所見:脈圧低下、交互脈、四肢冷感、傾眠、低ナトリウム血症、腎機能悪化など
 2. 肺うっ血の所見:起座呼吸、副雑音の聴取など

 のような臨床症状が現れます。

心不全には輸液でこう補正する!

 心不全では、不必要な輸液は行わないことが基本です。体液量過剰に対しては利尿薬を投与し、余分な水分を排出していきます。

 1. 経口摂取がある場合:原則として輸液を控え、塩分制限、水分制限を行います。
 2. 経口摂取がない場合:腎血流量が低下して腎不全を起こすおそれがあるため、血流をつくり、身体の機能を維持することを目的に、必要最低限の輸液(維持輸液)が必要となります。

 また、利尿薬や血管拡張薬などの薬剤の投与ルートを確保するために輸液を行うこともあります。

 維持輸液量は、尿量+500mL、尿量が確保できない場合は、1日500~1000mLが目安とされ、緩徐なスピードで投与します。投与する輸液製剤の種類は、病態によりさまざまです。

 例えば、低ナトリウム血症がある場合は、低張液ではなく等張液以上の輸液を行い、水分の総投与量を控えます。不感蒸泄と利尿により、高ナトリウム血症がみられる場合には、少量の低張液投与が必要です。

 このように心不全では、あまり積極的に輸液を行うことはしません。しかし、右室梗塞による心筋梗塞は例外で、細胞外液の輸液を積極的に行って循環血液量を増やします。

 なぜなら、右室梗塞では右心室のポンプ機能低下によって肺から左心系へ十分な血液が送ることができず、ショック状態を招いてしまうからです。右室梗塞では肺うっ血は起こりません。なお、心不全では、臨床症状から血行状態を評価するNohria分類があります。

怠るとコワイ!輸液管理のポイント

◆輸液中は体液量過剰によって起こる、頻呼吸、頻脈、喘鳴、冷汗、不穏など、肺うっ血の徴候を見逃さないようにします。一度、余分な水分が入ってしまうと、利尿薬などで排泄しない限り、状態は改善されません。そのため、バイタルサインのほかに心電図モニターをつけるなど、モニタリングを細かく行うことが大切です。

◆心機能がかなり低下している場合は、スワンガンツカテーテルを挿入することもあります。また、輸液開始前に心エコーで心機能を評価し、下大静脈のエコーにて中心静脈に水がどのくらい貯留しているのかを確認すると、輸液を比較的安全に行うことができます。

(『ナース専科マガジン』2015年6月号から改変利用)

ページトップへ