【連載】IN/OUTバランスと輸液

「糖尿病(高血糖)」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

解説 垂水 庸子(たるみ ようこ)

昭和大学病院総合内科(ER)

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。


体内ではこんなことが起きている!

高血糖では、高浸透圧利尿により体液やナトリウム、カリウムなどの電解質が失われている状態にあります。

これは、血管内のブドウ糖の濃度が高いため、浸透圧作用により水分が細胞内から血管内に取り込まれ、増えた血管内の水分を尿として排泄するからです。

高血糖で臨床的に治療が必要なのは、高血糖高浸透圧状態(HHS)糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を伴った場合です。

HHSとDKAの共通の症状としては、多飲、多尿、脱水による体重減少、倦怠感、意識障害などが出現します。HHSが発症まで数日かかるのに対し、DKAは比較的急速に発症します。

高血糖高浸透圧状態(HHS)

HHSは、2型糖尿病患者に多く、感染症、手術、利尿薬やステロイド薬の投与などによるインスリンの相対的不足によって起こります。症状として、麻痺などの神経学的巣症状や痙攣や昏睡がしばしばみられます。

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

DKAは、インスリンの絶対的不足によりブドウ糖を代謝できなくなり、代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出したときにできるケトン体が血液中に増加し、血液が酸性になった状態(ケトアシドーシス)です。

1型糖尿病に多いといわれていますが、最近では2型糖尿病患者が糖を含む飲料を多飲することによって起きるケースも多く、「ペットボトル症候群」と呼ばれています。

症状として、悪心、嘔吐、腹痛などの消化器の症状が現れることがあります。さらに身体が代謝性アシドーシスを補正しようとするため、クスマウル呼吸などの過呼吸や低血圧、頻脈、呼気のアセトン臭がみられます。

電解質補正の目安

両者はともに大量の水分が失われ、血管内脱水の状態です。HHSもDKAも下記にのようにそれぞれの水分、電解質を喪失します。

  1. 高血糖高浸透圧状態(HHS):水9L、ナトリウム5~13mEq/kg、カリウム4~6mEq/kg、リン3~7mmol/kg
  2. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA):水6L、ナトリウム7~10mEq/kg、カリウム3~5mEq/kg、リン5~7mmol/kg

HHSのほうが著明な高血糖(600以上) を示し、脱水の程度も高度です。体内の絶対的なカリウム量は不足していますが、相対的な高カリウム血症を呈します。まれにショック状態に陥ることもあります。

糖尿病(高血糖)には輸液でこう補正する!

まずは、血管内脱水の補正と腎血流の保持を目的に輸液を行います。 なぜ先にインスリンを入れて高血糖を是正しないのかというと、インスリンの作用によって血管内の水分が糖とともに細胞内に移動し、血管内がさらに脱水になるという状況に陥ってしまうからです。

そのため、生理食塩液の投与を、500~1,000mL(10~15mg/kg/時)で開始、血行動態が安定し、尿量が確保されるまで継続します。高ナトリウム血症(補正ナトリウム>145mEq/L)であれば、1号液に変更します。

尿量が維持されたら血清カリウムの値を測定し、血清カリウム濃度≧3.3mEq/Lであればインスリン療法を開始し、<3.3mEq/Lであればカリウムを補充します。

これは、インスリンを投与すると、カリウムが細胞の中に取り込まれ、血中のカリウムが減少してしまうためです。

インスリン療法開始後も血清カリウム値が4~5mEq/Lになるように適宜補充していきます。血糖値が低下(HHSは300、DKAは200)したら、5%ブドウ糖液に変更し、インスリン投与量を減量して200mg/dL程度の血糖値に保ちます。

これは、脳浮腫を予防するためと考えられています。

一方、DKAではケトアシドーシスが消失するまでインスリンの投与を続けます。

怠るとコワイ!輸液管理のポイント

◆糖尿病患者さんでは、心不全や腎機能が低下している場合が多く、特に初期輸液では、バイタルサインや意識状態、SpO2、尿量の確認とともに、心電図モニター、胸部の聴診などを行い、慎重に観察していきます

◆輸液治療中は、血糖値や電解質を定期的にモニターしていきます。特に、5%ブドウ糖液による輸液の段階では、血糖値を細かく確認していく必要があります。

(『ナース専科マガジン』2015年6月号から改変利用)

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