【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第1回 急変を見抜くには「ホメオスタシス」を理解する!

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


急変とは? 予兆とは?

患者さんの状態が急激に悪化して生命の危機が迫ることを「急変」といいます。急変の少なくとも6~8時間前にはその手がかり(予兆)=「危険なサイン」が現れます。

「危険なサイン」イメージイラスト

例えば、高熱で緊急入院した患者さんのところへ、翌朝ラウンドに行ったとしましょう。上記のような様子をみて、パッと「何かヘンだ」と「危険なサイン」を感じることができますか?そして、そのサインが何を意味しているのかを説明できますか?

この「危険なサイン」を見逃すと、間もなく患者さんは急変してしまうのです。また、「何かヘンだ」と思っても、具体的に説明できないと、ほかの仲間が信じてくれません。今回から始まる連載記事を理解してもらえれば、このケースを具体的に説明できるようになるでしょう。

急変とはホメオスタシスの破綻のこと!

さて、「危険なサイン」とは何でしょう? その前に、「危険」つまり「生命を脅かす事態」とはどのようなことでしょうか。

人間の身体は、その外や内に起こる有害刺激に対して、生体内部環境を安定させようとします。そうしないと、生体として生命を維持できないからですね。

この安定性を保とうとすること=恒常性を「ホメオスタシス」と呼びます。

ホメオスタシスが乱れるにつれて、生命の危険が大きくなります。「急変」とは、このホメオスタシスが乱れて、究極的に破綻してしまった状態です。

ところで、有害刺激は身体の一部分に起こります。これをきっかけにホメオスタシスが乱れると、危険性が全身へと波及します。つまり、急変の流れは下記のようになります。

  1. 有害刺激の発生:出血、感染症、血管の閉塞など
  2. ホメオスタシスの乱れ:予兆(見逃してはいけない危険なサイン)
  3. ホメオスタシスの破綻:急変(誰でもわかるサイン)
  4. 心肺停止

これは原因疾患(有害刺激)が何であっても、ほぼ同じ流れです。

ホメオスタシスって具体的にはなに?

ホメオスタシスとは「内部環境」が安定した状態です。

「内部環境」とは血液の状態に当たります。つまり、ホメオスタシスとは“適切な血液環境が維持されている状態”といえます。全身は血液を介して繋がっており、血液環境が「適切」だからこそ全身臓器(細胞)が機能し、生体が安定するからです。

「血液環境の乱れ」は「全身」に悪影響を及ぼします。これは「全身状態が悪い」などと表現されます。「ホメオスタシス=血液環境=全身状態」と覚えましょう。「部分」の悪影響は命を脅かすことはありません。

血液環境が乱れはじめると、急変を思わせる何らかの微妙なサイン(予兆)があらわれ、「何かヘンだ」という違和感があらわれます。

ホメオスタシス説明図

ホメオスタシスの乱れとは血液環境の乱れでしたが、さらに血液環境の乱れは「量」と「質」の観点から考えられます。

  1. 血液「量」の異常:血液喪失(大出血)、血液過剰(うっ血)など
  2. 血液「質」の異常:酸素の減少、pHの低下(アシドーシス)、炎症促進物質(サイトカイン)の増加など

適切な処置をしないと血液環境の乱れが進行していきます。究極の血液環境の乱れがホメオスタシスの破綻、つまり下記の急変です。

  1. 「質」の究極の乱れ:低酸素血症(努力呼吸を伴う呼吸障害)
  2. 「量」の究極の乱れ:非代償性ショック(血圧低下を伴う循環障害)
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