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【連載】褥瘡ケア あなたの疑問をズバリ解決!

“湿潤環境が高い状態”って具体的にどんな状態?

執筆 石川 環(いしかわ たまき)

岩手県立大学大学院看護学研究科 博士前期課程

普段迷うことの多い浸軟と乾燥に対するスキンケア。ここではアセスメントや観察ポイント、ケア方法などをわかりやすく解説します。


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“湿潤環境が高い状態”って具体的にどんな状態?

多汗・尿失禁・便失禁があると“湿潤環境が高い状態”といえます。この状態になると皮膚は「浸軟」となり褥瘡発生リスクが高まります。

皮膚が湿潤すると、過度の水分によって表皮の角層が膨張し始め、徐々に皮膚が白くなっていきます(図1、2)。

図1 尿・便による臀部の浸軟 図1 尿・便による臀部の浸軟

図2 滲出液による創周囲皮膚の浸軟 図2 滲出液による創周囲皮膚の浸軟

例えば、指に絆創膏を貼付したままで長時間入浴すると、絆創膏を剥がしたときに皮膚が白く変化するのを見たことがあるでしょう。

この状態をいわゆる「ふやけ」といいますが、専門的には「浸軟(しんなん)」と表現します。

予防的なスキンケアが大切

皮膚が浸軟すると摩擦係数は5倍高くなるといわれているため、湿潤環境が高いと判断した場合には、予防的なスキンケアが必要となります。

また、浸軟が持続すると、皮膚のバリア機能が低下し、弱酸性の環境が崩壊して、皮膚のpHが上昇します。

そして中性~アルカリ性の環境では、細菌が繁殖しやすくなるため、感染症のリスクが高まります。

褥瘡に皮膚感染症を併発してしまったら、ドレッシング材の貼付が困難となり、褥瘡ケアにも影響します。

特に、長期間オムツを着用し、失禁がある患者さんの場合、真菌感染に注意が必要です。

近年では、抗真菌成分配合の弱酸性洗浄剤が販売されているため、リスクの高い患者さんには、予防的に使用することを推奨します。

浸軟環境の有無を毎日観察しよう

通常、浸軟は可逆的な変化であるため元の状態に戻ります。

しかし皮膚の浸軟状態が持続すると、細胞と細胞の間を結び付けている構造が崩れ、少しのずれや摩擦で皮膚損傷が起こりやすくなり褥瘡発生リスクを高めます。

厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書」の危険因子の評価には、皮膚湿潤の有無についての判定項目があります。

その内容に、「多汗・尿失禁・便失禁」と記載があるように、これらに該当する場合には湿潤環境が高いと判断します。さらに、リスクアセスメントに用いるブレーデンスケールでは、その程度を点数で評価することができます。

OHスケールを使用している場合は、湿潤の項目がないため、評価を見逃さないよう注意が必要です。

【参考記事】 褥瘡リスクをアセスメントする『ブレーデンスケール』『OHスケール』とは?

褥瘡危険因子の評価は、入院時だけではなく、変化があればその都度計画を追加・修正しますので、湿潤環境が高い状態になっていないか毎日観察します。

(『ナース専科マガジン』2015年7月号から改変利用)

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