【連載】山内先生の公開カンファランス

第16回 SpO2が70%台になってしまった患者さん(その2)

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師


今月の事例
[さくらさんから提供された事例]

慢性心不全の患者さんが肺炎を併発し、入院してきた83歳の患者さん。入院時より経鼻カニューラで3L/分で酸素を投与していました。入院時の医師からの指示は「SpO2 92%未満で酸素を1Lずつ上げる、リザーバーマスクに変更も可で最大8Lまで。97%以上で1Lずつ下げる」となっていました。入院時のSpO2は80%台だったものの、経鼻カニューラ3Lで95%に上昇。

ところが、ある日、患者さんの状態が悪化し、SpO2が70%台となっているのを発見しました。 喀痰を吸引するもSpO2は上昇しませんでした。呼吸はやや頻拍、意識レベルはJCS I台からII台へ低下、脈拍が80台から100台へ上昇、血圧は低下なし、体温は37℃前半、末梢冷感がありました。 酸素マスクへ変更し、酸素を8Lまで上げても88〜90%と酸素の指示範囲を逸脱したままでした。

→この患者さんにどう対応する?


数回にわたってアセスメントしている事例のつづきです。まずは、ナース専科コミュニティの会員に事例のような状況のとき、どう行動するかを聞きました。回答数は190名。


前回の記事はこちら
SpO2が70%台になってしまった患者さん(その1)

山内先生の解説を先に読む方はこちら
山内先生の解説


みんなの回答

事例のような状況のとき、あなたはどう行動しますか?

回答割合グラフ

「その他」を選んだ人の回答理由。

●血ガス測定を施行したい。(MAKI1125さん)

●末梢を温める。(りなさん)

●肺音を聞いて吸引ができているか確認する。(ももさん)

●吸引しリザーバーに変更しDrcall(あつしさん)

●吸引、酸素8L/分に増量後に、起座位。(メガネさん)

●気道の確保をする。(お母さんナース)

「医師の指示を逸脱しているので、すぐに医師に連絡して指示を仰ぐ」を選んだ人の回答理由

●酸素3Lで呼吸状態を維持できていたが、急に8Lでも維持できない状態は急変と受け止め医師に連絡する必要があると考えるから。 意識レベルの低下、循環動態の変調も低酸素によるものだけなのか判断がつかず、生命の危機的状況に直結する可能性が高いと考えるため。(みなみさん)

●意識レベルの低下も見られるので早期に医師の診察を受けられるように連絡し、体位変換や看護技術での安楽に呼吸ができるようにし、SpO2上昇へつながるよう試みる。(ばたばたさん)

●意識レベルが低下傾向なので口呼吸に変化している可能性に対して、経鼻からマスクへ変更している。脈拍上昇していて末梢冷寒があることから心不全の悪化かCO2のガス交換が異常であると考慮し、医師への報告が必要だと考えます。(ぽっちゃりナースさん)

●家族やご本人の意向にもよるのですが、この文面を見て真っ先に感じたのは「悩むなぁ……」ということ。そして悩んでいる暇があるなら医師、もしくは先輩、上司に報告するのが一番だと思ったため。(ナナさん)

●医師が病棟に到着するまでに時間がかかるので、すぐ他のスタッフに連絡してもらい、自分はベッドサイドで呼吸の状態に変化がないかの観察と、体位変換、アンビュー換気など他の方法でSpO2値が上がってこないか試す。(みゆきさん)

●意識レベルの低下を伴うことから、酸素投与以外の早急な対応が必要だと思うから。(匿名さん)

●「喀痰を吸引するもSpO2は上昇しませんでした」と記載されており、吸引では改善されないと考察できるから。(エバーグリーンさん)

●末梢の循環不全の状態や喘鳴の有無を確認して主治医の指示がO2 8Lマックスなので当直医に報告してリザーバーマスクへの変更の相談と血液ガスの相談をします。心不全ということで尿量も判断基準になると思います。(ノアさん)

●上記の事例で仮にSpO2が正常範囲内に戻ったとしても、戻らなかったとしても、一度70%台まで下がったことを医師に報告します。 70%という数値、また3Lで95%であったのが8Lで90%以下というのは、痰づまりでも他の原因でもやはり『急変』と判断するので医師に報告義務があると思います。
………ただ、この事例のSpO2低下の原因が全く予想できないので、この事例を通して勉強したいと思います。(マルさん)

「酸素マスクからリザーバーマスクに変更してみる」を選んだ人の回答理由

●医師の指示がリザーバーマスク可なので変更する。それから状態が急激に悪化しているので、すぐに主治医に連絡する。(どんちゃんさん)

●まず医師の指示範囲内でできることを行う。酸素マスクでも上がらなければできることをしてみる。(美羽ママさん)

●高濃度の酸素を投与されれば酸素飽和度が上昇することが期待できるから。もともと70%台だったのが80%台まで上昇しているので、上昇傾向ということで経過観察としてその後も上昇が見られなければ医師に連絡していくのが望ましいと思う。(いぇさん)

●リザーバーマスクは、呼気時にリザーバー内に酸素を貯え、吸気時にリザーバー内の酸素とチューブから出てくる酸素、マスク内のガスを吸入することができる。通常の酸素マスクに比べ高濃度の酸素を患者さまに投与することができるから。SpO2が上昇するのではないかと考えた。(みきさん)

●状態悪化なので、できることをまず行って、そして急いで医師に状況報告と指示受けします。(ひとちんさん)

●吸引しても呼吸状態が改善しておらず、呼吸状態だけでなく循環動態にも変動をきたしている。循環血液量の過多から、心不全の悪化により肺うっ血が増強していると考えられるため、まずは酸素化を良くすることが先決だと考え、リザーバーマスクへ変更するとの選択肢を選んだ。(プリン好きさん)

●まずは高濃度酸素が投与できるリザーバーに変更する。(ごんさん)

●まずは痰による閉塞などで一時的に増悪し、SpO2低下、意識レベル低下、脈拍上昇が生じていると考える。末梢冷感がありSpO2を正しく測定できていないかもしれないが、レベル低下や心拍上昇があり現在も酸欠が生じていると考えられ、指示範囲内で最大のリザーバーマスクへ変更する。数分みて改善がなければ医師に連絡して指示を仰ぎます。(zyuriさん)

「吸引してみて、変化がないようならすぐに医師に連絡」を選んだ人の回答理由

●吸引直後にはSpO2は上がらないこともあると思うが、看護師が指示でできることをすべて行っており、意識状態も悪くなっているようなので、明らかな改善傾向がなければ医師に連絡すべきだと思う。(ちゃあめさん)

●肺炎のため、喀痰貯留を伴っている可能性が高いから。(むっちゃんさん)

●医者を呼ぶ前に、とにかく原因として考えられることを除去してからアセスメントして、呼ぶ。(かめさん)

●喀痰により気管の閉塞が考えられるため吸引を行う。(ようさん)

●痰による閉塞で酸素化不良のおそれがあるから。(にわにわさん)

●急に酸素化が悪くなったから痰詰まりの可能性があるから。(ぱんさん)

「その他」を選んだ人の回答理由

●さまざまな症状が一気に出てて、肺炎以外に脳梗塞等併発した可能性も否定できないため、リザーバーマスクに変更と同時に医師に連絡します。(ピュアさん)

●まずは、なぜ有効な呼吸が行われないのか、観察をして、原因を探る必要がある。酸素量を上げても、酸素化できない原因があれば無駄だし、原因を早く取り除く必要がある。胸水が貯留している場合は、体位で改善できる。(ご老体さん)

●痰がらみによるSpO2の低下ならば吸引で改善を期待できる。医師の指示がリザーバー可となっている場合、そこまで試して改善が見られなければDrcallし状況を説明する必要があると思うから。(あつしさん)

●リザーバーマスクに変更し、医師へ連絡する。末梢冷感があり、SpO2の値も指標として不十分であり、心不全の悪化や肺炎の悪化を確認する(採血や胸写)には、医師の指示が必要。(サキさん)

●末梢を温める。末梢が冷たいことで、SpO2が低く出ている可能性あり。それでも、92%取れなければリザーバーマスクへ変える。(母さん)

●肺音を聞いて吸引ができているか確認する。吸引していても末梢の痰が取れていない可能性があり、無気肺などの可能性も考えられるため。(ももさん)

●酸素上げて、すぐに医師に連絡。指示を仰ぐ。まずできることをしながら、先生に報告するという同時進行しながら状態をみたいです。(あやきらさん)

●悪寒の可能性もあるため 保温してみる。主疾患に肺炎があり、脈拍の上昇、微熱、末梢の冷感があることで、悪寒により末梢の血管が収縮し、SpO2が低下している可能性があるため。(ぷー大将さん)

「酸素を8Lに上げたので、もう少し様子を見てみる」を選んだ人の回答理由

●酸素を上げてからの経過時間がわからないため、もうしばらく経過観察する。(ダリアさん)

●90%まで酸素飽和度が上がってきたのでとりあえず経過をみたい。(のうえさん)

●SpO2が90%を保持できているのであれば、様子をみてから医師に連絡します。(抹茶さん)

●段々上がることもあるから。あとは気道が狭くなるような体位をとってないか、少しギャッチをあげたりして様子みる。(あっぴーさん)

・・・
 引き続き、みなさんのアセスメントについて見ていきます。次に、もし、この患者さんが喫煙者だった場合、どのようなことに気を付けるかを聞きました。

CO2ナルコーシスに気をつける人が多い

●COPDの可能性があり、酸素を過剰投与することによりCO2ナルコーシスに陥る可能性が高いことに気をつける。(みなみさん)

●痰が粘調になるため、ネブライザーで痰を柔らかくしておく必要があることと、しっかり聴診してどこに痰があるのか把握し場合により吸痰する。(かんかんさん)

●普段のSpO2値が常に低かった可能性も考えられ、CO2ナルコーシスの状態になっている可能性もある。うまく息を吐けない可能性もあるため、主治医に相談してBiPAPを準備するかどうか指示を仰ぐ。(Mさん)

●喀痰が多いことによる痰づまり。喫煙者の人に結構多い……。(ののかさん)

●CO2ナルコーシスに注意し、自発呼吸の減弱や、更なる意識障害が起こっていないか観察する。(ねこちぐらさん)

●COPDなど肺そのものが理由かもしれないが、心疾患や肝腎疾患などの基礎疾患により呼吸にも影響していることも考えられるため、いろんな可能性を考えながら観察する。(みさきさん)

●COPDの診断があるかにもよるが診断がなくても可能性があるため、呼吸機能(酸素化)のアセスメントに加える。(A.Aさん)

●痰が多く、喀痰できないことで痰詰まりを起こしている可能性が高いことを念頭に置き、医師に報告する際そのことも伝える。(agisaucoさん)

●痰が多いと予測できるので、呼吸音を聞いてみる。(ちゃあめさん)

●肺気腫がある可能性を考えて、聴診器で必ず呼吸音をみておく。(macoさん)

●呼吸音とエア入り左右差を確認して体位を調整する。肺痰を促し、自己肺痰困難であれば適宜吸引を行う。(いぇさん)

●ライターなどの火気を所持していないか聞いてておく。そして、ご家族、お見舞いの方々にも酸素の危険性を伝える必要がある。(みきさん)

・・・
 今回の事例では、酸素投与の方法について聞いています。そこで、経鼻カニューラ、酸素マスク、リザーバーマスクと変更するとき、病院や自分のなかでのルールがあるかどうかを聞きました。

経鼻カニューラ、酸素マスク、リザーバーマスクと変更するときのルールは?

●4Lでカニューレからマスクに変更するが、リザーバーマスクに変えるルールはなく適宜行っている。(みなみさん)

●食事ができたり意識の鮮明な状態でありカニューラ接触にて皮膚トラブルのリスクないときには3L以下の酸素の投与であれば経鼻カニューレを使用。8L以下意識レベル悪いときには酸素マスク使用。酸素量8L以上ではリザーバーマスク使用。(ばたばたさん)

●酸素投与のパーセントだけ見るのではなく、口呼吸か鼻呼吸かにもよるし、吸痰の前後にはサチュレーションを上げる目的でマスクに変えたりします。値をみながらカニューラに変えます。やはり、マスクは圧迫感があるので患者さんは望みません。(かんかんさん)

●呼吸の状態を観察し鼻呼吸なのか口呼吸なのか、浅表性呼吸や努力呼吸、年齢や合併症など全身状態をふまえて変更しています。(ぽっちゃりナースさん)

●カニューラは4Lまで、マスクは5Lから。リザーバーマスクは8Lから。(Mさん)

●カニューレからマスクには患者の呼吸状態を見ながら看護師が判断していますが、リザーバーは医師の指示をもらう決まりになっています。(ななさん)

●明確なルールはないが、経鼻は3〜4Lまでマスクは3L以上、リザーバーは呼吸状態にもよるが、マスク10Lでも効果がないときに選択する。(あずさん)

●以前勤務していた病院では、4L迄はカニューラ、5L以上はマスク、8L以上はリザーバーなどの規定がありましたので、事前に主治医に確認しておきました。(ノアさん)

●以前勤めていたところは、3Lまで経鼻カニューラOKで、それ以上はマスク使用でした。理由は鼻粘膜を保護するためでしたが、今は変わったのでしょうか?(マルさん)

●経鼻カニューラは3Lまで、マスクは4〜7Lくらいまで、リザーバーは8〜10L以上で使用する。マスクを外してしまう患者の場合、酸素カニューラを口に当てたりもする(5Lくらいまでなら)。すべて自分ルールです。病院では手術後は3Lマスクの指示ばかりで、なんか苦しそうだなと思ってしまいます。(zyuriさん)

 次ページでは、山内先生の解説を紹介します。

ページトップへ