【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第2回 急変時に生き残るために抵抗する身体「生き残りシステム」を理解する!①

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


ホメオスタシス、つまり血液環境が乱れると、それに全身(患者さんの全体)が反応します。これが「危険なサイン」であることを本解説の第1回でお話しました。

ところで、人体にはもともと「生き残りシステム」なるものが備わっています。

「生き残りシステム」は人間だけではなく、すべての動物がもつ「進化の賜物」です。生命の危険に直面すると自動的に「生き残りシステム」が動き出します。実は、「生き残りシステム」の活性化(全身の反応)が「危険なサイン」として現れるのです。

「生き残りシステム」とは?

生き残りシステム」とは、どんなシステムでしょうか。大きな流れでいえば、

  1. 急変のきっかけとなる有害刺激(出血、感染症、血管の閉塞など)を感知する
  2. 有害刺激が「全身」に広がり、血液環境が乱れることを感知する
  3. 有害刺激の「全身」への広がりを抑え、血液環境の乱れを正すように抵抗する

と説明できます。

自動的に危険を「感知」して、ホメオスタシス(血液環境)を安定させようとして「抵抗」するのです。

第1回で説明した「急変の流れ」に連動しているのがわかりますね。生理学的に言えば、「生き残りシステム」は神経系、内分泌系、免疫系で成り立っています。この3つの系が「全身」に関わっていることに注目しましょう。

「生き残りシステム」説明図

「生き残りシステム」は、「生命の危険」が大きいほど、生命を守るために、ホメオスタシス(血液環境)を保とうとして強く抵抗します。

危険なサイン」=予兆(血液環境の乱れ)を察知するとは、この「生き残りシステム」が活性化していること、人が生き残ろうと抵抗してもがいていることを見抜くことなのです。

「生き残りシステム」の活性化とは、神経系(主に自律神経系)、内分泌系、免疫系が活性化することです。 この3つの系の活性化が「危険なサイン」として現れます。

「生き残りシステム」説明図②

ところで、なぜわざわざ「生き残りシステム」なるものに注目するのでしょうか?

急変を察知するなどと言えば、つい教科書的な「危険なサイン」に目が向きがちです。

例えば、ショックのサインには「冷汗」、「顔面蒼白」、「四肢の冷感」などがあります。

でも教科書的な「言葉のサイン」は何となくリアルさがないですね。

「言葉のサイン」イメージ図

患者さんは「言葉のサイン」の寄せ集めではありません。

「危険なサイン」を察知するときに重要なのは、「言葉のサイン」ではなく、苦しみもがいている患者さんのリアルな「全体」なのです。その「全体」をイメージするために、一つのまとまりとなった「生き残りシステム」の見方が必要なのです。

次回は「生き残りシステム」と「危険なサイン」の関係について、具体的に解説します。

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