【連載】学会・セミナーレポート

【チーム医療を知ろう】第8回日本在宅薬学会学術大会が開催されました!

Np gakkai report

治療の場が病院から在宅へとシフトしていく中、在宅医療と多職種連携の取り組みについて知識を深めることが必要です。ナースプレス編集部では、平成27年7月19日(日)・20日(月)に幕張メッセ国際会議場にて開催された、第8回日本在宅薬学会学術大会に行ってみました!


日本在宅薬学会とは?

治療の場が病院から在宅へとシフトしていく中、地域医療を支える施設として訪問看護ステーションや歯科医院などが注目を浴びています。 保険薬局もまた地域の健康情報拠点としての役割が厚労省により示され、薬局薬剤師はますます活躍が求められています。

そこで、薬剤師の職能拡大・薬局の機能拡張を通じて、多職種連携・情報共有を基盤とした超高齢社会における新しい地域医療システムを構築して広く社会に貢献することを目的に、狭間研至先生(ファルメディコ株式会社ハザマ薬局代表取締役/外科医)が2009年に立ち上げられたのが「日本在宅薬学会」です。

狭間 研至先生 狭間 研至先生

薬剤師に加え、医師、歯科医師、看護師など他の医療専門職とも密接にコラボレーションして、高齢者医療、がん薬物治療など多職種協働・地域医療連携の実現を目指す学会です。

第8回目の開催となる日本在宅薬学会学術大会は、薬剤師を中心に1,184人の方が参加しました。

本学術集会では、中野博美先生(医療法人啓信会 京都きづ川病院 理事長)や鈴木康裕先生(厚生労働省 大臣官房 技術総括審議官)による基調講演をはじめ、大会会長である平井みどり先生(神戸大学医学部附属病院薬剤部長)や、理事長である狭間 研至先生、実行委員である井手口直子先生(帝京平成大学薬学部教授)のご講演とともに、在宅医療に関わる第一線の先生方によるシンポジウムやワークショップ、教育セミナーが開かれました。

学術大会PICK UP!

大会会長講演『実践!薬剤師3.0~理論を語る時代から現場で活躍する時代へ~』

平井みどり先生は、近年、残薬問題をはじめ薬剤師が注目されており、その期待にどのように応えていくかについて講演されました。

平井 みどり先生 平井 みどり先生

平井先生は、“薬剤師のメリットを国民が感じておらず、薬剤師自身が仕事のやりがいを感じていないのでは”と狭間先生の発言を引用しながら、薬剤師業務の意義について問題提起をされました。

薬剤師業務の歴史から、フリードリヒ2世の話を引用し、医薬分業がいつの間にか“門前薬局”という話に矮小化されてしまったことを指摘。 医師は患者さんを診る一方、薬剤師は健康な人もみることが重要な業務ではないかと話されました。

そのような業務での一例として、患者さんへのフィジカルアセスメントや、医師との共同で策定したプロトコルに基づく薬物治療管理(PBPM;Protocol-Based Pharmacotherapy Management)、災害時などのロジスティクス(医薬品物流)担当(ロジ担)などをあげました。

このような新しい取り組みに対し、同じ薬剤師から“そんなことをやってどうするのか?”という意見を頂くそうです。

平井先生は、結果が見えなくても実際に行動に移すことで、個人の成長や薬剤師としての結果が生まれるとし、日本老年医学会が作成したガイドラインで薬剤師の役割が規定され、薬剤師の介入効果についてエビデンスが掲載されていることを紹介。 「みんなの力を合わせてなんとか薬剤師の意識を変えて行きたい。ここまで求められて、いつ行動するのか」と薬剤師にエールを送りました。

『在宅中心静脈栄養法(HPN)の適切な管理』

本年の日本静脈経腸栄養学会大会長でもある井上善文先生(大阪大学国際医工情報センター/栄養ディバイス未来医工学共同研究部門特任教授)による静脈栄養のセミナー(座長:林 宏行先生(日本大学薬学部薬物治療学研究室教授))が開催されました。

井上先生は、在宅医療において栄養管理は非常に重要であり、薬剤師の果たす役割は大きいとし、在宅中心静脈栄養法(HPN;Home Parenteral Nutrition)とCVポートの使い方について、その歴史を紐解きながら解説されました。

井上 善文先生 井上 善文先生

CV(central venous)ポートとは、中心静脈カテーテルの一種で、血管にカテーテルを刺し、カテーテルを通じて患者さんに高カロリー輸液などを投与するために、穿刺可能な部位(セプタム)を備えたポートと呼ばれるデバイスを皮膚の下に埋め込む医療器具のことです。

従来のように末梢静脈留置針(腕の血管から抗がん剤の投与を行う)の場合、血管が細いなどの理由から何度も針を刺し直して患者に苦痛を与えることがありますが、CVポートを導入することにより、確実に1回で針(ヒューバー針)を刺すことができ、薬剤投与中も患者さんが動けるなどのメリットがあります。また、適切に使用することで感染リスクも低くできるとされています。

井上先生は、“CVポートでは感染がなくなる”という過信や、“がん患者に対して栄養療法を控えるべき”との流れに対して、CVポートは6年ほどで劣化するため交換が必要なこと、患者がみえる位置にポートを設置しないと針刺し失敗による合併症が発生すること、皮下ポケットが大きいとポートが皮下内で反転することなどをあげるとともに、HPNにより栄養状態が改善することで不妊治療も可能となった事例を紹介し、CVポートの適正使用について解説されました。

次回の開催

第9回日本在宅薬学会学術大会

  1. 大会会長:狭間研至先生(日本在宅薬学会会長)
  2. 実行委員長:岸 雄一先生(埼玉上尾中央グループ)

開催日

平成28(2016)年7月17・18日(日・祝)

会場

グランキューブ大阪 大阪府立国際会議場 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島5丁目3-51

問い合わせ先

『日本在宅薬学会』