【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第3回 急変時に生き残るために抵抗する身体「生き残りシステム」を理解する!②

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


「生き残りシステム」が活性化すると・・・

生命を脅かす事態が発生すれば、「生き残りシステム」は自動的に、本人の意思に関係なく活性化します。「生き残りシステム」は生命の危機を乗り切るための、全身性の抵抗手段を持っています。

“お決まりの抵抗手段”

「生き残りシステム」の抵抗手段は4つしかありません。この “お決まりの抵抗手段”で戦います。具体的には以下のとおりです。

  1. 呼吸促進
  2. 自律神経反応
  3. 炎症反応
  4. 危険をやり過ごす「冬眠」行動

ここで、「冬眠」行動とは聞きなれないものだと思います。これは、次回以降に詳しく説明します。これは「危険なサイン」の最も本質的なものです。

この4つの抵抗手段は別々に発動するのではなく、通常は入り混じって発動します(各々の発動の程度は、「生き残りシステム」の活性化の状態によって異なりますが)。

「生き残りシステム」が戦っている状態(活性化)が、身体の「内」から「外」に、自覚症状や身体徴候(主に自律神経反応)、バイタルサインなどとして現れます。強い自覚症状があれば、患者さんのほうから訴えてくれます。

しかし、生命の危機にあっても自覚症状があやふやなことがあります(特に高齢者)。

生き残りシステムイメージ図

ですから、みなさんが積極的に危険なサインを探し出さなければならないのです。

ホメオスタシスの「窓」とは?

「生き残りシステム」が活性化するときは、意識レベルや精神活動(わかりやすく言えば「日常的なコミュニケーション」の能力)に変化が生じます。

この変化は、生命の危機(血液環境の乱れ)の大きさ、そして「生き残りシステム」の活性化の程度とおおむね比例します。

つまり、意識状態や精神活動は“抵抗手段”ではありませんが、身体の「内」に起こる血液環境の乱れを、身体の「外」に映し出す「窓」と言えるでしょう。

ホメオスタシスの「窓」説明図

「教科書的」ではない「リアル」な患者さん

「生き残りシステム」の“お決まりの抵抗手段”と、血液環境を映し出す「窓」が、「危険なサイン」の正体です。

「生き残りシステム」を中心にすえることによって、教科書的な「言葉のサイン(意識障害、冷汗、心拍数、呼吸数など)」ではなく、苦しみもがいている患者さんの「全体」がリアルにイメージできるのではないでしょうか。

言葉のサインイメージ図

次回も引き続き、「生き残りシステム」と「危険なサイン」の関係について、具体的に解説します。

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