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【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第1回 せん妄って何?①診断基準を知ろう

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

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大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

この患者さん、“せん妄”ですか?

看護師さん:「私、せん妄にすごく苦手意識があるんです。せん妄の患者さんとどのように関わったらいいのか全然わからないし・・・。 詳しく教えてもらえないでしょうか?」

井上先生:「せん妄を苦手に感じている医療スタッフは多いようですね。入院患者さんは高齢化しているし、認知症の方が入院する機会も増えています。

高齢者や認知症の方はせん妄になりやすいので、せん妄の患者さんは今後もますます増えていくでしょう。」

看護師さん:「そうなんですね。じゃあ、しっかり勉強しなくっちゃ!」

井上先生:「では、初回はせん妄の主な症状について解説しましょう。

まず、せん妄の症状を思いつくままに挙げてみて下さい。」

看護師さん:「えーっと・・・。夜中に変なことを言って急にどこかへ行こうとしたり、止めようとしたら怒り出したり。あと、あるはずのないものが見えると言われる人もいました。でも、患者さんによって症状が違うような気もします。」

井上先生:「そうですね。せん妄では、夜間に不穏になったり、幻視が見えたり、いろいろな症状がみられるのが特徴です。 症状が多彩であるぶん、せん妄かどうかの診断が人によって違ってはいけませんよね。そのためにも、せん妄の診断基準を知っておく必要があります。 わが国では、アメリカの精神医学会が定めている診断基準(表1)を用いることが多いようです。」

表1 せん妄の診断基準

A. 注意の障害(注意の集中や維持の低下)と、意識の障害(環境認識の低下)がある
B. 短期間で出現し(通常数時間から数日),日内変動がある
C. 認知の障害(記憶障害、見当識障害、知覚障害など)がある
D. AとCの障害は認知症ではうまく説明されない
E. 身体疾患や物資中毒・離脱などの直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある

(米国精神医学会. DSM-5, 2013より一部改変)

看護師さん:「なるほど。患者さんの症状がA~Eの5項目すべてを満たせばせん妄と診断するのですね。」

井上先生:「その通りです!では、順に解説しましょう。」

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