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【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第2回 せん妄って何?②せん妄の主な症状ー注意力障害ー

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

せん妄の診断基準は現場でどう使うの?

看護師さん:「前回は、せん妄の診断基準について勉強しました。でも、それを実際の臨床現場でどう役立てたらいいのかよくわかりません。 もう少し具体的に教えてもらえますか?」


井上先生:「診断基準を理解したら、次はそれを活用できるようにしなければいけませんね。

では、診断基準に沿って、実際の評価のポイントを解説しましょう。 まず診断基準の最初のA項目は何でしたか?」

看護師さん:「『注意の障害と意識の障害がある』だったと思います」

井上先生:「その通りです。  せん妄の患者さんを評価する際、実際にはまず見当識を確認することが多いと思います。ですので、見当識障害が最も頻度の高い症状と思われがちかも知れません」

看護師さん:「そう思っていましたが、違うのですか?」

井上先生:「せん妄における症状の頻度は次の表1の通りで、この報告によると注意力障害が最も頻度が高いとされています」


表1 せん妄における症状の頻度

診断の核となる症状 頻度
注意力障害 97-100%
思考障害 54-79%
その他の核となる症状 頻度
見当識障害 78-96%
記憶障害 88-96%
睡眠覚醒リズム障害 92-97%
運動行動の変化 24-94%
言語障害 57-67%
その他の核となる症状 頻度
知覚障害 50-60%
妄想 21-31%
情動変化 43-86%

(Guptaら 2008)

注意力障害をどう評価する?

看護師さん:「全然知りませんでした。となると、せん妄かどうかを判断する時には、注意力障害があるかどうかを見極めることが大事になりますね。 では、具体的に注意力障害の評価のポイントを教えて下さい」

井上先生:「例えば、患者さんとの会話の中で視線がたびたび逸れて落ち着きがなかったり、返事が的を得なかったりすれば、注意力障害を疑います」

看護師さん:「なるほど。会話の中でも評価ができるということですね。他に、注意力障害を評価するポイントがあれば教えて下さい」

井上先生:「わかりました。ところで、MMSE(Mini-Mental State Examination)というものを知っていますか?」

看護師さん:「たしか、認知症の検査として使われるものですよね」

井上先生:「そうです。その中に「100から7ずつ引いていく」という課題があります。 実際のやり方ですが、「100から順番に7を引いて下さい」と言って、その後は必要な場合のみ「続けて下さい」と促し、順番に5回まで計算をしてもらいます。

前の答えが何だったのか、次に何を引くのか、という複数のことをしっかり覚え、思い出しながら計算するという力が必要になるので、注意力の評価に有用です」

次のページは「注意力障害を評価するための工夫」です。

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