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【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第5回 せん妄を見逃さないためには?①せん妄の評価ツール

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

せん妄には種類がある

看護師さん:「せん妄の診断基準はよくわかったのですが、実際にはどのようにスクリーニングをすればよいのでしょうか?」

井上先生:「せん妄かどうかをいかに評価するか、ということですね。現場ではとても大事なことです。

ところで、『看護師の経験に基づくせん妄の評価は見逃しにつながる』ということは従来から報告されていますが、知っていましたか?」

看護師さん:「全然知りませんでした。てっきり、ベテランの看護師さんにはせん妄かどうかの見分けがすぐにつくものだと思っていました」

井上先生:「研究報告によると、必ずしもそうではないようですね。ですので、もちろん経験は重要ですが、それだけに頼ることなく、適切なツールを使ってせん妄をスクリーニングすることが大切です」

看護師さん:「よくわかりました。ただ、患者さんに毎回ツールを使ったスクリーニングをするのって、あまり現実的でないような気もするのですが。。。」

井上先生:「もちろん、現場でしなければならないことは他にも山ほどあるでしょうから、それらとの兼ね合いになりますよね。

もし実際にツールを使うとすれば、なるべく短時間で施行できるシンプルなものがいいと思います」

看護師さん:「それだったらやりやすいかも知れません。 では、どのようなツールがあるのか、具体的に教えてもらえますか?」

井上先生:「まず、一口にせん妄の評価ツールと言っても、スクリーニングに適したもの、診断に適したもの、重症度評価に適したものがあります」

看護師さん:「それぞれ、目的にあったツールを使うということですね」

井上先生:「その通りです。   

ここでは、現場で使いやすいせん妄のスクリーニングツールとして、DSTを紹介しましょう。

DSTとは、Delirium Screening Toolの頭文字をとったもので、観察形式の評価ツールになります。具体的には、A「意識・覚醒・環境認識のレベル(7項目)」、B「認知の変化(2項目)」、C「症状の変動(2項目)」を評価します。Aから始めて、1つでも該当すればB、Cと進み、最終的にCで該当すれば「せん妄の可能性あり」と評価します」

看護師さん:「とても簡便ですね。所要時間はどのくらいですか?」

井上先生:「慣れてくれば、評価に要する時間は5分程度すむと思います」

看護師さん:「5分なら何とかなりそうです。評価のポイントを教えて下さい」

井上先生:「せん妄は日内変動があることはすでに説明しましたね。DSTではその時点での評価ではなく、少なくとも24時間を振り返って評価することが重要です」

看護師さん:「なるほど。せん妄の特徴に合わせた評価が必要ということですね」

井上先生:「その通りです」

DST

井上先生:「今回はここまでです。次回はせん妄としばしば混同されやすい、認知症との見分け方について具体的に説明しましょう」

看護師さん:「とても興味深いテーマです。よろしくお願いします! 」

次回は「せん妄と認知症との見分け方」について解説します。

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