【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第7回 急変の予兆を知る 意識・精神活動の変化と「お決まりの抵抗手段」③全身状態の「窓」

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


「全体的イメージ」の中核は全身状態の「窓」と「冬眠」行動

生命の危機に対して「生き残りシステム」が活性化し、4つの「お決まりの抵抗手段」が発動します。

「危機」と「抵抗」との「戦い」の情勢は、全身状態の「窓」(意識・精神活動)に映し出されます(勝てそう?負けそう?)。

「危険なサイン」の本質は、「生き残りシステム」が戦っているときの、患者さんの「全体的イメージ」です。非常事態モードの患者さんの「叫び」でしたね(第5回)。

「全体的イメージ」のイラスト

非常事態の「全体イメージ」と関連が強いのは、全身状態の「窓」と「冬眠」行動の2つです。

この2つはみなさんの直感を強く刺激しますが、いまひとつ漠然としているかもしれません。

そこに呼吸促進、自律神経反応、炎症反応が見いだされると、漠然としていたイメージが一気にリアルに迫ってきます。

意識・精神活動は全身状態の「窓」

意識・精神活動は、「生命の危機」対「生き残りシステム」の戦いの情勢に応じて変化します。情勢が厳しくなるにつれて意識レベルが低下してくのです。

必ずしも生命の危機とは言えない意識障害もありますが(薬物の副作用など)、急変を察知するという視点に立てば、意識障害は「危険だ!」とみなすべきです。

意識障害は全身状態と密接な関係があります

「ホメオスタシス=血液環境=全身状態」という関係を思い出してください。

血液環境が「量的」あるいは「質的」乱れはじめると「生き残りシステム」が活性化し、急変を思わせる微妙なサイン(予兆)が現れます。さらに乱れが大きくなると危険なサインとして明確になります(第1回第2回)。

  1. 血液「量」の乱れ:血液喪失(大出血)、血液過剰(うっ血)など
  2. 血液「質」の乱れ:酸素の減少、pHの低下(アシドーシス)、炎症促進物質(サイトカイン)の増加など

脳は血液環境の乱れに敏感なので、人間にはもともと血液脳関門という「脳を守るバリア」があります。ただし、大きな乱れに対しては完全に守りきれません。

血液は脳全体を駆け巡るので、血液環境の乱れは容易に脳に悪影響を及ぼします。特に脳機能に悪影響を与えやすいのが酸素不足とサイトカインの増加です。覚えていますか?

急変のプロセスで見逃してはいけない重要な病態は、敗血症(感染症による血中サイトカインの著明な増加)と代償性ショック(循環障害による全身の潜在的酸素不足)でした。敗血症は急変「二歩前」で、代償性ショックとは急変「一歩前」です。

次回は、この続きとして「意識」について解説します。

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