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【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第6回 せん妄を見逃さないためには?②認知症との見分け方

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

せん妄と認知症では原因が違う

看護師さん:「今回のテーマは『認知症との見分け方』ですね。せん妄と認知症、実際にどこがどう違うのか、今ひとつ自信がありません。。。」

井上先生:「せん妄と認知症は似たような症状がたくさんありますよね。でも、見分けることはとても重要です」

看護師さん:「でも、せん妄と認知症、結局使う薬は一緒ではないのですか?」

井上先生:「確かに、どちらも不穏や幻覚・妄想などを認めることがあって、それに対して抗精神病薬を使われることが多いという共通点があります。

ただし、せん妄の診断基準にもあったように、せん妄は身体疾患や薬剤などが原因で起こるものです。認知症は一般的には脳の器質的変化によるものですよね」

看護師さん:「原因が違うということですね」

井上先生:「その通りです。もし、患者さんがせん妄であるにもかかわらず、医療スタッフが認知症だと誤って認識してしまうと、どうなりますか?」

看護師さん:「せん妄であればその原因検索が必要ですが、それが行われなくなります」

井上先生:「その通りです。認知症とされた場合、行われることは対症療法としての薬物治療と看護ケアになります。

せん妄は身体疾患や薬剤が原因ですので、そこにアプローチすることによってせん妄からの改善が期待できるかも知れないのです」

せん妄と認知症の症状の違い

看護師さん:「となると、せん妄と認知症をしっかり区別することが大切なのですね。

では、具体的な違いについて教えて下さい」

井上先生:「せん妄と認知症の違いについて、次の表にまとめてみます」

表 せん妄と認知症の違い

せん妄と認知症の違いの表

看護師さん:「いくつかあるようですが、ポイントを教えて下さい」

井上先生:「ポイントは2つあります。

まず1つ目は、発症様式です。認知症では『去年の夏ごろから少しずつ物忘れが出てきた』といったように、緩徐な発症が特徴です。

それに対してせん妄は「手術の翌日から急に様子がおかしくなった」とか『昨日の18時頃から目つきが変わって落ち着きがなくなった』といったように、発症に関して日にちだけでなく時間も特定できることがあります

看護師さん:「なるほど。2つ目のポイントは何でしょうか?」

井上先生:「2つ目は、日内変動です。認知症の場合は一日の中で症状が大きく変化するということはあまり起きません」

看護師さん:「その点、せん妄は日中比較的落ち着いているにもかかわらず、夕方から夜間にかけて症状が悪化しますよね。看護師としても夜勤では大変な思いをします」

井上先生:「看護師さんは患者さんと一番近くで接している医療スタッフですから、大変なご苦労があるものと思います。 看護師さんの評価や記録は大変貴重ですし役に立つのは言うまでもありませんが、看護師さんから『認知症と思います』と言われた患者さんの診察にいくと、実はせん妄だったということをしばしば経験することがあります」

看護師さん:「せん妄と認知症を正確に見分けられていない可能性があるわけですね」

井上先生:「現場の看護師さんは、患者さんから受ける印象などから、『もともと認知症がありそうだ』とか『本来の性格の部分が大きいのでは』などと思ってしまうのでしょうね。仕方のない部分もあると思います。

ただ、よく考えてみると、われわれ医療スタッフが患者さんの本来の姿をどこまで知っているでしょうか?」

看護師さん:「外来主治医ならともかく、看護師の場合は患者さんとは入院して初め会うことがほとんどかも知れません」

井上先生:「とすると、医療スタッフは主観的な印象や経験に頼って認知症とせん妄を見分けようとするのではなく、患者さんのことをよく知っているご家族などに聞いてみることが大切かも知れませんね」

看護師さん:「客観的な情報を入れるということですね」

井上先生:「その通りです。ご家族から『家では料理もするし、認知症の妻の介護もしているくらいなんですよ』と言われた患者さんがひどく混乱した様子になっていれば、それは認知症ではなく明らかにせん妄ですよね」

看護師さん:「なるほど。ふだんとの違いで認知症かせん妄かの区別がつくわけですね」

井上先生:「そうですね。ほかに、ご家族から『急に認知症になってしまったのですか?』と言われることもよくありますが、これは急性発症ということを表していますので、やはりせん妄ですね」

看護師さん:「ご家族からの情報が大事ということがよくわかりました」

井上先生:「今回はここまでにしましょう。次回は、認知症と同じく、せん妄としばしば混同されやすい『うつ病』との見分け方をテーマにしましょう」

看護師さん:「知識が深まってきたのを感じます。次もよろしくお願いします!」

次回は「せん妄とうつ病との見分け方」について解説します。

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