【連載】Newsのツボ

【グリーフケア】看護師はどう関わる? 死別で感じる4つの悲嘆とは

解説 宮林幸江

自治医科大学看護学部 教授、日本グリーフケア協会 会長

家族との死別により、睡眠の不調を訴える人が8割以上という調査結果がでました。今回は、グリーフケアにどう看護師がかかわっていくとよいのかを解説します。


日本人が感じる4つの悲嘆

病気で家族を亡くした人には、心身に多様な障害・症状が現れます。

睡眠障害を始め、食欲不振、自律神経失調、持病の悪化、抑うつなど、人によって様々ですが、それらのほとんどは、「悲嘆(グリーフ)」に根ざしたものです。

悲嘆とは、死別者の中で、ゆれ動き、変換する心身の反応のことです。

日本人が感じる悲嘆は、欧米人とのそれとは若干異なり、おおよそ4つに分けれます。

  1. 思慕・・・故人や故人との出来事を、意識的・無意識的に思い出したり、ふと心に浮かんでくる反応。故人に言うともなく独り言をいう、故人と過ごした場所に訪れる、アルバムを繰り返し見入る、仏壇や墓碑に話しかけるなどがその現れです。
  2. 疎外感・・・死別経験を契機に周囲の態度が変わったと感じる感情。好奇の目で見られていると感じる、仲間と打ち解けられず「わかってもらえない」と孤独感を感じることです
  3. うつ的な不調・・・死別に対する反応性の症状で、不安感や無力感などで生じる無関心、故人なしの生活や人生に意味を見出せず、無気力な様相を呈するなど、うつに似た症状。ただしうつと異なるのは、本人が発症の原因を認知しており、本人のアイデンティティに揺るぎがないという点です。
  4. 適応対処の努力・・・現実へ対処するため自己を奮い立たせようとする認知的反応で、行動を伴うもの。「~しなければ」と自身を鼓舞する、故人にならって何かしようとする、故人の分まで頑張ろうとするなどが、これにあたります。

死別者は1~3の「心的反応(喪失感情)」と4の「現実への対処(理性)」の間で揺れ動いています。

その揺れ幅が徐々に狭くなり、無くなるまでには約4年半を要するという調査結果が出ています。

これは、その時間がすぎると悲嘆がまったく無くなるのではなく、悲しみの形が変化し、死別者が悲嘆との付き合い方を身に着けつつあり、生活の再建や新たな生き方に踏み出せるようになってきた時期にあたるということです。

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看護師のかかわり方

看護師の皆さんからよく聞かれるのは、「グリーフケアには関心があるけど、取り組み方がわからない」ということです。

臨床の看護師が行うグリーフケアには、特別なことはいりません。患者さんの遺族が病院を訪れたとき、その話に耳を傾け、声をかけ、寄り添うだけでいいのです。

そして「いつでも受け入れます」という姿勢を示してほしいと思います。もちろん、忙しいときもあるでしょう。
しかし、グリーフケアは緊急度の高いケアではありません。ひと声かけて、業務を一段落させてから対応すればよいのです。
むしろ時間のとれるときに、ゆっくり対応することが望ましいと思います。

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* エンゼルケア時に家族へのグリーフサポートが必要な3つの場面

終末期での家族とのかかわりがグリーフケアにつながることも

また、終末期からの家族とのかかわりが、グリーフケアにつながるケースもあります。

終末期から死別を経て死後まで、境界なく続くといってもよいでしょう。終末期にある家族には、患者さんへと同様の思いを持って接し、思いに触れる時間を増やすことが、死別後の理解につながります。

あまり特別視する必要はありません。この経験が遺族ケアの核になります。

もし遺族がその思いを分かち合うために、あなたのもとを訪れたとしたら、それはあなたがいかによい看護が提供できたかという証なのです。

実際そのようなことが現場で起きているようです。そう多くはないと思われますが、いくつか報告を受けています。
患者さんや家族にとって一番身近な存在である看護師が、グリーフケアの担い手として大きな役割を果たすことは間違いありません。

そのためにも、今以上にグリーフケアについての知識を身に付け、考える機会を持ってもらえたらと思います。

Nurse’s Comments

病気で家族を亡くした人の8割以上が、死別を経験する過程で睡眠の不調を経験しているというニュースと、グリーフケアについてどう思う?

●自宅介護をしていた女性が、母親を亡くした後にうつ病を発症しました。外来なので深くかかわれず、話を聞くぐらいしかできませんでした。もっともっと勉強したいです。(大阪府 匿名希望)

●家族のケアまで行えたら理想的。でも家族を亡くした経験のない自分には、気持ちを想像するしかない分とても難しいケアだと思います。また、そこまで求められるとプレッシャーも感じます。患者さんを誠心誠意ケアすることが家族へのケアに繋がると思います。(群馬県 ガザニア)

●不眠になるのも仕方がないと思う。思い出したり、自分を責めたり……。だからこそ、看護師などを交えて、思い出す会話をするのは大切かな。(愛知県 マーマレード)

●現実問題としては、なかなか家族のケアまでは行き届きにくいのではないでしょうか。看護計画に家族のケアを入れていければと思う反面、家族内のことにかかわるには慎重さが必要になるとも思います。(大分県 ベルガモット)

●グリーフケアは病院で行うという概念を捨てるべき。診療報酬がつかない以上、病院でできることには限界があり、亡くなられた後のことは民間などの専門団体に委ねるのが現実的では。(東京都 yuriko)

●精神科勤務です。家族の死によってうつ病を発症し、何年も立ち直れずに治療を続けている患者さんが実際にいます。このことからもグリーフケアは大切であり、できるだけ早い段階からのかかわりが必要だと思います。(福島県 Minja)

●高齢者施設に勤務していますが、最近親との関係が近すぎて、死ぬことはもちろん、年を取ることさえ受け入れられない人が増えています。これでは親である利用者さんが亡くなったときどうなるのか……とても不安になります。(福井県 アルママ)

●グリーフケアは患者さんが亡くなる前から始まると思います。どんなに一生懸命患者さんにかかわったとしても、家族には死後の喪失感はあるはずで、あのときこうすればよかったという思いはいつまでも消えないと思います。家族がいつでも思いを表出できる環境や場をつくり、社会的、心理的に遺族を孤立させないようにしなければいけないと思います。(大阪府 しょうた)

●死別後の患者さん家族が精神的ダメージを受けるのは理解していたが、精神疾患になるまでとは知らなかった。グリーフケアの大切さを改めて感じた。(岡山県 クロ)

●なかなか学ぶことが難しいグリーフケアなどについては、知識・技術ともに曖昧になってしまうことが多いと思う。グリーフケアも家族の人生に十分影響を与えるものだと思うので、看護師としてきちんとかかわれるよう、死生観や死について学ぶ機会がもっと増えればよいと思う。(埼玉県 蜜)

●患者さん家族の反応はごく自然なものだと思う。死亡前だけでなく、病気が見つかった、余命がわかったなど、何らかの変化が現れたときから、家族単位で看ていく必要がある。ただ、忙しい業務の中ですべて看られるかは難しいところもあるので、専門の看護師も必要ではないだろうか。(愛知県 ぱんちゃん)

●ニュースを読んで、死は家族にとって深刻な精神的ダメージへつながることを改めて実感した。家族看護の一つとして、患者さんの死別前から睡眠障害などが生じていないか確認する、必要なら介入していくなどの必要があると思った。(大阪府 あいか)

●死別による喪失感を自力で乗り越えるのは大変なことだと思う。支援体制を整えたら救われる人がたくさんいるだろう。(栃木県 匿名希望)

●自分も父を亡くしたときに、半年以上、突然涙が出たり、何をしても気分がのらなかったりして、日常生活が大変だった。そのためケアは必要だと思った。(東京都 みるか)

●家族を亡くした悲しさは家族にしかわからない。私たちは多くの人の死と接する機会があるが、今までの看護は患者さんのみに焦点をあててきたため、家族についてはあまりかかわりが少なかった。今回の記事を読んでグリーフケアについて考えていきたいと思った。(宮城県 あっこ)

●お別れのときが来ることを家族が受け入れられるよう、亡くなる前から少しずつ医療者が働きかけていくことは精神的ダメージを軽減させる上で大切。そして、家族は本人と生前どれだけ満足できるかかわりができたかで、死の受け入れ度合いが違ってくると思います。(神奈川県 匿名希望)

(『ナース専科マガジン』2013年8月号より転載)

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