【連載】STOP!あぶないケア

【ヒヤリ・ハット】Case1 薬剤の投与経路を間違ってしまった!

執筆 古田 康之(ふるた やすゆき)

安房地域医療センター 医療安全管理室/セーフティマネージャー(薬剤師)

日々の看護場面でドキッとした経験はありませんか?大きな事故につながらなくても、そんな経験は減らしたいもの。2015年10月の医療事故調査制度スタートとともに、いま医療安全の意識が高まっています。この機会に、看護師が遭遇しやすいヒヤリ・ハット事例から、日常に潜む「あぶないケア」を見直して、その根拠と対策から安全な看護を実現しましょう。


Case1

看護師Cが与薬準備をしようとしたら、担当患者に「ケイツー®シロップ」が配薬されていました。注射薬である「ケイツー®N静注」のアンプルはいつも取り扱っていましたが、内服薬である「ケイツー®シロップ」を扱うのは初めてでした。

イメージイラスト(https://d9dsub0ijw2ii.cloudfront.net/uploads/image/image/7784/NP_22172_fig1.jpg)

このナースはこの場面でどのように考えたのでしょうか?

ナースはこう考えた

ケイツー®を投与ね。あれ、いつものアンプルじゃないわね……形状が変わったのかしら。そうか、ジェネリックね!よく薬が変わるわね。わかんなくなっちゃう。

看護師Cはアルミパックを開封し、開封口から注射器に吸い取って調製した薬剤をトレーの中に置きました。トレーの中には針が付いたままの状態の注射器と内服用の薬杯が一緒に置かれていました。与薬を担当した看護師Dは、処方箋の指示を確認しないまま、「ケイツー®シロップ」を静脈内に誤投与してしまいました。

このままいくと・・・

ケイツー®シロップを静脈内に誤投与してしまったときの人体への影響は不明です。あくまで筆者の私見になりますが、薬剤の浸透圧が10と高いことから静脈炎や血管痛などの有害事象が予測されます。ですが実際は何が起きるかわかりません。

どうして起こったの?

このときの看護師Cの心理としては、先の“こじつけ解釈”もありますが、別に「ケイツー®=注射薬」という思い込みもあります。

注射薬剤にはケイツー®シロップのような形状の製品はなく、それを開封して注射器に直接吸い取ることはあり得ません。ではなぜ看護師Cはそのような行動をとったのでしょうか。

人は知識と過去の多くの経験から判断を下して行動しますが、たいていその判断は正しいものです。

しかしそのことが、「またいつものね」と認識に誤りを生じさせ、状況をよく調べずに既存のルールを適用しエラーを発生させることがあります。

看護師Cの場合には「ケイツー®」とくれば「注射薬」と条件反射的に既存ルールを適用させて判断しており、「内服薬を注射器に吸い取った」という不自然さを認識できなかったのです。剤形が変わっていても「注射薬なんだから何とか注射しよう!」と注射器に針を付けて直接吸い取ってしまったと思われます。

これは新人看護師ではなくベテラン看護師が陥りやすいエラーです。

ベテラン看護師は自分がいつも正しいと過信する傾向にあるので油断は禁物です。

予防対策はこうする!

1.「薬」「用量」「用法」を確認しよう

この事例でも、薬剤を準備したとき、投与前に6Rを確認することが必要でした。

特にRight Drug: 正しい【薬】、Right Dose:正しい【用量】、Right Route:正しい【用法(経路)】を確認しておくべきでした(図1)。

図1 6Rで与薬事故防止

図1 6Rで与薬事故防止

2.初めての薬剤は添付文書またはほかの看護師・薬剤師に確認しよう

初めて取り扱うものに対してはより慎重になるべきです。

みなさんは電化製品を購入して操作するときに取扱説明書を先に読むタイプですか?

それとも読まないで実際に操作するタイプですか?

この事例は後者のタイプで不具合を起こしています。

薬剤の場合は、取扱説明書が添付文書にあたり、使用方法などが記載されています。

しかし、添付文書の確認というのは現実的ではありませんね。

そこで「これ、ジェネリック? アンプルからこんなのに変わったの?扱いづらいわね」と、同僚の看護師もしくは薬剤師に確認をしてもよかったのではないでしょうか。

3.薬剤師から現場目線の情報をもらおう

ジェネリックなどわからない新たな採用薬については、薬剤師に情報提供を依頼しましょう。

ただし、薬剤師の目線は効能・効果に向いているため、その説明に終始する可能性があります。現場目線での情報提供をしてもらうためには、薬剤師に視点を変えてもらえるよう促しましょう。

効能・効果に加え、前と比べて新規採用薬に使い勝手の悪さはないのか、形状類似・名称類似などによる危険がないのかといった情報があるとよいと思います。

さらに、形状類似・名称類似などによるヒヤリ・ハット事例があれば、現場から薬剤師、医療安全管理者にフィードバックしましょう。このフィードバックが薬剤の取り扱いに関する安全性を高めることになります。

もし事故を起こしてしまったら・・・

  1. 主治医に速やかに報告して、診察を依頼しましょう。
  2. 意識レベルやバイタルに変化が生じたときは、そのつど主治医に報告しましょう。
  3. 薬剤師に報告し、静脈投与したときに現れる症状を確認しましょう。
  4. 何かあぶない症状が発生したときには、すぐに対応できる体制を備えておきましょう。

新たなジェネリック医薬品がわからないときは

近年、ジェネリック医薬品の採用が増えて「採用薬がわからない」「一般名と商品名が一致しない」「覚えられない」という看護師たちの悲鳴をよく聞きます。この対応としては、薬剤師から今まで以上に新規採用薬の情報を常に提供してもらい、知識を得ることしかありません。残念ながら。

ですから、病棟に配置されている薬の専門家である薬剤師を頼りましょう。また、病院として医薬品検索が容易にできるコンテンツを導入してもらいましょう。

文献

1)日本医療機能評価機構:医療安全情報No.101薬剤の投与経路間違い.(2015年6月9日閲覧)(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_101.pdf.)

(『ナース専科マガジン』2015年11月号から改変利用)

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