【連載】STOP!あぶないケア

【ヒヤリ・ハット】Case5 閉腹前のガーゼカウントが合わなかった!

執筆 亀森 康子(かめもり やすこ)

自治医科大学附属さいたま医療センター医療安全管理室 室長補佐(看護師)

日々の看護場面でドキッとした経験はありませんか?大きな事故につながらなくても、そんな経験は減らしたいもの。2015年10月の医療事故調査制度スタートとともに、いま医療安全の意識が高まっています。この機会に、看護師が遭遇しやすいヒヤリ・ハット事例から、日常に潜む「あぶないケア」を見直して、その根拠と対策から安全な看護を実現しましょう。


Case5

卵巣がんの患者の手術が終わり、閉腹するときに、手術看護師Tがガーゼカウントを行うと、枚数が合いませんでした。

ガーゼカウントをしているイラスト

このナースはこの場面でどのように考えたのでしょうか?

ナースはこう考えた

「大変! 患者さんの腹腔内にガーゼが残ってしまう!」

執刀医に腹腔内のガーゼの検索を依頼したが、術野にはないと言われてしまいました。すると、麻酔科医師がレントゲン撮影を提案。開腹のままレントゲンを撮ったところ、骨盤内にガーゼ遺残を認め、無事に取り出して、事なきを得ました。

このままいくと・・・

ガーゼの枚数が術前術後で一致しない場合、患者の腹腔内にガーゼが残ったままとなり、ガーゼ遺残という結果になってしまいます(表1)。そうすると、再手術をして取り出すことになり、患者は、不要な手術を受けることになってしまいます。

どうして起こったの?

執刀した婦人科医師が、ガーゼカウントに協力的でありませんでした。ガーゼカウントが合わないという報告を受けたら、腹腔内をチェックすることは必須です。ガーゼカウントの責任を、看護師に押しつけるのでなく、主治医を含めたチームで手術を行っているという意識をもつことが重要です(表2)。

表1 遺残の原因との可能性の高い手術

遺残の原因

①手術操作で使用し、取り除くべきであったものを取り忘れた

②手術野と異なる場所で使用し、落下・分解などの理由で遺残した

遺残の可能性の高い手術

① 時間手術

② 同時期に2カ所以上の手術創が発生する手術

③ 体位交換のある手術

④ 複数の執刀医がいる手術

⑤ 緊急手術

⑥ 器械出しや外回りが何度も交代する手術

⑦ 術中に急変事態が起こった手術

⑧ 出血量の多い手術

(日本手術看護学会:手術看護手順、体内異物遺残防止,2008,p1.より許諾を得て転載)

表2 ガーゼが体内に遺残した事例でルールを遵守しなかった内容

ガーゼが体内に遺残した事例でルールを遵守しなかった内容
(日本医療機能評価機構:医療事故収集等事業第23回報告書,2010,p127より引用)

予防対策はこうする!

1.チーム全員でガーゼカウントに協力しよう

医師をはじめ、器械出し看護師もチームとして全員がガーゼカウントに協力するようにします。そのためにも、止血などでガーゼやタオルを腹腔内や胸腔内に入れる場合、術者だけでなく、全員がどこに挿入したかきちんと確認し、共有することが大切です(表3,4)。

2.ひも付きのガーゼ・タオルを使用しよう

止血などに使用するガーゼやタオルは、ひも付きのものを使用し、ひもを外に出してペアンなどで把持してわかるようにしておくと、挿入の有無が把握しやすくなります。なお、原則として、汚染されたガーゼはキックバケツの中に入れるようにします。

3.外回り看護師は、ガーゼやタオルを挿入する際に記録しよう

ガーゼやタオルを腹腔内等に挿入した場合は、そのつど外回り看護師に伝えるようにします。外回り看護師は、出血量カウント用紙等に、ガーゼやタオルを入れた時間、何枚をどこに挿入しているかを書いておくようにします。

表3 ガーゼのカウント

看護手順

留意点(コツ・ポイント)

術野に使用するガーゼは、すべてX線で検知できるものを使用する。

① X線不透過糸がより多いほうが、X線撮影での検知が容易である。

使用するガーゼは種類ごとに1枚ずつ離して数える。

② 術式に応じて使用するガーゼの種類・準備枚数(最小単位)を決めておく。

器械出し看護師は、外回りの看護師に術野で使用するガーゼの種類と枚数を報告する。

③ 器械出しと外回りともに、数えたガーゼの管理方法を決めておく。④ (ガーゼ回収用、ゴミ用のバケツと区別するなど)

摘出された組織標本に、ガーゼがついていないか確認する。

⑤ 摘出物と共に室外に持ち出される可能性がある。

(日本手術看護学会:手術看護手順、体内異物遺残防止,2008,p4.より許諾を得て転載)

表4 一般的なカウント手順

看護手順

留意点(コツ・ポイント)

カウントは1人で行わず同時に2人以上で行う。

① ダブルカウントを推奨する。

カウントはタイムアウトで、チームメンバー全員が確認する。

② カウント間違い防止のため、さまざまは器具の利用も有効である。

カウントを行ったことを記録に残す。

③記録内容は、カウントにかかわった者(執刀医、器械出し看護師、外回り看護師)、カウントした物品の名称および数を、カウントのプロセスがわかるように表す。

最終カウントの結果は、執刀医、器械出し看護師、外回り看護師の三者で合致したことを記録し、責任の所在を明らかにする。

④ カウントが不一致で合った場合のルールについて、医師と看護師の間で共通の理解をしておく。

カウントの時期は、手術開始時、体腔閉鎖前(胸膜、腹膜閉鎖前)、筋層閉鎖前、皮膚縫合前、手術終了後とする。

⑤ 手術に使用するすべての物品は、カウントが合致し最終確認が修了するまで、廃棄しない。

可能な限り手術室内で術後のX線撮影を行い、体内異物遺残がないことの確認を行う。

⑥ 手術で使用する材料は、X線不透過性でX線撮影により検知できる材質のものを使用することが望ましい。

(日本手術看護学会:手術看護手順、体内異物遺残防止,2008,p2.より許諾を得て転載)

もし事故を起こしてしまったら・・・

  1. もし、執刀医等の協力が得られない場合は、麻酔科医師からカウントに協力するように話してもらう依頼をしましょう。
  2. 外回り看護師は、手術室師長や主任看護師に報告しカウントの応援を依頼しよう。
  3. 肉眼で見つからない場合は、閉創行為に入る前に、レントゲン撮影で体内に遺残がないことを確認しましょう。
  4. カウントに協力が得られない状況を医療安全管理室へ報告しましょう。

(『ナース専科マガジン』2015年11月号から改変利用)

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