【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第10回 急変の予兆を知る 意識・精神活動の変化と「お決まりの抵抗手段」⑥「炎症反応」

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


炎症反応による抵抗

前回は「全体的イメージ」の中核をなす「冬眠」行動について解説しました。血中の酸素不足やサイトカインの増加は患者さんを「冬眠」モードにします。
特にサイトカイン(炎症反応)と「冬眠」行動は深い関係があります。

「炎症」がないと生きていけません

「炎症」は「熱が出る」とか「痛い」など、あまり良いイメージはないかもしれません。

しかし、炎症反応は「生き残り」のためになくてはならない抵抗力です。体内に侵入した病原微生物を排除し、ダメージを受けた組織を修復するのが炎症反応です。

「炎症」は感染症だけではありません

「病原微生物の侵入」とは感染症です。感染症は軽症から重症まで日常臨床で遭遇することが多いので、ついつい「炎症=感染症」と考えがちです。しかし、「無菌性炎症」というものもあります。

これは「組織の修復」です。例えば、急性心筋梗塞は感染症ではありませんが、虚血によって心筋壊死という大きなダメージを残します。組織(細胞)が破壊されると、そこから炎症反応を引き起こす物質が漏れ出します。

この物質を「生き残りシステム」が「感知」してサイトカインを増やし、組織修復のために炎症反応を起こして「抵抗(ダメージを修復)」するのです(第2回で解説)。

感染性であれ非感染性であれ、組織の大きなダメージに対して、「生き残りシステム」は炎症反応を発動します。

ところで、急変のプロセスのきっかけは、生体に「有害刺激(出血、感染症、血管の閉塞など)」が発生することでした(第1回で解説)。

いずれも組織のダメージを伴いますね(血管の破綻、感染性組織損傷、虚血壊死)。一部の病気を除けば、生命を脅かす重症疾患のほとんどは、炎症反応と関連があるのです。

次回は「炎症反応と冬眠行動」について説明します。

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