【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第11回 急変の予兆を知る 意識・精神活動の変化と「お決まりの抵抗手段」⑦「炎症反応と冬眠行動」

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


炎症反応と「冬眠」行動

「冬眠」行動は「淀んだ雰囲気」と「重苦しいムード」

有害刺激と炎症反応の深い関連を考えれば、「生命の危機」→「生き残りシステム」の活性化→炎症反応で抵抗」という一連の流れは、全身状態悪化のメインルートであることがわかるでしょう。血中に増加したサイトカインが炎症反応と「冬眠」行動を誘発します。

ところで、炎症反応は身体の「内」で活発に発動しますが、身体の「外」には発熱以外ははっきりした変化は起きません(炎症局所に関連する自覚症状や発赤・腫脹はあるかもしれませんが)。しかし、「はっきりした変化」ではありませんが、みなさんの直感に訴えかけてくるものがあります。それが、「冬眠」行動による「全体的イメージ」です。

「冬眠」行動によって「身体の動き」が抑制され、「心の動き(=頭の回転)」が停滞するため、患者には「淀んだ雰囲気」や「重苦しいムード」が漂います。おおざっぱに表現すれば「元気がない」「活気がない」「ぐったりしている」です。

「冬眠」行動による「雰囲気」や「ムード」の変化は、全身状態が悪化しつつあるときに、自覚症状や身体徴候よりも先に現れます。例えば、高齢者の敗血症や心筋梗塞は、しばしば「急に元気がなくなった」とか、「急に食事をしなくなった」という「家族の心配(直感)」をきっかけにして発見されます。

「冬眠」行動による「雰囲気」や「ムード」イメージ図

続いては「重症感の正体は?」について説明いたします。

「重症感」の正体は?

みなさんは日常的に「重症感」という言葉を使いませんか(前回参照)?この感覚は言葉で説明するのは難しいのですが、みなさんにはおなじみでしょう。その正体は、多くの場合、炎症反応に伴う「冬眠」行動です。

尿管結石と急性心筋梗塞を比べてみましょう。尿管結石の患者さんは背部の激痛と嘔気を訴え、痛みに顔をしかめて、冷汗をかいて、ベッド上でじっとしていられずに動きまわります。しかし、この状態を目にしても、こちらの身に迫るような重症感をいまひとつ感じないのではありませんか?

一方で、急性心筋梗塞の患者さんは胸痛と嘔気を訴え、冷汗をかきながら、ベッド上でじっとうずくまっています。その様子を目にすると重症感が湧き上がるでしょう。急性心筋梗塞による心筋壊死は、「生き残りシステム」の炎症反応と「冬眠」行動を強力に発動させます。

その結果、患者さんの「全体的イメージ」が「重苦しいムード」として察知されるのです。この危険な「全体的イメージ」が背景にあるからこそ、冷汗や顔面蒼白などの自律神経反応が「迫力」を帯びてきます。

尿管結石の患者さんが「活発」に動き回る様子は、「冬眠」行動とは程遠く、「重症だ」と感じないのです。「重症感」は「冬眠」行動を直感的に捉えた重要な「危険なサイン」です。

次回は「自律神経反応」について説明します。

ページトップへ