【連載】看護に役立つ生理学

第26回 脂質の代謝はどうなってる?

執筆 梵天ゆとり(ぼんてん・ゆとり)

医師、日本医学放射線学会会員

糖質と並び、エネルギー源として不可欠な栄養素である脂質の代謝についても見てみましょう。ここでは脂質の主たる構成要素である「脂肪酸」について考えますが、すでに述べたブドウ糖と常に比較しながら理解すれば、その特徴がよく見えるようになります。

ブドウ糖と脂肪酸

ブドウ糖と脂肪酸とでは、その分子構造に大きな違いがあり、これがエネルギー源としての性質に深くかかわっています。

図のように、Cと同数のOを有するブドウ糖に対して、脂肪酸はOをほとんど持たず、C・Hの鎖が長く連なった構造をしています。

これらがいずれ燃焼することを考えれば、脂肪酸にはブドウ糖よりもはるかに燃料が凝縮されて詰まっていることが読み取れます。

一方で、この燃料の塊を燃やし尽くすには、O2を充分に用意してやる必要がありそうで、ブドウ糖のように嫌気的な条件下で一時的に燃やすという用途には不向きでしょう。

また、「水と油」と言われるように、脂肪酸が水に溶けにくいのも、このHが多くOが少ない構造に起因しています。

この性質のせいで、脂肪酸を吸収したり体内で運搬したりする際に常に困難が伴いますが、それでもなお、生体はさまざまな工夫を凝らして、この極めて効率のよいエネルギー源を有効利用しています。

β酸化

脂肪酸の長い鎖は一度に酸化されるのではなく、まず手ごろな断片に切断される過程を踏みます。

これが「β酸化」と呼ばれる反応で、一度につき2個のCが切り出されます。こうしてできる物質は、実はブドウ糖代謝の第二段階で登場したアセチルCoAと同じものであり、それ以降はブドウ糖と共通の代謝経路であるTCA回路に合流することになります。

ちなみに、脂肪酸の炭素鎖の長さはさまざまで、Cが偶数個のものもあれば奇数個のものもありますが、奇数個の鎖に対してβ酸化を繰り返して最後に3 炭素の鎖が残っても、別の経路を通ってTCA回路に合流できるようになっています。

脂肪酸のひとつであるステアリン酸とブドウ糖の分子構造図

脂肪酸のひとつであるステアリン酸とブドウ糖の分子構造図

(『ナース専科マガジン』2012年12月号より転載)

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