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【連載】これで対応に困らない! せん妄の基本

第10回 せん妄はなぜ起こるの?③直接因子―身体疾患について

執筆 井上 真一郎(いのうえ しんいちろう)

岡山大学病院精神科神経科 助教

大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。 担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

直接因子とは?

看護師さん:「前回の講義で、準備因子を理解しておくことがとても大切だと学びました」

井上先生:「準備因子をどのように活用するのかがポイントでしたね。ぜひ実践に役立てて下さい。 今回は、直接因子について解説しましょう」

看護師さん:「直接因子は、焚き火で言う『ライター』でしたよね(第8回参照)」

井上先生:「その通りです。せん妄の引き金となるもののことですね。 直接因子は大きく3つ、『身体(からだ)』『薬剤(くすり)』『手術』と覚えましょう。患者にせん妄を認めた場合、この3つのいずれか単独、あるいは複数が重なって起こっていると考えて下さい」

看護師さん:「せん妄の原因について、しっかり探索をする必要があるということですね」

井上先生:「そうですね。原因を突き止めて、それに対するアプローチをすることが重要です。 せん妄は、不穏や幻覚・妄想など精神症状が目立つため、どうしても向精神薬による薬物治療がメインと思われがちです」

看護師さん:「そう思っていましたが、違うのですか?」

井上先生:「例え話になりますが、雨の日に部屋でテレビを見ていて、天井から雨漏りがしてきたらどうしますか?」

看護師さん:「まず、雨漏りしているところの真下にバケツを置きます!」

井上先生:「そうですね。ただし、それはあくまで“対症療法”にすぎません。結局のところ、雨漏りしているところを直さなければ、根本的な解決にはなりませんよね。 このストーリーは、実はせん妄の治療とよく似ているんです」

看護師さん:「なるほど。せん妄も、薬物治療はあくまで不穏や幻覚・妄想などへの対症療法で、直接因子をどうするかがポイントというわけですね」

井上先生:「その通りです。ぜひそのことを忘れず、原因に対するアプローチをおろそかにしないようにしましょう。」

次ページ:せん妄の直接因子となる身体疾患

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