【連載】泣いて笑って訪問看護

第9回 『どうする?嫌がる入浴介助』―認知症の利用者様が入浴を拒否する理由は?

執筆 川上 加奈子(かわかみ かなこ)

株式会社のものも よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任

医療の場が在宅へと比重が高まるものの、まだまだ知られていない訪問看護。ここでは訪問看護の実際について、エピソードを通じてご紹介します。


「私の服を盗るつもりでしょ!」

訪問に限らずだが、入浴をものすごく嫌がる方がいる。
拒否する原因で考えられるのは以下の通り。

  1. 寒い(たまに暑い)から嫌だ
  2. 入浴介助までされるようになったら情けない
  3. 体力に自信がない
  4. 恥ずかしい
  5. 入浴してるうちに物を盗まれるんじゃないか
  6. 何をされるか分からないから怖い

寒い、暑い位ならば先に浴室や脱衣所を湯気や暖房で暖めておくなど対処はできる。
極度の恥ずかしがりの方では、パンツを履いたまま入浴介助を希望される方もいるほど。

いずれにせよ、無理強いは逆効果。かといって入らない訳にもいかない。
こと、認知のある方は、物を盗まれるという恐怖心からか、いつも荷物をまとめて抱えている方もいる。

そこで、今回は服を盗まれるのではないかという方に対処した一例を紹介したい。

M看護師の誘導のもと、なんとか脱衣所まで来た利用者様。
しかし、毎回入浴後に新しい服を用意しておくと、「さっきまで着ていた私の服はどこにやったの?」と大騒ぎ。
「これですよね?」と見せても、洗濯物に入れようとすると
「ほらやっぱり取るつもりでしょ?」となり、「やっぱりお風呂は入りません!」ということに…。

そこで、考えた苦肉の策がこれ。
脱いだ服はこっそり回収し、新しい服を、脱いだままの状態そっくりに配置しておくこと。

M看護師いわく、
「認知の方って、執着してることに関してはやたら記憶がいいのよね。
だから肌着を右に脱ぎ捨てたら同じように右に脱ぎ捨てたような形でセットして、ズボンも脱皮したような形であえてセットするの。靴下もあえてクシャクシャね(笑)
幸いその方は、柄までは覚えていられなくて、お風呂から出てきた時に、脱いだ形になっていれば、安心して、さっきまで着ていた服だと信じて着てくれてたから良かったんだけどね(笑)」と。

なぜ入浴介助が嫌なのか、共に考える

全てのケアに関して言えることであるが、相手がケアを拒む時、どう関わるかということが大切である。
なぜ嫌なのか、その理由を共に考えることが解決の鍵となる。

入浴中に倒れたことがあり、それ以来不安で入れない方もいる。
そんな方には入浴介助は安心するかもしれない。

しかし、介助されるのは嫌だが、誰もいない自宅で入浴するのは不安だから入らない方もいる。
そんな場合は入浴の時間に合わせてヘルパーを配置。ヘルパーは室内の掃除をしているため、介助はしないが何かあっても異変には気がついて貰えるので安心して入浴できる…というケースもある。

また、自分なりのこだわりの洗い方があり、それをやってくれないと納得されない方も結構いらっしゃる。

でも、ここは病院ではなく、利用者様が主導権を握れる在宅。
そのため、心肺機能が弱く、短時間での入浴指示が出ているような方でない限りは、極力ご本人様の納得行くやり方をとことん指導していただき、ご満足いただけるよう努めている。
それができるのが訪問看護の強みでもあるかもしれない。

看護学生時代、お互いに洗髪し合ったことはあるだろうか?
人に洗われると、意外にも指の圧が強すぎたり、あるいは弱かったり、振動が強かったり、爪があたる感じがしたり…自分の理想のように洗ってもらうのは難しかったと思う。

そんなことを忘れないようにして、一事が万事、やられる側の気持ちになりながらケアに関わっていきたいと思うこの頃である。

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