【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第13回 急変の予兆を知る 意識・精神活動の変化と「お決まりの抵抗手段」⑨「呼吸促進は全身状態の重要な指標」

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


呼吸促進は全身状態の重要な指標

呼吸状態とホメオスタシスの深い関連

血中の酸素の減少、二酸化炭素の増加、pHの低下(アシドーシス)は重大なホメオスタシス(血液環境)の乱れです。

「生き残りシステム」は呼吸回数を増やして、このような乱れを正そうと「抵抗」します(酸素を増やそう、二酸化炭素を排泄しよう、pHを上昇させよう)。「抵抗」するためには深くて速い呼吸のほうが効率的ですが、一部の代謝性アシドーシスを除けば、実際には「浅くて速い呼吸」になることが多いようです。

全身状態が悪化しているときは、深い呼吸ができないくらい全身(呼吸筋)が消耗しているのかもしれません。

「動き」で捉える頻呼吸

呼吸回数の増加をみるときは、胸部~頸部~肩の過剰な「動き」に注意しましょう。はっきりした頻呼吸(30回/分以上)は、誰にでもわかる「危険なサイン」です。

一方で、浅くて速い呼吸は、その「動き」が小さいときは見逃されるかもしれません。「普通とは違う、微妙でせわしない頸部や胸部の動き」に注意しましょう。

この「微妙な動き」は日常的で安定した呼吸パターンを乱します。「日常的」ではない「全体的イメージ」として「直感」されるでしょう。

呼吸障害解説図

ショックのごく初期では、頻呼吸というよりも、通常の呼吸の合間に深いため息が混じるだけのことがあります。

軽度の脳酸欠に抵抗するための、「生き残りシステム」による微妙な「抵抗」です。「呼吸パターンの乱れ」とみなして注意すべきです。

言葉の「途切れ」で捉える頻呼吸

頻呼吸は会話の言葉の「途切れ」によって、おおまかにチェックできます。途切れることなく、流暢にしゃべることができれば呼吸回数の増加はありません。

必要以上に言葉が途切れるときは、軽度~中等度の呼吸回数増加があると判断し(20~30回/分)、2~3の単語の単位で途切れる場合は、高度の呼吸回数増加とみなします(30回/分以上)。

正常な呼吸パターンは息を吸う(吸息)のに約1秒、息を吐く(呼息)のに約1.5秒かかり、その後の吸息期までに約1秒の休息期があります。

このように正常呼吸の1サイクルは約3~5秒なので、正常な呼吸回数は12~20回/分です。呼吸回数が25回/分程度に増加すると、休息期がなくなり、吸息:呼息=1:1となります。

休息期のない呼吸運動は、頸部~胸郭の「休むことのないせわしない」動きとして察知されます。

急変を捉えるための「危険なサイン」は、教科書的な「言葉のサイン」ではありません。これまでの連載で解説してきたように、「生き残りシステム」に注目することで、「危険なサイン」がみなさんの実感に近くなってきたのではないでしょうか。

「軽い意識障害」、「冬眠」行動、わずかな「呼吸パターンの乱れ」などは、日常的ではない「全体的イメージ」となって「何かヘンだ」と直感されるでしょう。

そのようなときは、自分の直感を信じて、積極的にバイタルサインをチェックして、フィジカルアセスメントを行いましょう。「生き残りシステム」が活性化している客観的な証拠を探すのです。(第6回)。

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