【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第15回 急変の予兆を知る 「顔」で捉える“何かヘンだ” ①全身状態と「顔」

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


今回は、全身状態と「顔」についての解説です。みなさんが「○○さんの全身状態が悪い」と直感したときのことを思い浮かべてみて下さい。思い浮かぶのは患者さんの「全身」ですか?違いますよね。患者さんの「顔」でしょう。多くの場合、私たちは患者さんの「顔」で、危険な「全体的イメージ」を察知します。

「顔」と「コミュニケーションの乱れ」

人間の最も大きな特徴は、高度に発達した意思疎通能力、すなわち「コミュニケーション」能力です。日常的なコミュニケーションは、体内のホメオスタシスが安定し(第1回)、意識レベルがクリアで、精神活動(心あるいは「頭の回転」)」が活発であるからこそ可能なのです。

日常的な「顔」

「顔」をわざわざ「」つきで表記しているのは、「顔」は単なる「モノ」みたいな観察対象ではなく、各人の個性や人格(すなわち日常的な「全体的イメージ」)をも代表していることを強調したいためです。私たちは相手とコミュニケーションをとりながら、お互い「顔」を「経験・体感」するのです。

人間は生まれつき「顔」に関心を向けるようにできています。また、人間は「顔」を認知するための専用の神経ネットワークを持っています。「顔」は社会生活を営む人間にとって特別なものです。

更に言えば、私たちは無意識のうちにも、「顔」を通してお互いの体調(全身状態)を直感的に気づかっています。「全身」が「顔」に集束すると言ってもよいでしょう。

非日常的な「顔」

私たちは患者さんの非日常的な「顔」を介して、患者さんとの「コミュニケーションの乱れ」を感じ取ります。この感知力は持って生まれた「本能(神経ネットワーク)」が、社会生活のなかで必然的に発達したものです(第6回)。もちろん、看護師としての臨床経験によって、この「本能」はさらに磨きがかけられます。

「顔」は全身状態の「窓」

非日常的な「顔」は「軽い意識障害」や「冬眠」行動の現れかもしれません。そして、その背後には「血液環境(ホメオスタシス)の乱れ」があります。これが「全身状態が悪い」です(第1回第2回)。

重大な異変(有害刺激)の発生
→血液環境の乱れ(=全身状態の悪化)/「生き残りシステム」の活性化
→意識・精神活動の変化(心の動きの乱れ)や「冬眠」行動
→コミュニケーションの乱れ
→非日常的な「顔」を「経験」する(危険の直感!)

意識・精神活動は血液環境という「内」の変化を「外」に映し出すので、全身状態の「窓」でしたね(第7回)。「コミュニケーションの乱れ」の手がかりとなる「顔」は、全身状態を反映する、より広い「窓」だと言えます。「顔(あるいは目)は心の窓」などといいますよね。

「元気がない」「活気がない」「ぐったり」の例、イラスト

「元気がない」「活気がない」「ぐったり」の例 「元気がない」「活気がない」「ぐったり」の例

次回は更に詳しく「顔」と「コミュニケーションの乱れ」について解説します。

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