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【連載】バーチャル症例検討 帰れま10!

【第17回日本褥瘡学会Close UP! 】⑦脊髄損傷患者の褥瘡ほか

  • 公開日: 2015/12/2
  • 更新日: 2021/1/6

平成27年 8月28日(金)・29日(土)に仙台国際センターにて第17回日本褥瘡学会学術集会が開催されました。本大会では館 正弘先生(東北大学大学院医学系研究科形成外科教授)が大会長を務め、『先進的褥瘡研究の推進』をテーマに、初学者向けのスキルアップセミナーから褥瘡栄養学のような先進的・学術的なシンポジウム、教育講演など様々なプログラムで行なわれ、全国から約6,000人もの参加者があり、大盛況のまま幕を閉じました。

皮膚・排泄ケア認定看護師(wocナース)をはじめ、医師(内科医・外科医・歯科医ほか)・看護師・薬剤師・栄養士・PT・OT・ケアマネ・福祉用具専門相談員など、褥瘡に関わる専門家が一堂に会し、まさにチーム医療の最先端を体現する日本褥瘡学会学術集会から、そのプログラムの一部を紹介します!


仕事を持つ脊髄損傷患者に創自他坐骨部褥瘡の1例(佐藤 智也先生/埼玉医科大学形成外科 助教/外来・病棟医長)

自立した褥瘡患者への治療の第一選択は?

【症例】事故により脊髄損傷(Th12)となった42歳女性。上肢の障害なく、フルタイムで事務仕事を行い、一日中車椅子の上で過ごし、クッションとして薄い座布団を敷いている。1ヶ月前より右坐骨部に褥瘡発生。皮下組織までの損傷で、段差はなく比較的浅い褥瘡である。夫は事故死で、小学校の子どもが2人いる。DESIGNスケールは11点。

佐藤先生の写真

佐藤先生は、このような患者さんにはまずクッションを変更し、除圧動作の指導が必要だと解説しました。褥瘡のための除圧徹底を理由に入院・休職となると寝たきりになり、また仕事が不可能となって社会的孤立や経済的な問題を抱えることになるため、まずは保存的治療を行います。

しかし、褥瘡が「深いD3以上」「組織欠損が大きい」「ポケットがある」「創縁が肥厚している」などの場合は手術を考慮するそうです。

保存的治療として適切なクッションを選択しますが、このような患者さんには薄いクッションでは坐骨部が車椅子の座面に底づきしてしまい、円座では接触する部分の軟部組織の圧を上げてしまうため、厚いクッションが適切です。

車椅子患者の除圧動作は?

また、佐藤先生は、除圧動作として、「プッシュアップ」「前屈姿勢」「側屈姿勢」などについても解説しました。

「プッシュアップ」「前屈姿勢」「側屈姿勢」説明イラスト

参加者の声

挙手回答によるクイズ形式のワークショップは高い回答率で、参加者は褥瘡の実践的な知識を楽しく学ぶことができ、座長と演者の先生方には参加者からの大喝采のまま終了しました。

学会の様子

2年前の『帰れま10!』が最高に楽しかったので、今回も絶対に楽しいはず!と期待して参加しました。プレゼンターは経験豊富なベテランの皆様なので、症例クイズを通じてバイオフィルムやTIMEコンセプトなど、大切なポイントも知らず知らずの内に学ぶことができました。参加者は記録を取る暇もない程スライドに注目していますが、記憶に残るワークショップになったことでしょう。もちろん、私もそのうちのひとりです。

降簱理恵さん(北アルプス医療センター 皮膚・排泄ケア認定看護師)

堅苦しいと思われがちな学会で全員参加型、全職種が一体となりクイズに答えながら楽しく褥瘡ケアを学べるというバラエティー番組さながらの企画に驚嘆しました。また、初めて学会に参加した看護師からは「学会にまた来年も来たいですね」「施設でも、楽しく学べる褥瘡の勉強会をもっとやりたいですね」と学会や褥瘡への関心にもつながっていました。企画継続を期待します。

千田由美子さん(岩手県立中部病院 皮膚・排泄ケア認定看護師)

問題を解きながら、体圧分散寝具の選び方や考え方など学ぶことが出来ました。最初は楽勝と思っていたのですが、いくつか間違い「WOCなのに間違えた・・・」と少々恥ずかしかったです。一人で参加したのですが、参加者みんなで正解・不正解で一喜一憂していて一体感がありました。なかなか学会でこういう雰囲気になるのは珍しいのではないかと思いました。ナレーションも面白かったです。

匿名(皮膚・排泄ケア認定看護師)

実際、編集部も本スキルアップセミナーを聴講しましたが、本企画は単に面白いだけではなく、会場の聴衆が一体となって学ぶことができる点で、受け身型のレクチャーが主流の学術集会としては大変画期的な内容でした。会場では、“更に褥瘡に興味が湧いた”“自分の知らない分野が改めて再確認できた”との参加者の声がきかれ、スキルアップセミナーの目的を十分に達成した様でした。

次回の褥瘡学会でもこのような取り組みを大いに期待したいです。

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