【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第14回 急変の予兆を知る 「コミュニケーション」と「行動」が「全体的イメージ」をつくる

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


前回までの連載記事では、「生き残りシステム」に基づいて、「危険なサイン」とはどのようなものかを説明してきました。最も重要なのが患者さんの「全体的イメージ」でした。今回からは、「全体的イメージ」を、どのように捉えるかについて説明します。つまり、“何かヘンだ”に気づく「手がかり」です。

「コミュニケーション」と「行動」

「日常モード」の「全体的イメージ」

「社会で生きている」のが「日常モード」の私たちです(第5回)。周囲の人たちと意思の疎通をはかり、協力しながら、生きるため、楽しむために行動します(飲食・排泄行為、睡眠、労働、スポーツ、旅行、読書などなど)。元気にくらす人間の特徴は、高度に発達した「コミュニケーション」と、本能的、個性的、社会的な「行動」に現れます。

「非常事態モード」の「全体的イメージ」

生命を脅かす重大な異変が起これば、「生き残りシステム」が活性化します。全身が「非常事態モード」へとダイナミックにモードチェンジするため、当然ながら「人間の特徴」である「コミュニケーション」や「行動」も変化します(第8回9回)。その結果、「元気がない」、「活気がない」、「ぐったりしている」などのイメージが形成され(第6回)、これが“何かヘンだ”につながります。

“何かヘンだ”という違和感の正体は、多くの場合「軽い意識障害(せん妄含む)」や「冬眠」行動です。

「軽い意識障害」は「身体の動き(行動)」と「心の動き(精神活動)」を変化させます。「身体」にはスローで乏しい行動、せわしない行動、脱力した姿勢などがみられます。「心」では意欲や関心が低下し、「頭の回転」がスローになって、コミュニケーションが乱れてしまいます。「冬眠」行動は「身体の動き」と「心の動き」をスローにして、「淀んだ雰囲気」や「重苦しいムード」にするのでした(第11回)。

「スロー/せわしない行動」と「コミュニケーションの乱れ」に注意を向けましょう。

「コミュニケーション」と「行動」の危険な「全体的イメージ」

看護師や介護士が急変の予兆を察知したときの具体例を表にしました。これらはあまりにも漠然としているので(自分自身に説明ができないので)、ややもすると「スルー(軽視)」されてしまうかもしれません(第6回)。

急変の予兆を察知したときの具体例

急変の予兆を察知したときの具体例②

しかし、各々の予兆をよくみて下さい。ほとんどが「スロー/せわしない行動」と「コミュニケーションの乱れ」として捉えられていることがわかるでしょう。その背後にあるのは、おそらく「軽い意識障害」や「冬眠」行動ではないでしょうか。

ところで、もうひとつ重要なキーワードが示されていますね。それは次回以降解説する「顔」です。

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