【連載】実践!エンゼルケア

第2回 エンゼルケアの基本②死後のおもな身体の変化

解説 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


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死後の身体変化の特徴について

 腐敗や乾燥などの死後の変化は、個体差があるので正確な予測はできません。そして恒常性がないため、臨終直後のケアの管理方法に大きく左右されます。そのため、下記のような死後の変化の特徴を理解する必要があります。

 1. 不可逆変化:生命のある状態の恒常性を失うことで、どんどん変化していき、元の状態には戻らない。そのため、死後変化のはじまりの段階であるエンゼルケアの時間帯に行うべきことが見えてくる。
 2. 変化を予測しきれない面がある:変化に動じずに、さまざまな変化に困惑するご家族に対応法の説明をする必要がある。
 3. 傷みやすい:さまざまな変化は自然の変化で異常事態ではないことを認識し、ご家族にも伝える。
 4. 重力の影響を受ける:生命体は恒常性により重力に抵抗するが、亡くなったとたん恒常性もなくなることで刻々と重力の影響を受ける。

おもな死後の身体変化

 死後の体表面は、内側からの水分補給がなくなると同時に、外気に触れて乾燥が進んでいきます。とくに露出している顔が乾燥しやすく、さらに突出している部分の額、頬、鼻先は、より乾燥が早いのですが、最も乾燥しやすいのが唇です。

 死後変化の種類により変化が始まる時間が異なるので、その目安を図1で見てみましょう。


死後の主な変化項目解説イラスト
図1 死後の主な変化項目
*( )内は目安の発生時間ですが、状況によって生じない項目もあります(伊藤 茂:『ご遺体の変化と管理』を参考に作成)

死後変化で、まず留意すべき点は乾燥

 唇は皮膚が薄いため、乾燥が進むとカサカサするだけでなく表面の色も茶褐色になってきます(図2)。そして唇の厚みが失われてくる場合があり、ご遺体の「乾燥」も不可逆変化ですから、一度変化すると元に戻りません。

乾燥が起きるメカニズム説明図
図2 乾燥が起きるメカニズム
(伊藤 茂:『ご遺体の変化と管理』を参考に作成)

 とくに唇は早めに油分を塗布し、できるだけ水分を失わないようにすることが大切です。エンゼルケアでは、乾燥対策ががはずせないケアですので「ご遺体=乾燥」と覚えましょう。

乾燥対策のために配慮したい点

 乾燥を防ぐためには、油分塗布、フィルム剤貼付(外気を遮断)などがあります。油分の塗布をすることで油膜を作り、外気にふれ水分が失われないようにします。

 お顔にスキンケアやメイクをするのも、乾燥防止(乳液やクリームファンデーションの使用も)の大きな目的の一つです。皮膚表面が失われている箇所や粘膜部分は、急激に乾燥していくので、フィルム剤貼付などで外気を遮断します。

 また、次の点も配慮した方がいいでしょう。

 1. 冷蔵庫管理は乾燥を助長しやすいので、湿度調節に注意する
 2. エアコンや扇風機の風を、露出している頭部に直接あてない
 3. エアコン温度を下げると湿度も下がる場合があり、自宅ではエアコンと加湿器併用も検討する

 乳児は成人と比較して水分量が多いなどの理由で、より強い乾燥傾向となります。油分塗布、ラップで包むなどの対応が必要で、家族への説明も十分にしましょう。

皮膚の脆弱化について

 乾燥と同時に進むのが皮膚の脆弱化です。たとえば、むくみのある方は、より早く皮膚がもろくなってきます。少しの圧力や摩擦でも損傷をもたらすことがあるので、下記のことを念頭におくことが必要です。

 1. 脆弱化によって、摩擦や圧迫などの影響を受けやすいため、清拭やシャワー浴時の強い摩擦や、包帯などの圧迫をできるだけ避ける
 2. 顔そり、髭剃り時にも傷つきやすい
 3. テープ類を貼付して、その後はがす場合、皮膚損傷の危険がある

 次回、「第3回 エンゼルケアの基本③革皮様化現象への配慮」では、実際の例をご紹介していきます。

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