【連載】実践!エンゼルケア

第3回 エンゼルケアの基本③革皮様化現象への配慮

解説 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


乾燥傾向や脆弱化により起きる「革皮様化」現象

生体と同様のやり方で顔そりを行い革皮様化した実際例図1 乾燥傾向や脆弱化を配慮せず、顔そりを行い革皮様化した例

ご遺体の皮膚の乾燥傾向や脆弱化への配慮が足りず短時間で皮膚変化が起きてしまった場合、図1のようになる場合があります。

図1の方は、元々は真っ白いきれいな肌でした。しかし、退院してほんの短い時間で、急にこの現象が起きてしまいました。赤黒く色が変わっているところは、肌の質感が変化している部分です。乾燥してガビガビになり硬くなってしまったわけです。

このように露出した真皮が外気にふれ、はげしく乾燥し、収縮・硬化し、色は褐色化することを、法医学で「革皮様化(かくひようか/皮革製品のようになる)」といいます。革皮様化が起きると、顔の穏やかさまでもが失われ、ご家族は辛い印象を持つことになりますね。

革皮様化が起きる原因はご遺体の乾燥と脆弱化など死後変化(第2回で解説)が関係してきます。亡くなった皮膚に、生体と同じように顔そりをしたことが原因です。

表皮が削れると真皮が露わになります。そのことで乾燥がさらに加速します。ほんの短時間に乾燥が進んだことにより色が茶褐色に変化し、水分が失われて硬くなり革皮様化が起きたのです。

このように、生体とご遺体の体の状態がそれほどに違うということが理解できると思います。生体は皮膚に傷がつく、いわゆるカミソリ負けをしても時間が経てば回復する方向ですね。ご遺体は変化してしまったものは戻せません。

そういった生体との違いを、きちんと認識していれば、ご遺体のひげソリ、顔そり時の配慮も問題なくできるようになります。

肌を傷つけない対応のポイント

  1. 空剃りをしないこと
  2. クリーム・シェービングクリームを使用すること
  3. 低刺激カミソリを使用すること
  4. そっと、注意しながら行いましょう
  5. 電気カミソリを使用する際はそっとあてるように使用しましょう
  6. 実施後、乾燥を防止するため、必ず油分をのばしましょう

剃り跡のみならず、表皮あるいは皮膚自体がうしなわれている部分は革皮様化しやすいです。肌を傷つけないように、乾燥しないようにすることを頭に入れて対応しましょう。

手首をしばった部分の影響

次に、皮膚の脆弱化などの死後変化が関係した状態の例を紹介します。

ご遺体の腹上に乗っている手もとイメージイラスト

図2 ご遺体の腹上に乗っている手もと

図2のように手首をしばることで、圧迫部分が赤黒くなることがあります。赤黒くなるのは早めに痛んでいるということです。

亡くなったら“手をくむ”という習慣があります。この方は、そのくんだ手が、退院するときに、どうしても外れてしまうので、看護師が幅広の包帯で、くませた手をしばりました。

しかし、その“しばる”ことで、その部分が“圧迫”されて早めに痛んでしまい、跡がついてしまったのです。ほんの少しの時間でもこうなってしまうので、ご遺体はこれほどに“圧迫の影響を受ける”ということです。

生体でしたら、圧迫による跡がついてもマッサージをすれば回復する可能性があります。しかし、ご遺体は変化してしまったら、もとには戻せないのです。

ご遺体は“しばらない”

現在は、手に限らず“しばる”というのは、あまりおすすめしません。ご家族も、しばったことによる外見の変化を残念に思うばかりか、しばること自体につらい印象を持つことがあります。

さらに、「生きているときに何も悪いことをしていないのに何故しばられなければならないのだろう」「顔をしばったら息苦しそう」「首を吊ったのかと思われてしまう」など、“しばられる”ということにご家族が抵抗に感じていたこともわかったのです。

そこで、次回、「第4回 エンゼルケアの基本④エンゼルメイクの使用器具」では“しばらない”対応の仕方ををお伝えいたします。

【関連記事】

『逝去時のケアを極める エンゼルメイクの8つのプロセス』

『逝去時のケア【クレンジングと保湿編】』

ページトップへ