1. トップ
  2. 看護記事
  3. 症状から探す
  4. ショック
  5. ショックの定義、症状、診断基準と見極め

【連載】急変対応マニュアル

ショックの定義、症状、診断基準と見極め

  • 公開日: 2013/12/12

▼急変対応について、まとめて読むならコチラ
急変時の対応


急変症状の中でも「ショック」にはさまざまな原因があり、その見極めを覚えておくことは重要です。ここでは見極めのポイントとそのとき看護師は何をすべきかを解説します。


ショックの定義

 ショックは、「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義されています。

 そして、その病態により、大きく
循環血液量減少性ショック
心原性ショック
血液分布異常性ショック
心外閉塞・拘束性ショック
 の4つに分類されます。

ショックの分類表 (図 ショックの分類表)

【関連記事】
出血性ショックの病態とその対応
心原性ショックの病態とその対応
血液分布異常性ショックの病態とその対応
心外閉塞・拘束性ショックの病態とその対応

ショックの診断基準

 ショックにはさまざまな原因があることから、すべてのショックに適応する単一の診断基準はありません。しかし、血圧低下と臨床所見からおおよその判断をすることは可能です。これによると、血圧低下がショックを裏付ける目安となります。

 基本的には、収縮期血圧が90mmHg以下になったとき、あるいは通常の血圧より30mmHg以上低下したときとしています。

 この血圧低下に加え、みていかなければいけない臨床所見は、心拍数、頻脈・徐脈、爪先の毛細血管のrefill遅延、意識障害、乏尿・無尿、皮膚蒼白と冷や汗または39℃以上の発熱、の6つがありますが、このうち3項目以上に該当するとショックと診断されます。特に意識障害についてはせん妄や認知症の悪化と考えてしまい、ショックを見逃す可能性があるので、注意が必要です。

ショックの特徴的な症状

 患者さんをぱっと見たときに、「ショックかもしれない」と気が付けるよう、特徴的な症状を頭に入れておくことは大切です。その代表的なものに「ショックの5徴候(ショックの5P’s)」があります(下参照)。

 これらはショックを疑うべき症状で、「2」については多汗である場合もあり、さらに「3」には、具体的症状として、元気がない、視線が合わない、反応がない、体がだらりとしているなどの状態も挙げられます。

ショックの5徴候(ショックの5P’s)

1.皮膚・顔面蒼白(Pallor)
2.発汗・冷や汗(Perspiration)
3.肉体的・精神的虚脱(Prostration)
4.脈拍微弱(Pulselessness)
5.不十分な促迫呼吸(Pulmonary insufficiency)

 続いて「“不穏・頻呼吸”に注意する、“おかしい”と感じたときの対応」です。

「不穏」「頻呼吸」に注意する

 看護師が臨床でショックを疑うとき、注意したいのは「不穏」「頻呼吸」「脈」「発汗の性状」です。特に前者2つが重要です。

 ショックの指標としての不穏は、精神的な不安で起こるというよりも、脳血流量の低下や代謝性変化により血液が酸性に傾いた状態になったり、心筋梗塞や気胸等による疼痛などで起こったりすると考えられます。従って急な不穏の発生や意識の変化があった場合は、バイタルサインと「ショックの5徴候」からショックを疑ってみる必要があります。

 頻呼吸は、ショックによって血液が酸性に傾いた状態になり、その代償として過呼吸になって、血中二酸化炭素を排出し、アルカリ性にしようとする結果として起こります。呼吸数が1分間に20回以上ならショックを疑い、ほかのバイタルサインと総合して判断します。日常的には血圧や脈拍数のチェックのみということが多いと思いますが、呼吸数にも注意を払うことはショックの発見において大切なことです。

「おかしい」と感じたときの対応

 不穏や頻呼吸などでおかしいと感じたら、脈の触診をします。このとき、頸動脈が触れない場合は収縮期血圧60mmHg以下、橈骨動脈が触れる場合は収縮期血圧80mmHg以上と判断することができます。左右差の有無も評価します。

 その上でモニタリングを行います。まずはパルスオキシメーターでSpO2を測定します。SpO2が90%以下の場合PO2は60Torr以下と考えられ、酸素投与が必要となります。

 また、心電図モニターでの観察を行います。通常はテレメーターによりナースステーションでモニタリングしている場合でも、ショックが疑われるときは、ベッドサイドで見られるモニターを使用することが必要です。もし、適したモニターがなければ、除細動器のモニターモードを使用します。

 さらに、さまざまな生体情報を集めるために採血(血算・生化学測定)、動脈血採血(血液ガス分析)が必要となります。また、12誘導心電図は、急性冠症候群(ACS)を除外するために重要です。


(『ナース専科マガジン』2012年6月号より転載)

関連記事
* ショック時に使用する輸液製剤はどれ?
* ショックの初期対応と鑑別の流れ

この記事を読んでいる人におすすめ

【出血性ショック】検査値の看護への活かし方

検査値が何を示しているのか、また検査データを踏まえてどのような看護を行えばいいのか、実際のデータをもとに読み解いてみましょう。今回は、「出血性ショック」です。 事例 糖尿病で通院していた患者さん(男性52歳)が、意識障害のある状態で救急搬送されました。症状は以下の

2014/6/24

ショック時の輸液(輸液蘇生)

輸液反応性とはなにか  ショック時には、輸液の急速投与を行います。これは、輸液によって一回拍出量が増えることにより、心拍出量が増えて、結果、酸素供給量が増えることを期待するためです。  一回拍出量、そして心拍出量が増えるのは、心臓の前負荷が影響します。前負荷と

2017/4/13

「ショック」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

脱水や浮腫などの症候だけでなく、腎不全、心不全、糖尿病など、さまざな疾患の原因となるIN/OUTバランス(水分出納)。ここでは、IN/OUTバランスについて解説します。 体内ではこんなことが起きている! ショックとは、急激に全身の循環に障害が起こり、末

2015/6/12

【急変事例】糖尿病患者さんに急に不穏と麻痺が生じた

「急変対応の思考過程」に沿って事例で考えてみましょう。「急変対応の思考過程」の1「おかしさに気づく」は満たすものとして、2以降の流れで考えていきます。 事例 糖尿病患者さんに急に不穏と麻痺が生じた Eさん(85歳・男性)は糖尿病の教育入院中でした。退院の前日ナース

2014/2/26

急変時の思考過程、6つのステップ

▼急変対応について、まとめて読むならコチラ 急変時の対応 急変が起こったときには、「どのような原因で」「何が起こったか」を的確に判断できなければなりません。それを導き出すための、一定の考え方をマスターしておきましょう。 急変の的確な見極めと

2014/12/30

カテゴリの新着記事

骨盤骨折をした患者さんに関する看護計画

骨盤骨折の治療でICUに入院している患者さんに関する看護計画  骨盤骨折とは、交通事故や高所からの転落などの大きな外力が骨盤に加わることで生じる骨折です。骨盤の周辺には主要な動脈や静脈があり損傷状態によっては大量出血が生じる可能性があります。今回は骨盤骨折の治療でICUに入

2024/3/30

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
4位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
5位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
6位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
7位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

Aライン確保の目的、手順、手技・観察のポイント

【関連記事】 * 輸液ライン(点滴ライン)作り方 9ステップ * 点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG? * 【血圧異常】異常に高い血圧への対応 7ステップ Aライン...

249090