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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第17回 乳房切除術に伴うボディイメージの変化をどのように認識していますか?

解説 高橋 奈津子(たかはし なつこ)

聖路加国際大学看護学科 助教 認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン 運営委員

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、病棟業務の中では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療上の悩みや困難さを訴えるのも勇気のいることでしょう。

そこで今回、患者の病いの語りをデータベース化しているDIPEx-Japanの協力のもと、看護師が患者に対応する上で知っておくべき患者の気持ち・考えを解説します。


自分らしさの回復・発見にむけた支援

乳房は、女性のシンボル臓器であるため、乳房切除術は、女性らしさの喪失感を伴うものと先入観をもってステレオタイプに接していないでしょうか。乳房切除によって受けるボディイメージの変化とその受け入れ過程は人によって様々です。

48歳の時に乳がんと診断された女性(インタビュー時58歳)

インタビュー動画

「女の人が乳房を失うっていうことはね、すごいかなりあとから、響くことだっていうふうに聞いているので、慎重に選んでほしい」って、何度も何度も先生に注意されたんです。ほんとに、何度も、注意してくださったんですよ。(中略)

それほど、自分が女性であるっていうことを意識したことがなかったですのに、あ、考えて考えたうえでやったのに、こういうことなのかっていう受け入れ方を、ができるのは、ずいぶんあとのほうになるまでできなかったです。

失った悲しみというのでもなかったですけれども、もう、こういう体なのだっていうのは、受け入れましたけれども。あの、精神的に……、そういう姿であることに慣れるのは、やっぱり、時間かかりましたね。

その、片腕がないとか足がないとかっていうような病気ってありますよね。怪我とか病気とか。それと、同じことである。ま、洋服着ているから、あのー、分からないようにね、今はいろんなこう分からないようにできるようになっていますけれども。(中略)

すごく何かこっち側にない、ないっていうのが意識するわけです。「あ、受け入れられていないわ」ってそのとき思いました。「自分で受け入れることができていないからこんなに意識するんやな」って思って。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン >乳がんの語り」より

“ボディイメージ”とは、自分の身体に対する知覚と期待と評価の総体であり、自分の身体およびそれが他人にどう映るかについての考えをいいます。

乳房は女性のシンボル臓器であり、一般的に女性らしさの象徴としてとらえられることも多いため、人によっては、乳房切除術による喪失感は非常に大きく、自尊心を傷つけ、人間関係にも影響する場合があります。

このように乳房に対する思いが強い人にとっては、乳房再建術や外観を整えるようなケアはその人らしさの回復に重要な役割を果たすでしょう。

しかし、再建術により、乳房の形がある程度、整ったとしても、以前とは異なる乳房の感触、感覚に違和感を抱く場合もあります。

また、今回紹介した人のように、術前には十分に乳房切除術を受け入れていると自分で感じていたとしても、術後しばらくたってはじめて自分の身体の変化を意識する場合もあります。そのほかにも女性らしさの価値を内面に求める人、再発を早期に発見するためにあえて再建術を望まない方もいます。

乳がん患者さんは、その治療過程で様々な外観の変化を体験しますが、ただ単に、再建術やその他の外観を整えるケアの情報提供をしさえすれば解決するわけではありません。

ボディイメージの変化に伴う喪失感の程度や時期、受け入れ過程も人によって様々であることを看護師はまず心に留めておく必要があります。人によってはパートナーの存在や関係性が大きく影響する場合もあるでしょう。

その上で、その方が自分らしさをどのように回復あるいは新たに発見していくかのその過程を長い目でとらえながら、関わることが求められるのではないでしょうか。

「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)

会社紹介

英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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