【連載】“何かヘンだ”がわかる! 急変前に気づく五感アセスメント

第18回 急変の予兆を知る 「行動」で捉える“何かヘンだ”

解説 佐仲 雅樹(さなか まさき)

津田沼中央総合病院内科/東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座 客員講師/城西国際大学薬学部 客員教授

はっきりとした予兆もなく、患者さんが急変したり、重篤な疾患が進行していたりする経験があると思います。そのような急変に先立って、先輩の看護師や医師から「あの患者、何かヘンだよね」という直感的な台詞を聞いたことがあるかもしれません。

この連載では、急変前の「何かヘン」と感じる患者への直感的な違和感について解説し、急変を見抜く力を養います。


危険な「全体的イメージ」は、「コミュニケーションの乱れ」と「スロー/せわしない行動」として現れます(第14回)。「コミュニケーションの乱れ」は「顔」を介して察知されます(第1517回)。一方で、「スロー/せわしない行動」とは「動き」、「発語」、「姿勢」に現れます。ちなみに「発語」の質(内容)は「コミュニケーション」ですが、その量(多弁/だんまり)が「行動」です。

危険な「行動」のイメージ

「スロー/せわしない行動」とは、不足あるいは過剰な「動き」、「発語」、「姿勢」が絡み合って、危険な「全体的イメージ」となったものです。「行動」の変化を、「動きは…」「発語は…」「姿勢は…」のように、分析的に捉えようとするのは得策ではありません。以下のように、あえてアバウトに捉えましょう。

  1. 「スロー(不足)な行動」:元気/活気がなく、日常的な行動(飲食、トイレ、家事、仕事、リハビリなど)が減少した様子です。「生き残りシステム」の視点では、「軽い意識障害(低活動型せん妄)」、あるいは「冬眠」行動かもしれません。(第8回)(第9回)
  2. 「せわしない(過剰)行動」:落ち着かない、不安定な、不穏な行動です。「生き残りシステム」の視点では、「軽い意識障害(過活動型せん妄)」かもしれません(第9回)

危険な「行動」の捉え方

患者さんの様子をみて“何かヘンだ”と直感したら、上に示したイメージのごとく、アバウトに「スロー(不足)」か「せわしない(過剰)」かを判断します。

「スロー」のパターン

「グッタリ」、「縮こまる」、「固まる」ようなイメージです。「せわしない」のパターンに比べ、「スロー」のパターンは見逃されやすいと言えます。特に初対面の外来患者さんでは気づきにくいでしょう。「顔」を介した「コミュニケーションの乱れ」に注意が必要です。一方で、入院中の患者さんでは、わずかな変化として捉えることができます(「いつもより元気がないな」「今日は何となく目に力がないな」など)。このパターンの代表は低活動型のせん妄や「冬眠」行動です(第8回第9回)

「せわしない」のパターン

「ソワソワ」、「モゾモゾ」、「ウロウロ」、「キョロキョロ」するイメージです。「せわしない」行動と判断したら、その「せわしない」ことの理由が理解できるかどうか考えましょう。例えば、「お腹が痛い」といってベッドの上で身体をよじっていれば、その「行動」は「とても痛いんだな」と理解できます。一方で、ベッドに横になった状態で、キョロキョロしながら、意味もない言葉を発し(多弁)、ソワソワと点滴ルートをいじっているのは「理解不能」です。これは過活動型のせん妄かもしれません(第9回)。

過剰な「行動」は、一見「元気」にみえるかもしれません。患者さんの発言や、患者さんの置かれている状況からみて「理解できない(常識的ではない)」からこそ、過剰な行動は“何かヘンだ”と直感されるのです。

「せわしない」+「スロー」のパターン

「せわしない」と「スロー」の混合パターンもあります。それは患者さんが自分自身で移動ができないくらい「スロー(ぐったり)」なのに、モゾモゾと手足を動かして「せわしない(挙動不審)」といったイメージです。重症患者の過活動型せん妄かもしれません。

「行動」の異変を、無理やり上記3パターンに分類する必要はありません。あくまでもアバウトなイメージであり、“何かヘンだ”の「手がかり」です。なお、多くの場合、危険な「行動」を察知するときは、同時に「顔」を通して「コミュニケーションの乱れ」も察知しています(第1517回)。

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