【連載】実践!エンゼルケア

第4回 エンゼルケアの基本④エンゼルメイクの使用器具

解説 小林光恵

「エンゼルメイク研究会」「看護に美容ケアをいかす会」代表

患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。


第3回では、包帯で手首をしばった部分に圧迫跡ができ、不可逆変化により元の状態には戻らないというお話をしました。

今回は「顔をしばたために起こってしまった死後変化」の事例と、その対処法としてのエンゼルメイクの使用用具のご紹介をします。

顔をしばったために起こりうる現象

ご遺体の口が大きく開いているとき、それを閉じるためにいままで全国のケアの現場では、やむなく包帯をあごの下にまわし頭頂部でぐるりとしばることがありました。

しかし包帯で顔をしばることにより、組織間浮遊液の移動が止められて、局所的浮腫をもたらします。さらに、ご遺体の死後変化による皮膚の「乾燥」と「脆弱化」(第3回)の影響が進んでいる関係で、しばった箇所は輪っか状の圧迫跡につながります。

顔はとくに露出している部分ですので、圧迫跡がついてしまうと、非常につらい印象になります。ご家族から「しばったら息苦しそう」「首を吊ったのかと思われてしまう」という声が聞かれたこともありました。

そこで、エンゼルメイクの「その人らしい装いに整える」考えをもとに、お顔やその周辺に圧迫跡が極力残らない方法、顔まわりをしばらない工夫をご紹介しましょう。

表皮が削れると真皮が露わになります。そのことで乾燥がさらに加速します。ほんの短時間に乾燥が進んだことにより色が茶褐色に変化し、水分が失われて硬くなり革皮様化が起きたのです。

口を閉じる際の、顔まわりをしばらない工夫①

顔をしばらない対応や配慮として、たとえば枕を少し上げて(体液が自然に移動するスロープを意識しながら)、あごの下に丸めたタオルを挟んでおさえたり、口を閉じる専用の用具『チンカラー』(写真1)を使用する方法などがあります。

写真1 チンカラー 写真1 チンカラー

※サンプル希望など問合せ先:株式会社M2コーポレーション チンカラー事業部(電話:03-5954-2378)

ただ、チンカラーの使用には配慮が必要になってきます。臨終直後にチンカラーを入れてしまうとうっ血したり、チンカラーがあたるところに圧迫跡がついてしまうことがあるからです。またチンカラーを装着することをご家族は、苦しそうだとお感じになる場合もありますので、お家に帰るまで使用するなどの対応方法をご家族とよく相談しましょう。

また口元が少し開いているときには、歯の表面の全体とそこに接する口腔内に『入れ歯安定剤』を塗り、唇を合わせて押さえておくと自然に閉じます。いずれにしても「しばる」以外の方法をおすすめします。

口を閉じる際の、顔まわりをしばらない工夫②

ご家族の意向はさまざまです。「お口を開けた状態で亡くなったのだから、本人はそれが楽なのかもしれない」と、そのままにしておくのを希望される方もいますので、柔軟な対応が必要です。

ご家族の意向を伺いつつ、「開いた状態のままですと乾燥や硬直が進みますので、少しお口の中の乾燥対策として油分を塗らせていただきますね」とか「外気に触れて乾燥しないようにお口の上にハンカチを乗せましょうか」など心を配った対応をしましょう。

また歯がないために閉じにくい場合もあるので、本人の歯がない場合は、エンゼルメイク専用義歯(エンゼルデンチャー※写真2)という用具もあります。

写真2 エンゼルデンチャー 写真2 エンゼルデンチャー

問合せ先:株式会社素敬

できる限り圧迫跡を残さないエンゼルメイクの方法をご紹介しました。次回は「エンゼルメイクの目的①ファンデーションやチークで赤味を補う意味」をお伝えいたします。

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