【連載】看護学原論に立ち戻って考える!KOMIケアで学ぶ看護の観察と看護記録

第8回 看護にとって「病気」とは? ―看護のものさし⑤持てる力・健康な力を活用し、高める援助

執筆 金井 一薫(かない ひとえ)

NPO法人ナイチンゲールKOMIケア学会 理事長/東京有明医療大学 名誉教授

そもそも「看護」って何だろう?何をすれば看護といえるのだろう?本連載では、看護とはどのようなことであり、どのような視点で患者を観察し、また記録するのかについて、ナイチンゲールに学びながら解説します。


さて、これまでの看護のものさしシリーズでは
①生命の維持過程(回復過程)を促進する援助
②生命体に害となる条件・状況を作らない援助
③生命力の消耗を最小にする援助
④生命力の幅を広げる援助
についてお話してきました。

今回は、最後の5番目となる「⑤持てる力・健康な力を活用し、高める援助」を解説していきます。

「ものさし」全体を理解し、「看護実践のあり方」の基本ついて考えていくにあたっては、まず身近にある「草花の生命の育て方」をイメージしてみるとよいでしょう。きっと見えてくることが多いはずです。

生命が求める条件を整えると、種子は実を結ぶ

一粒の種は完成された生命体です。種子の生命を直接見たり、触れたりすることはできませんが、そこには確実に生命が宿っていることを私たちは知っています。その種子を陽当たりの良い場所を選んで土の中に埋め、毎日優しい気持ちで水をやっていると、そのうちに芽が出てきて、双葉が開き、茎が伸びてきます。

さらに水を絶やさず、肥料を加えたり、雑草を取り除いたりしながら時の流れを待つと、ある時、つぼみをつけます。そのうちに素敵な美しい花が咲き、実を結びます。これが生命の生きた姿であり、「生命の法則」といえます。

このときに行った草花へのケアが、これまでに述べた「看護のものさし」に則っているということに気づかれたでしょうか? 草花を育てるには、基本的にそれぞれの種子に宿る生命の力、すなわち「持てる力」をまず信じることから始めます。そしてその生命力に力を貸していくという行為が、すなわちケアになるのです。このように草花を育てるための力の貸し方は実に分かりやすいと思います。

※次は、:"「持てる力」を見極め、生命力に力を貸す看護"とは何でしょうか?

「持てる力」を見極め、生命力に力を貸す看護

それでは、もう少し具体的にみてみましょう。草花を育てる時に、その生命力に力を貸していく行為としては、陽光が注ぐ場所を確保して種子を蒔き、水分を切らさないように管理し、根腐れを起こさないよう水分量を加減し、周囲に生える雑草を抜き取り、害虫から保護するための対策を練り、さらに茎がまっすぐ伸びるように支柱を立てたり……などをします。

私たちは草花の「生命の法則」を知って、その「持てる力」を十分に活かす方向で世話をし、同時に「生命力の消耗を最小にする」ような働きかけをしているのです。その結果として、その草花が持っている本来の生命が見事に姿を現わしていくのです。

このように草花の育て方のなかには、「看護のものさし」の発想がすべて網羅されていることが理解できると思います。

人間への看護も、基本的には同じです。その人の生命を大切にしながら、その時どきの「持てる力」を見極め、さらにその「持てる力」を伸ばし、また「生命力の消耗を最小にする」ように、その都度、最良の条件を生活過程の中に作っていけば、それがすなわち看護になるのです。

しかし1つ、十分に留意すべき重要な点があります。それは、草花と違って人間には「思考と意志」があることです。人間は他の動植物のように単純な本能に導かれて生きるのではなく、自分の考えや判断で、日常の生活を自分で作っていく動物です。

つまり人間は、「思考と意志」という特性を持つ生物であるため、植物や動物と違い、一方通行的な「ただ与える」だけの看護では、看護にならないことが多々あるということです。その点が、人間への看護の難しさであり、また楽しさでもあるでしょう。

イラスト

次回は、その「持てる力」を十分に活かすために必要な
" 観察習慣 "について解説します。

ナイチンゲールKOMIケア学会」同学会は、理事長である金井一薫がナイチンゲール思想を土台にして構築した「KOMIケア理論」により、現代の保健医療福祉の領域において21世紀型の実践を形作り、少子高齢社会を支える人材の育成に寄与することを目指します。

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